視点
原油の値上がりと米の要求に対するOPECプラスの反対
2021年に入ってから現在までに、OPEC石油輸出国機構の石油バスケット価格が30ドル以上も上昇しており、ガスの不足や世界での世界的なこのエネルギーの運搬費の上昇のさなかにあった先月には、1バレル84ドルを超えました。
ちなみに、日本での6日土曜時点での石油の価格は平均で1846.5円、ガソリンは165.6円となっています。
OPECおよびそれ以外の産油国が構成するOPECプラスが、石油増産を急ぐというアメリカの要求に反対した後、供給に関する懸念が見直されたことから、世界市場での原油価格が上昇しました。
原油価格は今でこそ1バレル80ドルを超えたものの、2020年春には新型コロナウイルスの大流行により経済活動が停止したことから、1バレル20ドルを切るという事態に至っていました。その後、OPEC加盟国はOPEC非加盟の10の産油国と協調して、OPECプラスとして自らの産油量のうち全体で970万バレルを市場から排除し、状況の回復を待ってこの生産削減分を元に戻すということで一致していました。
現在、産油国はOPECプラスという形で、価格のバランス図る目的での、産油量の段階的な引き上げ政策を主張しています。しかしその一方でアメリカ主導の西側ブロックは原油の値下げを目的とした大幅な増産を強調しています。この方向性を踏まえ、OPECプラスは第22回会合において、協調減産合意の据え置きで合意し、この組織全体での産油量を来る12月に40万バレル増産とすることを決定しました。一方、OPECプラス会合実施前までの1週間を通して、石油の消費国はOPECプラスに石油の増産を迫ろうと努力していました。
石油問題の専門家 Julianne Geiger氏は、「アメリカの銀行は、原油価格が引き続き伸び続け、2022年6月までに1バレル120ドルにまで達するだろう、との予測を示している」とコメントしています。
産油量の段階的な引き上げというOPECプラスの統一した立場に、アメリカは強い不満を示しました。バイデン米大統領は、「OPECプラス参加諸国はアメリカの要求に沿っての増産をしない可能性がある」と強調しています。バイデン政権は増大しつつあるエネルギー価格制御のため、圧力にさらされています。新型コロナウイルスの感染拡大からの段階的な脱却の結果としてのアメリカ国内での経済活動の増大により、同国では石油とガスオイルの価格が上昇しています。全米でのガソリンの平均価格は、2014年以来の最高値となる1ガロン(4.54リットル)当たり3ドル42セントに達しています。このため、バイデン政権は世界市場へのより多くの原油供給という主張により、結果としてアメリカ国内での石油加工品や原油を値下がりに持ち込むことを狙っているのです。ガソリンの値上がりは来年の中間選挙を見据える与党の民主党にとって、政治的な結果につながる可能性があります。このため、ホワイトハウスは環境・エネルギーという2つの分野において、矛盾をはらむダブルスタンダードな政策を踏襲し、石油増産への反対により世界の経済復興を危機に陥れているとして、OPECプラスに非難の矛先を向けているのです。
しかし、バイデン政権のこの要求は特にロシアの反対に直面しています。実際に、各領域で広がりつつある米ロの対立は現在、石油分野という新たな戦線の中で形状を現しつつあります。ロシアは、世界経済で鍵を握る石油価格への影響を理由に、一気の大幅な原油の増産には一切反対しています。ノヴァク・ロシア副首相は、同国として現状に鑑み、需要レベルの低下の危険を理由に、世界市場での産油量の大幅な増量に反対すると述べています。どうやら、アメリカの要求とは裏腹に、さらにはOPECプラス内にサウジアラビアといったアメリカの一部の同盟・パートナー国が存在するにもかかわらず、石油増産のプロセスはアメリカの思惑通りになっていないと思われ、またこの問題自体、アメリカの世界的な影響力の減退を示すもう1つの兆候といえるのです。
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