IAEA事務局長が来日、風評被害に関する地元調査のため福島視察へ
-
IAEA国際原子力機関のラファエル・グロッシ事務局長
核の番人・IAEA国際原子力機関のトップであるラファエル・グロッシ事務局長が日本を訪問しており、福島第1原子力発電所を視察する予定です。
日本の報道各社によりますと、今回の来日に当たってグロッシ事務局長は「日本は非常に緊密な関係を築いている数少ない国の一つだ」とし、原子力の安全に向け日本と関係を強化することに期待を示しています。
グロッシ事務局長は18日水曜に来日した後、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を巡り、萩生田光一経済産業相と会談し、IAEAによる安全性検証について「国内外の理解を得る上で、非常に重要な取り組みだ」と述べました。
経産省によりますと、両氏は安全性検証を含め、今後も日本政府とIAEAが緊密に連携していくことを確認しました。
萩生田氏は、会談の冒頭でIAEAへの謝意を表明するとともに、処理水の処分で国際社会に透明性の高い情報発信を続けるよう、IAEAに要請したということです。
これに対し、グロッシ氏は「協力が前進していることは非常に前向きなことだ」と応じました。
また、福島第一原発の視察について「現場に足を運び評価することは、私自身の結論を出すうえで役立つ」と述べ、評価に生かしていく考えを示しました。
さらに、処理水の海洋放出に地元を中心に風評被害を懸念する根強い声があることを念頭に、地元の関係者の話を聞きたいとの意向も明らかにしています。
なお、処理水の海洋放出という日本政府の決定に関して、日本のメディアなどが行った世論調査では「賛成」は32%にとどまり、「反対」の割合が55%と非常に高くなっています。
特に福島県内の地方自治体に対するアンケート調査では、約7割が政府方針に否定的な姿勢を示し、その理由として国内外で海洋放出への理解が進んでいないことや、風評被害や賠償への対策が不十分であることが挙げられ、政府や東京電力の対応を疑問視する声も多く出ています。
さらには、この問題には中国と韓国が強く反対しており、福島などの県産食品に対する輸入規制も継続しています。
この両国での根強い反日感情も背景に、東日本大震災から11年を経ても放射能汚染リスクに対する懸念払拭は難航しており、これに日本がどう対処していくかが注目されます。