スイス・ダボス会議2026とトランプ政権下の米国の危機の露呈
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スイス・ダボスで開催された世界経済フォーラム(通称;ダボス会議)において、トランプ米国大統領が緊迫感漂う長広舌を振るったことから、西側諸国の結束の崩壊に対する懸念は緩和されるどころか、逆に増大した格好となっています。
(last modified 2026-01-24T10:00:53+00:00 )
1月 24, 2026 13:25 Asia/Tokyo
  • スイス・ダボス会議2026とトランプ政権下の米国の危機の露呈

スイス・ダボスで開催された世界経済フォーラム(通称;ダボス会議)において、トランプ米国大統領が緊迫感漂う長広舌を振るったことから、西側諸国の結束の崩壊に対する懸念は緩和されるどころか、逆に増大した格好となっています。

【ParsToday国際】ドナルド・トランプ米大統領は、今回のダボス会議での演説で、米国を利用しているとして欧州を非難し、デンマーク自治領グリーンランド占有計画への反対に驚きを表明するとともに、欧州首脳の移民・経済政策を厳しく批判しました。

メフル通信によりますと、トランプ氏の攻撃的な一連の文言の中で聴衆に唯一の安堵感を与えたのは、グリーンランド占有に当たり武力は行使しないと表明したことです。大西洋を挟んでにらみ合うという関係の中、アメリカのこの立場は一部の欧州当局者にとって限定的な突破口と捉えられていました。

数時間後、トランプ大統領はNATO北大西洋条約機構事務総長とグリーンランド問題で「将来の合意に向けた枠組み」に合意し、「現時点では欧州に対する新たな関税導入を示唆しての脅迫を止めた」と表明しました。しかし自身のSNSにおいて、この合意の可能性については「米国と全てのNATO加盟国にとって素晴らしい」と述べたものの、詳細は明らかにしていません。では、ダボス会議でのトランプ大統領の演説の要点はどの点なのでしょうか?

1. グリーンランド問題:軍事的選択肢は拒否するも政治的圧力は継続

トランプ大統領は、グリーンランドに対する軍事行動を初めて否定し、「武力は行使しない」と表明しました。この点は、ホワイトハウスがこれまで否定していなかった点です。しかし、トランプ大統領はグリーンランドの「完全な所有権」要求を改めて表明し、「相手側はノーと言うことはできるが、我々は忘れない」と警告しました。この発言は、有識者筋からは脅迫的なものと受け止められています。

2. 物議を醸した歴史叙述と対デンマーク批判

トランプ氏は自身の主張を擁護する中で第2次世界大戦に言及し、デンマークを「恩知らず」だとしました。トランプ氏は「デンマークはドイツにわずか6時間しか抵抗せず、米国が介入せざるを得なかった」と主張しました。この恣意的な歴史叙述は広く否定的な反応を引き起こし、異例の領土主張を正当化しようとする試みと見なされています。

3. 同盟国への批判と屈辱の拡大

トランプ氏はさらにスイスに非難の矛先を向け、「アメリカにとってのみ良い国」だと発言しました。また個人的な恨みから、スイスに対する関税引き上げを示唆しています。フランス、カナダ、そしてアメリカ国内の一部要人ももれなくトランプ氏の攻撃の矢面に立たされました。また、移民問題に関する発言も会場を重苦しい沈黙で包みこみました。

4. 出席者の冷淡な反応と予想外の結末

トランプ氏の演説が長引き、攻撃的なトーンが強まるにつれ、会場の雰囲気は冷たく重苦しいものとなりました。グリーンランド問題が話題になると、一部の出席者は退席し会場を後にしました。トランプ氏も明確な結論を示すことなく、「後ほどお目にかかろう」という文言とともに演説を終えています。

5. トランプ氏が提示したヨーロッパ観

今回の演説の終盤で、トランプ氏はヨーロッパを「もはや認識不可能な」大陸と表現し、その窮状が移民問題と経済政策のせいだと非難しました。そして再びヨーロッパを侮辱する発言を提起し、20世紀の戦争を想起させるとともに、「世界はアメリカに依存している」ものの「感謝していない」と主張しています。この発言により、トランプ氏の国際関係における覇権主義的な見方が浮き彫りになりました。

2026年ダボス会議におけるトランプ氏の演説は、アメリカの外交政策における複数の同時発生的な危機、すなわち大西洋を隔てた欧州との関係の危機、アメリカの統率力への信頼の危機、そしてアメリカ自身が主要な立案者であった国際秩序の正統性の危機という逆風4点セットの合流だと言えます。しかもトランプ氏はこの演説において、これらの亀裂を修復できなかったのみならず、侮辱的で脅迫的な、そして時には歴史歪曲に満ちた言葉で亀裂を深め、傷口に塩を塗る結果となりました。

たとえ軍事的選択肢が表面上は放棄されているとしても、グリーンランドの領有権を主張すること自体が、国家主権、国際法のルール、そして多国間構造を二の次に押しやった、帝国主義的で取引的な国際関係観を反映していると言えます。トランプ大統領はこの主張の提起により、暗黙のうちに反対国を脅迫しつつも、欧州の同盟国に対し「安全保障とパートナーシップは政治的服従に基づく特権であり、相互の義務ではない」というメッセージを発信したことになります。

一方でトランプ大統領は、欧州、移民、国際機関、そして伝統的な同盟国に対してさえも非難の矛先を向け、言葉による攻撃を続けています。これは、合意形成よりも対立、屈辱、そして圧力に頼る指導者の姿を浮き彫りにしています。こうしたアプローチは、西側諸国が掲げる多国間主義と相互尊重という価値観を損なうだけでなく、同盟国間の不信と分裂の拡大にもつながっています。

ダボス会議出席者の冷淡で、時に衝撃的な反応、一部の参加者の早期退席、そして会場の重苦しい静寂はすべて、トランプ氏の世界観と今日の国際秩序の複雑な現実との間の深い乖離を如実に物語っていたと言えます。もはや世界は、たとえそれがアメリカであっても、支配的な大国への従属的な役割の受容を望んでいないのが現実です。

総括すると、2026年のダボス会議は世界的な対話と協力のためのプラットフォームではなく、逆にトランプ政権下のアメリカの主導の危機を象徴する舞台と化したと言えます。力強さと決断力を示すはずだったこの演説は、実際には西側諸国の結束の将来と国際秩序の安定性に対する懸念を助長したとともに、「トランプ政権下のアメリカが依然として責任ある国際的勢力としての役割遂行能力、あるいはその意思があるのか」という疑問を提起したのです。

 

 


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