「否認」「嘲笑」「懐疑論」「沈黙」:諜報活動での世紀の対イラン敗北に対するイスラエル当局の最初の反応
(last modified Tue, 10 Jun 2025 06:51:36 GMT )
6月 10, 2025 15:51 Asia/Tokyo
  • イスラエルの対外諜報機関モサドのダビッド・バルネア長官
    イスラエルの対外諜報機関モサドのダビッド・バルネア長官

IRIBイラン・イスラム共和国放送が最近、情報筋の話として、シオニスト政権イスラエルの諜報機関との戦いでイランの諜報機関が最大の勝利を収めたことを明らかにしました。

【ParsTodayイラン国際】報道各社により発表された情報に基づき、イランの諜報機関は複雑な「現場」および「サイバー」作戦で、イスラエルの占領地から大量のイスラエルの戦略文書、特にイスラエル政権の核計画関連資料を持ちだしてイランに持ち込み、安全な場所で研究・調査することに成功したということです。

メフル通信によりますと、これらの文書のイランへの持ち込みとその量の多さに関する安全上の配慮から、イラン政府はこの戦略的成功の早期公表を差し控え、現時点になってこの成果を発表するに至ったということです。

イスラエル安全保障当局の説明によれば、問題の文書は領内安全保障省、核計画関連のサーバー、そしてイスラエル占領地でも特に治安・軍事機関や施設が集中するテルアビブ中心部の1区域・ハクリアで見つかった一部の文書から抜き出され、イランへ運び込まれた模様です。

破壊工作や代理勢力による戦闘という「影の戦争」におけるこの大勝利の影響はあまりにも深く広範囲に及ぶため、一部のアナリストはイスラエルの治安機関に激震が走り、特に総保安庁シンベトや諜報機関モサドの幹部が解任され、さらには裁判にかけられる可能性さえも話題にしています。ハティーブ・イラン情報大臣がこれらの資料文書を「シオニスト政権の戦略諜報の宝庫」と呼んだ理由は、ここにあると思われます。

 

グレーゾーンの戦いにおける均衡の変化

イラン・イスラエル間の「影の戦争」作戦において、アナリストらはイランの強さを、抵抗ネットワークと「火の輪」戦略に基づくシオニスト政権との非対称戦闘によるものだと定義づけました。一方、シオニスト政権は20世紀後半以降、テロ、破壊工作、情報漏洩、イラン文書の窃取といった作戦を展開し、時には自らに有利となるような均衡の維持に努めてきました。こうした対立のうち最も激しい部類は、一方では「イランの平和的核問題を安全保障問題化すること」、他方では「アクサーの嵐作戦」、そしてアラブ圏東部地域の地政学的状況の変化に見ることができます。こうした状況下で、アメリカとイスラエルの好戦的な動きに依存する右派シンクタンクやメディアは、「イランは新時代に『核抑止力』というカードに訴えると見られ、イスラエルに対する均衡を取り戻すための他のカードはない」と主張しました。しかし、時の流れは、この主張とは正反対の結果をもたらしたのです。

この複雑な複合戦線における最近の情報面での成果により、イランとイスラエルの間の力関係は再び変化しました。イランはイスラエルを封じ込めるため、レバノン、ヨルダン川西岸、ガザ地区の国境において同盟国の強化を継続している一方、イランの情報機関もイスラエル占領地の深奥部で作戦能力を発揮し、シオニスト占領軍に対する新たな戦線を開くことにも成功しています。

イランの最近の作戦が伝えるメッセージは、同国がイスラエルの要人や重要拠点を標的にすることを決定した場合、残された課題は適切な「時」と「場所」の選択だけであるということです。言い換えれば、最近の作戦の後は占領地イスラエルにおけるいかなる戦略的標的も、射程圏外あるいは不可能な対象ではなくなったのです。これらの想定が正当であることを考慮すると、イランとイスラエルの力関係は変化し、今やイランはシオニスト政権を攻撃する新たな可能性を手にしていることになります。

 

占領地の中枢機関集中区域ハクリアに激震

イスラエル占領地の公用語ヘブライ語で「区域・エリア」を意味するハクリアは、主要都市テルアビブ中心部に位置し、イスラエルの治安・軍事機関の中枢拠点として知られています。シオニスト政権の「グリーンゾーン」とも呼ばれるこのエリアには戦争省、軍参謀本部、そしていくつかの諜報機関といった主要機関が集中しています。ハクリアは、権力構造が集中し、政治・軍事上の意思決定に非常に重要な役割を担っていることから、戦略的に極めて重要な地域となっています。

