視点
英の燃料危機ー保守党政権の失敗の象徴
イギリスで、ガソリン不足や燃料危機が一刻の猶予もならない段階に達しており、しかも今回は国内各地のガソリンスタンドの在庫が尽き、多くの車両が燃料備蓄のために殺到していることを受け、英保守党政権は軍に出動態勢を整えるよう命じました。
イギリス軍は、こうした危機発生により予想されるあらゆる形の騒乱に対処するため、出動態勢を整えており、軍の燃料輸送車のドライバーらは、ガソリンスタンドへの燃料移送支援に向けた特別訓練を受けています。
予想されていた通り、イギリスはEU離脱・ブレグジットの後、様々な危機や諸問題に巻き込まれています。実際に、ブレグジットの実現により、EUとイギリス政府の間の広範かつ多様なつながりは切れました。EUはイギリスにとって通商上の主要なパートナーとされていいました。このため、イギリスのEU離脱により同国での生活に必要な物品の調達に様々な問題が生じるであろうことは、予てから予想されていました。これに関して、イギリスは数ヶ月前から特に基本的な必需品の調達に関して、深刻な危機に見舞われています。一部のスーパーマーケットでは、商品棚が空になっていることに加え、今や国内各地で車両がガソリンスタンドの前で長蛇の列をなしていることから、イギリス政府に対する風当たりが強まっています。ジョンソン英首相は、この問題がブレグジットのせいではなく、新型コロナウイルスの感染拡大によるものだとみなしています。しかし、現実にはブレグジットこそが現在のイギリス社会の問題の主要な元凶であり、新型コロナウイルスの感染拡大も触媒としてこの深刻な現状に拍車をかけています。
総合的にはこれらの要素が引き金となり、イギリスは現在、重量車両のドライバー不足という新たな危機に直面することとなり、挙句の果てには国内での食料、燃料、その他の物資の調達プロセスまでもが問題に巻き込まれています。現在の危機が今後10日以内に打開されなかった場合には、英国内での食品配送プロセスまでもが深刻な問題に晒されると予測されています。重量車両・重量物運搬車のドライバーをはじめとした、単純労働者とされる労働力の不足を引き起こした原因は、イギリスへの移民制限の厳格化、そして主に東欧からイギリスに来ていたヨーロッパ移民の人材や労働者に対する圧力の増大だとされています。実際に、イギリスのEU離脱による即時の影響の1つは、イギリスへの移民の減少だと言えます。イギリス陸上運輸協会は、「運輸業からの多数のドライバーの離職やブレグジット、新型コロナウイルスの大流行といった複数の要因により、イギリスではおよそ10万人のドライバーが不足している」と表明しました。
ガソリン小売協会のBrian Madderson会長は、「この問題は、長期にわたって続くことが見込まれる」と語っています。
一部の報告によりますと、イギリス政府は5000人以上の外国人ドライバーに対し、短期査証によるイギリス入国を許可する見込みだということです。実は、数ヶ月も前から小売業の上層幹部や物流会社がこのことを要求していたものの、イギリス政府は拒否していました。
EU、さらにブレグジットによる悪影響に関して以前から警告していたヨーロッパ諸国の政治家の多くの見方では、事前に予測できていたと警告していました。実際に、現在イギリス市民は、ブレグジットとEUの条件・規制からの解放により福祉や生活水準が向上するという約束の実現に、現在の保守党政権が基本的な必需品の確保において失敗しており、現状の制御に無力なままとなっているのを目の当たりにしています。しかも、イギリスの経済状況も惨状に巻き込まれ、その経済指標は下落の一途をたどっています。このような事態が続けば、イギリスには政治、経済、社会面でのマイナスの結果が待ち受けていることは確実でしょう。
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