視点
BRICS;世界秩序の再定義と多極的体制の構築
南アフリカでこのたび開かれたBRICS外相会議では、世界秩序の見直しと西側諸国から距離を置くことが求められました。
南アフリカのナレディ・パンドール外相は、BRICSの目的を、「地政学的緊張、不平等、分裂・分断からの情勢不安に陥っている」世界の舵取りを担うことだとしました。
今回の外相会議は、今年8月に南アフリカで開催予定のBRICS首脳会議に先立って、加盟国間のさらなる協調を目指して開かれました。
2009年に設立されたBRICSは現在、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国から構成されており、その目的は、加盟国間の貿易・経済関係の強化、開発銀行と並行して機能する国際組織の創設、新しい貿易秩序の構築にあります。BRICS諸国が世界に占める割合は、全人口の41%以上、GDP総計の28%以上となっています。
BRICS諸国の大半は新興経済国であり、近年貿易面において成功を収めています。世界銀行の報告によれば、昨年の世界経済の成長においてBRICS諸国が占めた割合は32.1%にのぼり、G7を上回りました。
BRICSの中でも中国とロシアは、主要メンバーとしてBRICSの経済力強化に重要な役割を果たしています。両国は、その他のメンバー国の支援や新たな国の加入受け入れにより、経済分野を中心に現在の世界秩序を崩して、多極主義体制を強化させようと尽力しています。
インドのジャイシャンカル外相はこれに関連して、「BRICSは、多極主義世界が再び均衡を取り戻しつつあり、古いやり方が新たな問題に対して答えを出す力を持たないという、強いメッセージを発するべきだ」と述べました。
BRICSの目標のひとつには、世界経済秩序に対するアメリカの覇権へ対抗し、国際貿易において米ドルに代わり別の諸通貨の使用することが挙げられます。BRICS諸国は、経済協力の拡大と生産・輸出の向上、貿易における人民元のような諸通貨の使用によって、アメリカの覇権とその一極主義的な政策を終わらせようとしているのです。アメリカが自らの政策に従わない国に対して、米ドルを道具にして制裁を行使し政治的・経済的圧力をかけてきたことは、BRICS諸国が手を取り合うきっかけの一部でした。
キューバのミゲル・ディアス=カネル大統領はこれについて、「BRICSの米ドル排除に向けた計画は、世界にとってより包括的かつより好ましい経済関係をもたらすだろう。今日の世界では、国際関係はアメリカ政府の攻撃的・覇権主義的政策にもとづくものとなっており、(従わない国に対して)定期的に壁をつくり、制裁を行使し、恐喝し、侵略し、侮辱している」と語っています。
BRICSの実績や理想は、アルジェリアやアルゼンチン、イランなどが加入申請をするきっかけとなっています。また、サウジアラビアやトルコ、エジプトなども加入に興味を示しています。
長年アメリカによる制裁を受けているベネズエラのマドゥロ大統領は、「我々はBRICSの一員となり、この新しい建物と世界規模の政策の構築に参加したいと思っている。BRICSは今、平和と協力を基盤とする別の世界を求める者たちにとって、大きな磁場になりつつある」と語っています。
ブラジルのヴィエイラ外相は、BRICSを多極的な世界秩序の実現に必要不可欠なものとし、そのような秩序が「発展途上国の手段やニーズを反映するもの」であるべきだとしました。
BRICSは、新たな加入国を迎えることでさらに強力になり、世界的な場においては、アメリカやG7ともさらに競り合える相手となることでしょう。