西アジアの安全保障に献身した2人の男:イラン革命防衛隊ソレイマーニー司令官とイラク民兵組織副司令官の友情、抵抗、そして殉教
(last modified Thu, 02 Jan 2025 10:48:56 GMT )
1月 02, 2025 19:48 Asia/Tokyo
  • 殉教したソレイマーニー革命防衛隊司令官とアルムハンディス・イラク民兵組織副司令官
    殉教したソレイマーニー革命防衛隊司令官とアルムハンディス・イラク民兵組織副司令官

イラン・イスラム革命防衛隊ゴッツ部隊の故ソレイマーニー司令官とイラク民兵組織ハシャドアルシャビの故アブー・マハディ・アルムハンディス副司令官は、西アジアの安全と自由のために国境を越えて戦った人物でした。

【ParsToday西アジア】この2人は傑出した人物であり、彼らの生涯は抵抗および、圧制やテロとの戦いの象徴として知られています。彼らは国籍こそ違えど、人間としての価値の防衛、テロとの戦い、地域の安全保障という点で同じ道を歩みました。2人の生涯はその出生から殉教に至るまで、自己献身・犠牲にあふれたものです。この記事では、西アジアの傑出したこの2人の人物に共通する軌跡を簡単に紹介していきます。

 

第1章:出自

1950年代、西アジアの異なる場所で2人の子供が生まれました。のちにソレイマーニー司令官となるガーセム少年は、イラン南東部ケルマーン州カナート・マリクにある貧村にて、敬虔で宗教的な家庭に生を受けました。ガーセム少年の勤勉さや忍耐力は、ケルマーンの地の乾燥した山中での質素な生活によって培われたものです。

ちょうど同じころ、後にアブーマハディ・アルムハンディスとして知られることになるジャマル・ジャファル少年は、イラク南部の港湾都市バスラの敬虔なシーア派教徒の家庭で育っていました。ジャマル少年は当時のバアス党政権による抑圧と弾圧に満ちた雰囲気の中で成長しました。ガーセム少年が家族を養うために建設現場で働いている間、ジャマル少年はイラク・バスラ工科大学で学んでいました。しかし、両者は安全保障のための闘争という共通点で出会うことになるのです。

 

第2章:指揮官の誕生

ガーセム少年ことソレイマーニー氏は1980年にイラン・イスラム革命防衛隊に入隊し、そこで彼の軍人としての人物像が形成されることになりました。イラン・イラク戦争を契機として、ソレイマーニー氏は第41サラッラ師団長として作戦指揮に並外れた能力を発揮しました。彼は、イランの西部国境防衛から大規模な地域戦争の最前線までに至る著名な戦略家となったのです。

一方、ムハンディス氏はイラクのシーア派政党イスラム・ダアワ党に加わり、サッダームが率いる独裁政権と戦いました。その後、シーア派への弾圧が激化したために、彼はイランへの移住を余儀なくされました。そしてイランでイラク反体制派を組織化する中心人物の一人となり、バアス党政権に対抗する戦闘員のネットワークを創設したのです。

 

第3章:戦火の中での友情

数年後、2人は共通の敵であるテロ組織ISISとの戦争で出会うことになります。ISISは宗教を笠に着て最も残忍な犯罪に手を染めたテロ集団で、2014年にはイラクとシリアの大部分を占領するまでになりました。当時、イラクの首都バグダッドは陥落寸前にまで追い詰められ、数百万人が虐殺の危険にさらされていました。この時、長年の戦闘経験と抵抗の枢軸との深いつながりを持ってイラクにやって来たのが、ソレイマーニー司令官だったのです。彼はバグダッドにて、イラク民兵組織ハシャドアルシャビの軍司令官となっていたムハンディス氏と会談しました。信頼、相互尊重、共通の目的に基づいて築かれた彼らの友情は、地域の歴史を塗り替えることとなりました。

 

第4章:運命を決定づけた戦闘

ソレイマーニー氏は、戦場では指揮官としてだけでなく、インスピレーションを与える指導者としても知られることとなりました。彼は最も困難な状況の中で、多様な民族や様々な宗派の部隊を団結させました。他方、ムハンディス副司令官は軍隊の組織化に優れた技能を有し、民衆勢力の結集において重要な役割を果たしました。ティクリート、ファルージャ、モスル、その他の占領されたイラクの各都市を解放する作戦は、両国間の比類なき協力の象徴となりました。

ソレイマーニー司令官はどの戦いでも最前線におり、カーキ色の靴を履き軍の士気を高める手書きのスローガンを携えていました。一方、ムハンディス副司令官は綿密な管理により軍需物資と民間支援を最大限に活用しています。2人の協力のハイライトは、イラク・サラーフッディ―ン県アメルリの包囲突破作戦です。この2人は危険にもかかわらず、自らその地域に入り、包囲打開作戦を誘導しました。この作戦は軍事的勝利をもたらしただけでなく、人々の間に希望を取り戻させることにもつながったのです。

 

第5章:暗闇の中での暗殺

ISISの敗北により、抵抗組織の英雄としての2人の影響力は大いに高まりました。このため、彼らは地域・国際的な敵の標的となったのです。2020年1月3日朝、飛行機でバグダッドに到着したソレイマーニー氏とムハンディス氏の一行は空港付近を車で移動中、米軍の無人機に攻撃されました。この暗殺は、当時のアメリカ大統領ドナルド・トランプ氏の命令により実行されました。爆発により、この2人の指揮官を乗せた車は灰燼に帰しました。彼らが殉教したというニュースは、世界中に怒りと悲しみの波を引き起こしました。

 

第6章:永遠の遺産

ソレイマーニー司令官とムハンディス副司令官の遺体は、イランとイラクの数百万人規模の追悼者に見送られながら埋葬されました。その光景はまさに、抑圧に対する地域諸国の団結の象徴だったと言えます。ソレイマーニー司令官は自己献身と抵抗の象徴であり、ムハンディス副司令官は知略家かつ不屈の戦士として、将来の世代にとっての模範となりました。

彼らの残した遺産は、最も困難な状況においても人間の意志が暴虐に打ち勝てることを示しています。2人の生涯は、国境を越えて安全と自由のために戦った永遠に続く伝記となりました。2人は、たとえ戦争の最中であっても、友情と団結が比類のなき強さを生み出せることを世界に示したのです。彼らの殉教は道の終わりではなく、抵抗の思想を広める始まりでもあったのです。この2人の司令官への追憶は、何者にも隷属しない自由を愛する人々の心の中に永遠に生き続けるでしょう。

 

 


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