アメリカの大統領と国務長官の核合意を巡る見解の相違
アメリカのティラーソン国務長官が、トランプ大統領との間で、イランと6カ国の核合意を巡る見解が対立していることを認めました。
ティラーソン長官は、国務省の記者会見で、トランプ大統領との一部の見解の対立に触れ、「我々の間には、核合意やその利用方法など、一部の問題について見解の対立がある」と語りました。これ以前にも、メディアが、核合意を巡るティラーソン長官とトランプ大統領の対立を明らかにしていました。アメリカの外交専門誌フォーリンポリシーは、「トランプ大統領は、政府内の信頼できる人々に対し、10月までの次の90日間の評価の中で、イランの核合意不履行を発表する可能性を整える義務を与えた。この義務は、トランプ大統領が以前にティラーソン国務長官に委ねていたものだ」としました。
トランプ大統領は、ティラーソン長官、マティス国防長官、マクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官とのおよそ50分にわたる話し合いの後、アメリカの核合意遵守継続という彼らの見解に従う決定を下しました。
ホワイトハウスでの言葉の応酬の後、ティラーソン国務長官は、核合意を巡るトランプ大統領との見解の対立を正式に認めています。ティラーソン長官は、これまで何度も、イランとの核合意が不適切であること、有益ではないことを強調し、国務省の記者会見でも、再び、イランは核合意の精神に反していると非難しましたが、それでもなお、アメリカの外交機関の専門家による分析や軍事・安全保障機関の評価に基づき、核合意の遵守継続を強調しています。このグループの人々は、アメリカが数カ国の合意を離脱すれば孤立することになり、ヨーロッパやアジアの同盟国との間に亀裂が生じることになると考えています。また、アメリカの核合意継続を支持する人々は、アメリカの約束不履行に対するイランの強い反発を懸念しています。
こうした中、トランプ大統領とその支持派は、アメリカは、結果を恐れずに核合意を離脱し、この合意を破棄すべきだと考えています。彼らは、アメリカが数カ国の合意を離脱しても、世界はアメリカについてくると考えています。彼らの考えでは、核合意もパリ協定やTPP環太平洋パートナーシップ協定と同じようにアメリカにとって有害であり、その協力の継続は、アメリカの国益を危険に晒します。
とはいえ、これまで、アメリカの核合意遵守継続を支持する人々の見解が、この国の正式な政策として実施されてきました。そのため、トランプ大統領は、核合意に対して繰り返し批判的な発言を行っているものの、これまで2度、イランの核合意遵守を認め、アメリカの合意継続を表明しています。こうした中、このことは、アメリカ政府内の深刻な対立につながっているのです。