制裁の最大の被害者は誰か?
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制裁の最大の被害者は誰か?
カタール国営衛星通信アルジャジーラの英語サイトが記事の中で、各国への制裁行使という欧米諸国の犯罪および、その結果として数百万人が命を奪われたことについて取り上げました。
アルジャジーラの英語サイトは最近、ジェイソン・ヘイカル氏、ディラン・サリバン氏、オマール・タヤブ氏らが執筆した記事の中で次のように述べています;
「米国と欧州は長年にわたり、帝国主義的な権力行使の手段として、つまり西側諸国の支配から脱却し独立の道を歩み、真の国家主権を目指すグローバルサウス(日本、北米、欧州など「北」の国々とは違う「南」の国々のことで、アメリカやその同盟国と行動を共にしない国々をさすことが多い)の各国政府に対する処罰、また時には破壊するための手段として、一方的な制裁を利用してきた」
【ParsToday国際】1970年代には、毎年平均して約15カ国が西側諸国による一方的な制裁を受けていました。これらの制裁は通常、各国の世界的な金融資源や貿易へのアクセス遮断、産業のかく乱、そして最終的には政府の崩壊につながる危機を引き起こすことを目的としていました。
その代表例として、チリの医師・社会主義政治家サルバドール・アジェンデ(Salvador Allende)が挙げられます。彼は1970年に国民投票で政権を握るや否や、米国の厳しい制裁の対象となりました。当時、リチャード・ニクソン米大統領は同年9月のホワイトハウスでの会合で、この行動の目的について「チリ経済に悲鳴を上げさせる必要があると述べています。アメリカの歴史家ピーター・コーンブルー(Peter Kornbluh)氏は、これらの制裁を「目に見えない封鎖」と呼ぶとともに「この制裁によりチリが国際金融資源から遮断され、社会危機を引き起こし、アウグスト・ピノチェトによる残忍な独裁政権を樹立した米国支援のクーデターの下地を作った」と指摘しています。
それ以来、制裁措置の行使は劇的に増加しました。その証拠に、1990年代と2000年代には毎年平均で約30か国が西側諸国による一方的な制裁の対象となりました。そして2020年代の現在、その数は60カ国以上に増加し、グローバルサウス諸国の大半が該当しています。
制裁の主な目的
制裁は甚大な人的代償を引き起こすものであり、これは研究によって繰り返し証明されています。例えば、1979年のイランにおけるイスラム革命の勝利と国民による自国資源のコントロールにより、アメリカの利益は危険にさらされました。そのため、アメリカはこの敗北に対し制裁行使で応じ、それは現在も継続しています。これらの制裁は、石油、ガス、貿易、金融、銀行、科学技術、通信インフラ、原子力、海上輸送、航空輸送など、多岐にわたる分野を対象としています。
1990年代の米国による対イラク制裁は、広範囲にわたる栄養失調、安全な飲料水の不足、医薬品と電力の不足を引き起こしました。また近年では、米国によるベネズエラへの経済戦争が大規模な経済危機を引き起こしています。ある調査によれば、2017年から2018年だけで制裁が原因で4万人が死亡したと推定されています。
これまでの研究は主に1つ1つの事例について細かくなされ、真実のほんの一部しか示されていませんでしたが、今年、米コロラド州デンバー大学の経済学者フランシスコ・ロドリゲス氏が主導し、ランセット・グローバル・ヘルス誌に掲載された新たな研究では、1970年から2021年までの国際制裁を原因とした死者総数が算出されました。
当初の推計によると、1970年以降では米国とEUによる一方的な制裁は3800万人の死に直接結びついています。特に1990年代には、年間100万人以上が死亡した年もありました。また2021年には、制裁によって80万人以上が命を落としています。
これらの数字は、制裁の犠牲者数が戦争の直接的な犠牲者(年間平均約10万人)の数倍に上ることを示しています。犠牲者の半数以上は子供と高齢者が占めています。また、この調査では、2012年以降だけでも制裁によって100万人以上の子供が命を落としていることも示されています。
飢餓と貧困は制裁の想定外の結果ではなく、制裁の本来の目的であり、このことは1960年4月の米国務省の覚書で明確に示されています。米国の対キューバ制裁を説明するこの文書は、フィデル・カストロとその革命が広く支持されていることを説明しています。そして「あらゆる手段を用いてキューバの経済活動を弱体化させるべきである」と強調するとともに、その中には「金融および物資供給の遮断、賃金削減、飢餓と絶望の扇動、そして最終的には政府を転覆させる」ことが含まれると述べられています。
西側諸国による制裁の根底
西側諸国による制裁は、以下の3つの要素に基づいています。
1. 世界の準備通貨(ドルとユーロ)に対するこれらの諸国の支配力
2. SWIFT国際決済システムに対するこれらの国の支配力
3. 重要技術(衛星、クラウドコンピューティング、ソフトウェアなど)に対する独占力
グローバル・サウス諸国が多極化世界に向けてより自立した道を歩むためには、これらの分野への依存を減らし、反動や圧力に耐えうる体質を身につける必要があります。これについて、特にロシアの経験は、それが可能であることを示しています。
各国は、南南貿易の拡大、主要通貨圏外への交換ルートの確立、地域計画に基づく重要技術の開発、そして西側諸国から独立した決済システムの構築を通じて、より高い自立性確立できます。一部の国は、すでにこの方向にそって歩みを進めています。中国は、国際決済のためのCIPS(中国人民元国際決済システム)、衛星通信分野でのBeiDou(中国名;北斗、中国が独自に運用している全地球測位衛星システム・GNSS)、移動通信のファーウェイといった新たなシステムの開発により、グローバルサウス諸国に制裁の罠から抜け出すための新たな選択肢を提供してきました。
これらの措置は、各国の自立した発展達成に必要であるとともに、道義的責務でもあります。我々は決して、西側の覇権維持のためだけに毎年50万人が命を落とすような世界を容認することはできません。暴力によって築かれたこのような体制は崩壊し、より人道的な新たな体制に取って代わられるべきなのです。