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『シオニズム』とは?
シオニズムとは、ユダヤ人の国粋主義運動を指す呼び名で、19世紀末のヨーロッパに出現し、ユダヤ人の社会、ユダヤ人の自治国家の創設を目指したものです。
この運動が理想としていたものが、現在、シオニスト政権イスラエルの正式なイデオロギーとなっています。この運動の名は、ベイトルモガッダス・エルサレムの郊外にある丘の名称=シオンに由来します。この丘の名を、ユダヤ人の祖先の土地への帰還を目的とする運動の名として、最初に用いたのは、テオドール・ヘルツェルです。彼は、1897年、スイスの都市バーゼルで開かれた第1回世界シオニスト会議で、初めて、シオニストのための祖国建設という問題を提起しました。しかし、パレスチナにおけるユダヤ民族の居住を強く主張したのは、ハイム・ワイズマンでした。ワイズマンは同年、シオニズムの世界機構という名の集団を結成し、その目的は、世界中のユダヤ民族をパレスチナの地に移動させることにありました。
もちろん、シオニストのプロパガンダにも拘らず、シオニズムとユダヤ教の間には根本的な違いが存在します。なぜなら、シオニズムのイデオロギーの創設者であるヘルツェルは、基本的に、神を否定する不信心者だったからです。彼は、ユダヤ教をひとつの宗教と考える人々とも強く敵対していました。シオニズムの観点からいうと、ユダヤ民族は、ユダヤという宗教を有する以前に、ひとつの民族です。フランスのあるイスラム教徒の思想家は、著作「イスラエルの出来事と政治的シオニズム」の中で、この事実に触れ、次のように記しています。
「政治的シオニズムは、ある種の国粋主義的、植民地主義的な腐敗、堕落と見なされる。その本質は、ユダヤ教ではなく、19世紀ヨーロッパのナショナリズムや植民地主義から生まれたものである。シオニズムは、旧約聖書の中から、明確な目的と共に、自分たちに都合の良いような部分を選択している。こうして選び取られた内容は、多くが、真実を歪曲したものに基づいており、彼らの政治的な意図を覆い隠すためのものとして用いられていた」
この60年間の出来事は、次の事実を明白に物語っています。それは、シオニストが、旧約聖書から抜き出したものを利用し、日を追うごとに、その軍事的な支配力を追求するようになっている、ということです。彼らは、旧約聖書の内容を拠り所にし、自らの領土を次々と広げる拡張主義的な政策を正当化し、国家テロや殺害というやり方を合法的に見せるため、旧約聖書を悪用しています。このように、シオニストは、いつの時代においても、旧約聖書を盾に、自分たちのために新たな領土を描き、ナイル川からユーフラテス川までの約束の地を実現する、という幻想をふくらませています。例えば、1956年、イスラエルの初代首相ベン・グリオンが、シナイ半島は、ユダヤ教の預言者ダーヴードとソレイマーンの領土の一部だと発表しました。しかし、アメリカと旧ソ連の停戦協定の発表後、この旧約聖書上の地理は忘れ去られ、1967年に、アラブ側とシオニスト政権の間で第三次中東戦争が起こったときに、再度、提起されました。
このように、旧約聖書の内容は、シオニストにとって、様々な形に解釈・変更されうるもの、常に、彼らの利益に沿って利用されるものとなっています。時代の政治・軍事的な情勢に基づいて旧約聖書を変更する目的は、ある時は、侵略を合法的なものに、またある時は、地域の併合を正当化することにあります。このことから、今日、世界の多くのユダヤ人は、シオニズムの政策に強い不満を抱いています。テルアビブ大学のベンヤミン教授は、シオニストがレバノンに侵攻した際、それに対する嫌悪を露わにした人物の一人でした。彼は次のように記しています。
「私は、この手紙を、我々が、レバノンで目的を果たそうとしていることを知らせるラジオの報道を聞きながら書いている。明らかに、この野蛮で無慈悲な戦争は、これまでのどの戦争よりも恐るべきものである。その昔、圧制の犠牲者であったイブラーヒームの子孫であるユダヤ人が、どうして、これほど野蛮な圧制者となることができるのだろうか? このことから、シオニズムの最大の勝利は、ユダヤ人にユダヤ教への嫌悪を抱かせたことにある、と言わねばならない」
シオニズムのイデオロギーが拠り所としているもうひとつの原則は、人種差別主義です。シオニズムは、明確な計画に従い、世界の全てのユダヤ人は単一の民族の子孫であり、現在も遠い昔と同じように、集団で約束の地とされる特定の領土に居住すべき、という思想を植え付けようとしています。一方で歴史が示しているのは、シオニストの根拠のない主張とは裏腹に、あらゆる時代を通して、ユダヤ民族は、他の民族と共に生活してきた、ということです。シオニストの人種差別的な思想は、イスラエルの憲法にも存在します。その中には、「ユダヤ人とは、ユダヤ人の母親から生まれた者、あるいは、ユダヤ教を信仰している者を指す」という条項があります。この法によれば、ユダヤ人のみが、イスラエル市民に与えられる特権を有することができるとされています。
このような人種差別的な思想の存在により、1897年にシオニズムのイデオロギーが提起され、パレスチナの地におけるシオニスト国家建設が予測されたときから、この地におけるパレスチナ民族の存在は無視されることになりました。パレスチナの民を無視することは、シオニズムの根本的な原則のひとつであり、この原則こそ、後に行われる全ての犯罪行為の根源を秘めています。その事実はこれまで何度も、イスラエルの政治家によって言及されてきました。例えば、イスラエルのゴルダ・メイア元首相は、1969年6月15日、次のように表明しました。
「我々の見解では、パレスチナ人など存在しない。パレスチナの土地には、一人のパレスチナ人の存在も見られない」
しかし、現実にパレスチナ人は存在し、祖先の土地への占領に対して全力で抵抗しています。
真実は今日、シオニストの本質を世界の人々に明らかにしています。現在、シオニズムとシオニストという言葉に対し、自由を求める良識ある人間は、強奪、占領、人種差別、テロリズム、圧制というイメージを連想するのです。