視点
イスタンブール和平交渉と、EU加盟を強調するウクライナ
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交戦中のロシアとウクライナの代表団による停戦交渉の最新ラウンドが29日火曜、トルコ・イスタンブールにて開催されました。
交戦中のロシアとウクライナの代表団による停戦交渉の最新ラウンドが29日火曜、トルコ・イスタンブールにて開催されました。
ウクライナの交渉担当者ダビド・アルハミア氏は、今回の協議の後、「いかなる国や勢力も、ウクライナのEU加盟を阻むことはできない」と表明しています。また、「わが国とロシアは未だに、一部の事項に関して合意に達しておらず、またわが国はロシア側から何の承認も得ていない」とし、「ロシアとのどのような合意が成立した場合でも、ウクライナは国民投票を実施する意向だ」と語りました。
ゼレンスキー・ウクライナ大統領も29日火曜夜、「ロシアとの和平交渉にはプラスのシグナルが存在する」と表明しました。しかしその上で、「戦争の終結まではロシアに対する各種制裁が解除されてはならない」と強調しています。
ロシアは、29日にイスタンブールにて実施されたロシア・ウクライナ間交渉を受け、「わが国は、ウクライナ北部での軍事活動を大幅に縮小する意思がある」と表明しました。しかし、アメリカ国防総省はこの主張を否定し、ロシアが撤退する兆しは見られない、としています。
イスタンブール協議で注目された重要な課題は、ウクライナの中立化および、NATO北大西洋条約機構への非加盟、そして同時にウクライナのEU加盟の必要性で、ロシアもこれらの項目を受諾しました。これに先立ち、ゼレンスキー大統領は自らの従来の立場を覆し、「対ロシア和平プロセスにおいて自らの要求を取り下げ、西側とロシアの対立の間の中立国となる用意がある」と表明しています。
ウクライナでは2014年の政変で西側寄りの政権が発足して以来、西側陣営への加入に向けて、EUやNATOへの加盟に関する記述がウクライナ憲法の補足事項に加えられています。アメリカとこれに同盟するヨーロッパ諸国も、ウクライナのNATO加盟を支持する側に回りました。しかし、同国のEU加盟に関しては、EU諸国内で肯定的な見方は存在していません。
ゼレンスキー大統領は、ウクライナにおけるロシアの特殊軍事作戦が始まって以来、ウクライナの即時のEU加盟を要請するとともに、「ウクライナ国民は、自国がEUに加盟る権利があるとともに、わが国のEU加盟承認は国民が政府を支持していることの証にもなる」と述べています。
ウクライナがこれほどEU加盟を切望しているにもかかわらず、同国のこの要請に対するEU本部の反応は冷たく否定的なものでした。中でも、EU圏内の最重要国・最大経済国であるドイツが、ウクライナのEU加盟に公然と反対したことで、ゼレンスキー大統領のEU加盟願望は無残にも打ち砕かれ、これに関する明るい見通しは全く残っていません。
欧州議会は今月、ウクライナのEU加盟要請を可決承認しましたが、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長は、この問題は非常に時間のかかるプロセスだとしています。
EUの様々な規準や規範、さらには特に金融・行政面での汚職対策に関するこれらの規準からウクライナが大きく乖離していることに注目すると、ウクライナの即時EU加盟というゼレンスキー大統領の要求の実現は、そもそもありえないことになります。
現在、ウクライナは汚職面では世界で117番目にランク付けられており、金融・行政汚職面ではヨーロッパでワーストの部類に区分けされています。また、ウクライナの経済状況も近年、日増しに悪化の一途をたどっています。
こうした事から、ウクライナのEU加盟の可能性は非常に低くなっています。EUが加盟申請国に対し定めている最も重要な条件の1つに、近隣諸国との領土・国境問題のすべてが解決していることがあげられています。
このことから、ロシアはウクライナのEU加盟に反対していないものの、その実現には莫大な年月がかかることを熟知しており、それゆえに、これに関しては神経を尖らせていないのです。ロシアにとって重要であり、それゆえに関与している問題はやはり、ウクライナがNATOに加盟しないことだといえるでしょう。

