G20サミット、問題と展望
G20サミットでは、さまざまな問題について話し合いが行われる予定ですが、この中で、気候変動と、貿易合意の今後に関するアメリカとの緊張の継続が、特に重要な問題となっています。
今回のG20サミットでは、ドイツのメルケル首相とアメリカのトランプ大統領の間のパリ協定に関する対立が再度浮き彫りになると見られています。メルケル首相は、開催国として、気候変動問題に関する話し合いを、サミットの優先事項に据えていますが、アメリカ政府は、環境問題に関する取り決めの多くを回避しようとしています。トランプ大統領は、パリ協定はアメリカの利益にならないとして、この合意から離脱しようとしています。トランプ大統領は、この合意を支持していたオバマ前大統領とは異なり、これまで何度も、パリ協定を批判し、それを、アメリカの経済状況の改善、特にエネルギーや産業部門の改善に向けた計画の実現を妨げるものだとしています。
パリ協定に対するトランプ大統領の立場は、他の工業国や新興国の首脳の不満を招くと共に、メルケル首相は、最近のG7サミットで、6カ国と1カ国の対立という表現を用いました。これはアメリカに対し、G7の他の6カ国が同じ立場を取っていることを意味しています。トランプ大統領が約束したアメリカのパリ協定離脱が実現すれば、温室効果ガスの排出量の多い他の国も、さまざまな方法によって、パリ協定の内容の実施を逃れようとする可能性があります。それが起きれば、地球やその住民にとって、償うことのできない危険が起こる可能性があるでしょう。
こうした中、トランプ大統領は、他国や地域との貿易合意からの離脱を主張しており、それがG20の他の国々の懸念を招いています。トランプ大統領は、5日水曜、ドイツでのG20サミットへの参加を前に、ツイッターで再び、「アメリカは、世界の歴史の中で最悪の貿易合意を締結してきた。これらの合意はアメリカの助けになっていない」と強調しました。
これに対し、G20の他の加盟国、特に輸出中心の経済を持つ中国やドイツは、アメリカの他国との貿易合意の遵守と、トランプ大統領が就任時に貿易政策の筆頭に据えた保護貿易主義の停止の必要性を強調しています。イランの国際問題の専門家で、ドイツ駐在大使を務めたことのある、ハーンサーリー氏によれば、G20サミットは、共通の見解よりもむしろ、見解の対立を強化する会議の様相を呈しています。ハーンサーリー氏は、「G20の動向や国際問題に関する、この組織の加盟国の政治的、経済的な見解の対立は非常に高まっており、メルケル首相は会議を前に、加盟国が、具体的な成果を挙げることなく、引いては見解の対立を拡大することでこの会議を終え、同国での全国選挙の実施を前に、G20サミットの開催国としてのドイツの信用が損なわれることになることを懸念している」としています。
トランプ大統領が、NATO北大西洋条約機構の現在の状況を批判し、それを改革する必要性を訴えていること、ロシアとの関係の見直しやパリ協定の離脱、アメリカの貿易合意の見直しを強調していることに注目すると、EUを含むG20のヨーロッパ諸国が、これらの問題を巡ってトランプ大統領と対立しているだけでなく、G20の他の国々も、トランプ大統領の政策や行動、特に貿易合意や気候変動に関して、マイナスのアプローチをとると思われます。そのため、ドイツでのG20サミットは、アメリカ以外の加盟国の首脳とトランプ大統領の対立の場になる可能性があるのです。