視点
ウクライナ危機に対するイラン最高指導者の立場
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イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師
イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師が19日日曜、イランを訪問中のトカエフ・カザフスタン大統領および、その随行団と会談し、「問題を正確に注視し、見極める必要がある。それは、アメリカや西側諸国が常に東西アジアを含むさまざまな地域への自らの勢力範囲の拡大、さらには他国の独立や強大化への打撃を目論んでいるからだ」と語りました。
特にウクライナ戦争をはじめとする最近の国際情勢、そして中央アジアをも含む東西アジア諸国がアメリカを筆頭とする西側の動きに対して賢明になる必要性に言及していることは、自らの違法な利益や目的にむけた各国の政策の方向づけや、勢力拡大という西側の恒常的な工作や覇権的な目的に注目し、重大な意味を持つことになります。
西側ブロックの筆頭としてのアメリカの目的は常に、特に世界の戦略的に重要な地域を初めとした他国の経済、社会、文化、政治の中枢に勢力を拡大することであり、また、それらの国の政策を自らの政治、経済、軍事、安全保障面での壮大な目的や政策に合わせることとなっています。この点を踏まえ、西側諸国は旧ソ連の崩壊および、中央アジア15カ国による独立国家共同体の結成後、この地域に大きく注目し、国際舞台における中国とロシアといった2大ライバル国のさらなるけん制を目的に、この15カ国での軍事基地の設立や、これらの国との関係拡大のため、一連の措置を講じてきました。しかし、アメリカのこうした措置はロシアと中国の強い反発を引き起こしています。
アメリカは、2001年9月11日の同時多発テロ事件後、テロとの戦いを口実にアフガニスタンへ侵攻し、さらにはキルギスやウズベキスタンなどの国々で軍事基地を設置することに成功しました。しかし、アメリカの異常な行動ややり方により、米軍基地の受入国はこれらの基地の閉鎖を求め、それによりアメリカもその要求を呑まざるを得なくなりました。
現在、西側は再び、東ヨーロッパという別の重要な地域においても、ウクライナのNATO北大西洋条約機構加盟と、この軍事組織の東方への拡大を奨励することで、破壊的な戦争の勃発の下地をつくり、この戦火を消さないようウクライナにせっせと兵器を送付しています。
ハーメネイー師はこれに関して、「ウクライナ危機における主要な問題は、西側がNATOの拡大を狙っており、彼らが可能な場所ならどこでも自らの勢力拡大をためらわない」と語りました。
ウクライナにおける戦争や危機の現状の根本原因に関するイラン最高指導者の捉え方は、彼自身がアメリカ政権の体質や国際政治、さらには近年におけるウクライナ情勢に西側が大きく関与していることを見抜いていることによるものです。2014年のウクライナ情勢は、イラン最高指導者もすでに指摘しているとおり、西側寄りの政権の発足を狙ったウクライナでの一種のカラー革命・ビロード革命であり、それによってアメリカとNATO内の米の同盟国がNATOの勢力範囲を東方に拡大し、最終的にはロシアのけん制、弱体化、包囲、そして分裂に追い込もう、というものでした。しかしこれは、ロシアの警告や反発を引き起こし、そして結局は現在のウクライナでの特殊軍事作戦の実施にいたったわけです。