国連事務総長が、世界が弱肉強食の法則に支配されている事実を認めた理由とは?
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アントニオ・グテーレス国連事務総長
アントニオ・グテーレス国連事務総長が、世界におけるジャングルの法則(弱肉強食)の支配の現実を認めつつも、「国連安全保障理事会の改革は必須だ」と語りました。
【ParsToday国際】グテーレス事務総長は「世界では、法の支配の代わりに弱肉強食の支配が横行している」と指摘し、改めて「国連安保理の改革は必須であり、すべての国がICJ国際司法裁判所を尊重し、その拘束力のある決定を差別なく完全に履行すべきである」と述べています。
グテーレス事務総長は今月26日、「国際法の支配と平和、正義、多国間主義を強化する方法の強調」と題する安保理会合で、「法の支配は世界の平和と安全の礎かつ、世界の国々や地域間の友好関係の鍵であるとともに、国連憲章の心臓部である」とコメントしました。
グテーレス事務総長によれば、加盟国は2024年に国連「未来のための協定(Pact for the Future)」を採択し、これには国際法に従って行動し、誠実に約束を履行するという約束が盛り込まれています。しかし現実には、言葉と行動は一致していません。実際に世界中で、法の支配は弱肉強食に取って代わられ、人類は国際法の露骨な違反と国連憲章のあからさまな無視を目の当たりにしています。
グテーレス事務総長はまた「ガザからウクライナ、アフリカ・サヘル地域からミャンマー、ベネズエラ、そしてその他の国々に至るまで、法の支配は軽視されている。我々が目にしているのは違法な武力行使、民間インフラへの攻撃、人権侵害、核兵器の違法開発、違法な政権交代、そして重要な人道支援の否定など、法の支配を軽視する国々が処罰されずに横行闊歩している現状である」と語りました。
アントニオ・グテーレス事務総長は安保理会合において、「世界における法の支配は弱肉強食に取って代わられつつあり、国際秩序の深刻な危機が浮き彫りになっている」と警告しました。また「80年間、国際法制度と国連憲章が第3次世界大戦を防いできたにもかかわらず、今日、その制度がこれまで以上に無視されつつある」と強調しています。
国連事務総長によるこうした自白は政治的な誇張ではなく、ガザやウクライナからアフリカ沿岸、ミャンマー、ベネズエラに至るまで、様々な危機や戦争の現場で見られる現実を描写したものです。そこでは、法が定めるルールが「利益に基づく選択的な方法」、あるいは政治用語で言えば「アラカルトメニュー」のように適用されています。グテーレス事務総長の表明の最も明確かつ完全な例がアメリカ合衆国です。アメリカ合衆国は現在、ドナルド・トランプ大統領の下で、様々な違法行為によって国際法や規則、そして国連憲章のあらゆる境界を侵害しています。
こうした厳しい解釈がなされる第1の理由は、露骨な国際法違反がかつてないほど蔓延していることです。グテーレス事務総長は「重大な違反」について明確に言及しており、これには民間人への攻撃、武力行使禁止の原則の無視、そして人道的義務違反が含まれます。国家や武装勢力が都市を爆撃し、長期にわたる人道封鎖を実施し、あるいは責任追及を恐れることなく武力により国境を変更する場合、実際に発せられるメッセージは、法ではなく力こそが決定的である、ということになります。これはまさに弱肉強食の論理というべきもので、強い者ほど、自らの意志を押し付ける権利が増大することになります。
第2の理由は、説明責任と責任追及のメカニズムにおける深刻な危機です。グテーレス事務総長をはじめとする多くの発言者は、大国間の競争と拒否権の広範な行使により安保理が多くの危機において機能不全に陥っていることを指摘しました。国連憲章の履行を保証するべき機関が地政学的紛争の舞台と化せば、法違反者は事実上、免責特権を享受していると感じてしまいます。国際裁判所における効果的なフォローアップの欠如、司法機関への政治的圧力、そして事件処理におけるダブルスタンダードといった状況から、万人にとって司法が普遍的かつ中立ではなく、玉虫色で選択的かつ政治的であるという見方が強まっています。
第3の要因は、多国間機関やルールへの信頼の低下です。グテーレス事務総長は、国際システムは「大小」を問わずすべての国を平等に拘束する一連の共通ルールの上に構築されていることを指摘しました。しかし近年において、国際条約からの一方的な離脱、決議の無視、国際機関の弱体化は、大国の短期的な利益と衝突しない限り法的義務は尊重される、というメッセージを世界に発信しています。このような状況下では、各国は権利や制度にではなく、軍拡競争、一時的な同盟、そして暴力による抑止の論理に依拠することになり、それは正にジャングルでの生存の論理に逆戻りすることを意味します。
4つ目の理由として指摘されるのは、世界秩序の分裂化と分断です。武装した非国家主体、強力な多国籍企業、そして多国籍ネットワークの増加により、戦争と平和、国内と国際、さらには組織犯罪と武力紛争の境界線さえも曖昧になっています。本来は各国の行動規制を目的に設計されたはずの国際法の伝統的なルールは、この複雑な現実の前では分裂され、無力化しています。ある条約の当事国でもなく、条約に拘束されるとも考えていない主体が介入すると、法的枠組みのないまま暴力が拡大するグレーゾーンが形成されることになります。
結論として、グテーレス事務総長が「弱肉強食」の現実を認めたことは、警告であると同時に、1つの呼びかけでもあります。国際社会が国際法への信頼を再構築し、安保理のような機関を改革し、説明責任のメカニズムを強化し、ダブルスタンダードを終結させなければ、世界は正義と持続可能な安全保障が意味をなさない状況へと向かうことになるということを、国連事務総長は示そうとしているのです。