独紙、「BRICSでは独自通貨なしでも脱ドル化進展」
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BRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの経済新興5か国)
ドイツの新聞が、「BRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの経済新興5か国)は自国通貨での貿易決済を拡大させたことで、すでに世界を脱ドル化に導いている」と報じました。
独紙「ユンゲ・ヴェルト」の論説委員、ビープケ・ディール氏はこの見解を示すとともに、「各国通貨での決済拡大によってドルがその地位を著しく損なう可能性がある。そのため、BRICSが共通通貨を導入するか否かは、重要ではない」と指摘しています。
独自通貨は後で
加盟諸国共通の独自通貨の創設は、2001年に結成されたBRICS統合の歴史にとって画期的な出来事になる可能性があります。構想では共通通貨は金や銀といった希少鉱物によって、その価値が裏付けられます。ディール氏によりますと、すでに41カ国が関心を示しており、来たる8月15日に南アフリカで開かれるサミットの公式声明でも、共通通貨について言及される見込みです。
共通通貨の創設は、グローバル・サウスのドルからの独立性を高め、多極化した世界秩序の出現を助けるものです。しかし、ディール氏は現時点では加盟国間でこの問題に関する統一見解がないと指摘しています。例えば、インドのS・ジャイシャンカル外相は最近、インドは自国通貨ルピー高にのみ関心があると発言しているほか、BRICS新開発銀行のレスリー・マースドープ副総裁は、「中国人民元は未だ新準備通貨のステータスには程遠い」と述べています。
第一歩は成功
一方で、脱ドル化と米国によってコントロールされている国際決済システム「SWIFT」からの脱却を進める必要性については、発展途上国間で議論の余地はありません。
こうした方向を目指し、BRICSはすでに最初の一歩を踏み出しており、ドル以外の通貨での貿易額は年々増加しています。反対に、世界の準備通貨に占めるドルの割合は2022年末以降、55パーセントから47パーセントに急落しました。
またロシア財務省のデータによると、露中間の貿易決済の70%が人民元かロシア・ルーブルで行われていることに加え、インドの石油精製企業も、ロシア産原油の代金を人民元で支払っています。さらに米国の長年の同盟国であるサウジアラビアも、中国との石油取引における人民元決済の導入に向け、協議を進めています。
こうした傾向を踏まえ、これまで国際金融体制に事実上浸透していた米ドル一辺倒という傾向がどのように変化し、世界の多極化とともに国際貿易での決済通貨の多極化がどう進んでいくのかが注目されます。