米のイラク侵攻から20年、一極主義と好戦主義の象徴
(last modified Mon, 20 Mar 2023 08:07:43 GMT )
3月 20, 2023 17:07 Asia/Tokyo
  • 米のイラク侵攻
    米のイラク侵攻

今から20年前の2003年3月20日、当時の米大統領ジョージ・W・ブッシュは米軍にイラク侵攻を命じました。

米国のイラク攻撃は一方的かつ違法なもので、国連安全保障理事会の議決なしに強行されました。この攻撃では、当時のイギリスのトニー・ブレア首相がジョージ・W・ブッシュの共犯者となっています。

米英軍は大規模な戦争を開始し、数万人のイラク人を殺害し、イラク旧バアス党政権の崩壊および同国の元独裁者サッダーム・フセインの打倒をもたらしました。

大量破壊兵器製造施設の破壊は、ブッシュ氏とブレア氏によるこの戦争の開戦を正当化する主な口実の1つでした。しかし、アメリカとイギリスのメディアの主張にもかかわらず、これら両国の軍隊による占領後も、イラクでは大量破壊兵器は発見されませんでした。

重要な点は、このイラク戦争開戦から20年が経過した今、アメリカ国民の世論調査の結果からは、この戦争に対するアメリカ国民の意見が逆転し、彼らのほとんどが、イラク戦争によりアメリカの安全が低下したと信じていることです。2003年当時は、アメリカ国民全体の3分の2が対イラク軍事行動を支持していましたが、現在では61%がこの決定が間違っていたと考えています。

これに関連して、米国のイラク侵攻20周年を迎えると同時に、米国政府の軍国主義と戦争挑発に反対する数千人もの人々が18日土曜、首都ワシントンで反戦デモを行いました。デモ主催者は、この抗議行動実施の目的として、世界戦争の結果について世論を啓発すること、世界におけるアメリカの軍国主義による人的被害について人々に知らしめることだと表明しています。同じ問題は、イラク戦争に関する英国人の見方にも当てはまります。

イラク戦争時に英国陸軍に勤務し、現在は英労働党議員であるダン・ジャービス 氏は、「イラク戦争が国民の信頼に与えたダメージは、時間の経過とともに薄れるどころか、ますます顕在化している」との見解を示しました。

イラクへの軍事侵攻・占領は、イラク国民の多くの死傷者を出したのみならず、数千人のアメリカ兵の死をも引き起こしたほか、アメリカの経済に多大なコストを強いたとともに、アメリカの国際的威信を大きく傷つけることとなりました。

英国の共謀・幇助による米国のイラク侵攻とその後の占領により、少なくとも 21万人の民間人が死亡しました。そしてこの戦争の後、イラクは長引く情勢不安に見舞われ、タクフィール派過激主義の拡散に有利な拠点と化し、2011年の米軍の一部撤退後、イラク北部の多くの地域がテロ組織ISISの支配下に置かれました。

イラク政府が米軍撤退を命じてから数年経った今でも、イラクには今なお約2500人の米軍が駐留しています。米国防総省のデータによりますと、イラク戦争全体でのアメリカ軍の死傷者の総数は4487人にも及んでいます。

イラク侵攻時、当時のブッシュ大統領は、この攻撃がイラクの大量破壊兵器を摘発し、武装解除させ、同国民とともに世界を大きな危険から解放するために開始されたと主張しました。ブッシュ大統領は単純な考えにより、旧バアス党政権打倒後、イラク戦争の戦闘終結も発表しました。

しかし現実には、イラクでのアメリカの戦争は事実上数年間もの消耗戦に発展し、数千人の死者と数万人の負傷者を出しました。またイラク戦争の人的損失とは別に、この戦争は多額の経済的損失も引き起こしています。米ハーバード大学のケネディ・スクールは2013年の報告書で、イラクとアフガニスタンでの戦争はアメリカ史上最も費用のかかった戦争となり、出費は全体として4~6兆ドルにも及び、これはアメリカの1世帯あたり7万5000ドルに相当すると指摘しました。

実際、アメリカ政府の混沌とし​​た財政状況、特に財政赤字と国債は、主にイラクとアフガンでのブッシュ・オバマ両元政権の好戦的な行動によって引き起こされたものです。

アメリカの政治専門誌フォーリン・ポリシーの政治アナリストであるマイケル・ハーシュ氏「イラク侵攻は、米国史における最も重要な戦略的過ちの 1 つだった。自ら引き起こしたイラクの大惨事は、アメリカの軍事力の弱さを露呈し、かつては難攻不落の超大国と見なされていた国をやり込め、戦う方法を世界に教えたことになる」と述べています。

 


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