この区域は、シオニスト政権の軍事力と政治力の象徴であるだけでなく、同政権の地域的戦略を調整する中心地としても機能しています。ハクリアの構造と機能を分析することは、イスラエルの性質および地域におけるその政策をより深く理解する上で不可欠であり、特にイランのようにこの政権を恒久的な脅威とみなす国々にとって重要です。ハクリアはその地理的立地条件、そしてここに重要な中枢機関が集中していることから、政治・軍事分析における戦略的な標的となっているのです。ハクリアと地域情勢におけるこの区域の役割を詳細に理解することは、このイスラエル政権の戦略とそれが地域の安定に与える影響をより深く理解する上での助けとなります。

イスラエルのシンクタンクやメディア関係者、政府関係者、そして治安当局者から最初に聞かれた反応は「否認」、「嘲笑」、「懐疑」、「沈黙」といったものでした。シオニスト政権の最も重要な文書がイランの手に渡るという想像は、最も悲観的なシオニスト分析家にとってさえ想定外と思われます。過去80年間、イスラエルの諜報機関は数々の暗殺、潜入、破壊工作、窃盗作戦の実行により、シオニスト政権の存続に大きく貢献してきました。世界中各地に離散したユダヤ人集団がパレスチナ自治区に違法に移民した初期から、保守的なスンニー派諸国とイスラエル間の関係を正常化するアブラハム合意が締結された最近に至るまで、イスラエル諜報機関は効果的かつ効率的な役割を果たし、シオニスト政権にとっての敵対勢力やライバルに深刻な打撃を与えてきました。例えば、アラブ圏の科学者に対する諜報機関モサドのテロ行為により、イラクやシリアといった国々では核開発計画の円滑な推進が阻止されています。

現在、一昨年10月7日に開始されたパレスチナの対シオニスト攻撃、いわゆる「アクサーの嵐」作戦の真っ只中、イラン治安部隊は多元的かつ複雑、かつ特異な作戦によってイスラエルの軍事・安全保障機構に深く侵入し、不透明ながらも安全な方法での情報伝達により、情報面でのシオニスト政権の覇権を崩壊させることに成功しました。専門家らの間では、今後数週間のうちにイランが軍事・安全保障分野のイスラエルの重要文書の段階的な公開に踏み切れば、世界規模での見解の一致が生まれ、占領地中枢部における内部混乱の可能性が高まると見られています。

したがって、ダビッド・バルネア氏といった要人がモサド長官の職を解任されあるいは辞任することは、決して突飛な話ではありません。この歴史的な暴露のタイミングを捉えることで、イランはIAEA国際原子力機関の支持を取り付け、トリガーメカニズム(核合意の中で対イラン制裁を発動できることを定めた条項)の発動を模索中の英独仏に対し、政治・安全保障的圧力を強めることができると見られます。

これまで、歴史家や安全保障アナリストは、イスラエルの元核兵器開発技術者モルデハイ・ヴァヌヌによる占領地ディモナ砂漠の核施設における核計画の暴露を、イスラエル政権史上最大の諜報機関の失策として記録してきましたが、今日ではさらに大きな失策について語ることができます。「アクサーの嵐」作戦との戦いが1年8カ月も続き、シオニスト政府が抵抗勢力の指揮系統と軍事力に戦術的攻撃を仕掛けるイスラエル治安機関の能力に公然と依存していたことから、イランの諜報機関は共同プロジェクトとして、人間とサイバー面での侵入を通じてシオニスト政権の重要な中枢部に深く入り込み、モサド、シンベト、アマン(軍情報部門)に対する一種の安全保障上の均衡を作り出すことを決定しました。

現在、イランはイスラエルの重要(核)施設に関する少なくとも7ギガバイトの機密文書にアクセスし、それらの位置、施設の強度、そして占領地内の重要標的への攻撃におけるイランの攻撃力の調整について、より正確に査定する機会を得ています。イスラエル政権との情報戦においてこのような大きな成果を達成することは、イランとイスラエルの間の消耗戦の様相を変貌させるとともに、西アジア地域における抵抗の枢軸及び、安全保障上のイランの立場の強化にもつながると思われます。

 

 


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