世界の情勢:トランプ大統領の制裁停止延長
(last modified Mon, 22 Jan 2018 14:47:51 GMT )
1月 22, 2018 23:47 Asia/Tokyo

アメリカのトランプ大統領が、1月12日、署名を行い、イランに対する核制裁の停止を延長しました。

一方でトランプ大統領は、イランに対する根拠のない繰り返しの主張を行い、アメリカが核合意に残留するための4つの条件を提示しました。また、アメリカは14の個人とイランとかかわりのある機関を、核問題以外で新たな制裁の対象とするとし、次のように語りました。

「私は2つの道を想定している。核合意の悲惨な欠点を修正するか、アメリカが離脱するかどちらかだ。イランに関する超党派的な計画の作成のために、議会と協力する用意がある」

この4つの条件とは、つぎのようなものです。

ひとつは国際的な査察団の要求に応じて、イランのすべての軍事施設への査察許可がだされること。2つ目はイランが核兵器保有に決して近づくことができないような保証、3つ目は、イランによる信頼醸成のために制限や監視を無期限にすることなど、核合意の内容の一部を変えることです。

そして4つ目は、トランプ大統領の見解であり、アメリカにとって、長距離ミサイルと核兵器計画は不可分で、イランのミサイルの開発と発射実験も制裁対象に含まれるべきだ、という点です。

核合意

 

イランと6カ国の核合意は、2016年1月から実施されてきましたが、アメリカは核合意の一員でありながら、常にこの合意に違反しています。トランプ大統領はほかの核合意参加国とは異なる立場を取り、核合意を危険な合意だとして、その破棄を求めています。しかし、世界各国はトランプ大統領の敵対行為に反対しています。

疑問として提示されるのは、アメリカの過剰な要求が、アメリカのイランに対する要求のすべてなのかということです。この答えは明らかです。アメリカは再びイラン国民を支配する夢を追求しているのです。

多くの人は、トランプ大統領がおろかで、偏執的、そして外見だけは大人の子供だと考えています。しかし、この想定が確かだと確信するものは、トランプ大統領個人の不安定さ、おろかさとその見解であり、彼は政治家の立場から問題を見るべきなのです。このため、このトランプ大統領の行動は肯定的に見られるものと、否定的に見られる2つの側面があるというべきでしょう。

肯定的な側面は、あらゆる圧力や努力、脅迫にもかかわらず、1時間半前まで、核合意の決定や文言に対する国際的な支持を認める文書も作成できないという、アメリカの孤立を示していることです。

否定的な側面は国際的な取り決めには効力を失っており、これらは損なわれやすいという事実を明らかにしています。このことは核合意だけでなく、そのほかの合意においても繰り返されています。

イラン外務省

 

イラン外務省は、公式声明の中で、次のように語っています。

「核合意の内容の力強さ、そして国際的な支持は、トランプ大統領とシオニスト政権が努力し、この合意を破棄したり、変えたりする上で結託する道を閉ざしている」

アメリカは追加制裁を行使し、当初から、世界各国に対して、核合意を正式に認めないという立場を示してきました。一方、イランは核合意の責務から外れた行動を一切取っていません。

明らかに、アメリカも核合意のほかの参加国と同じように、すべての責務を果たすべきなのです。しかし、実際には核合意に害を与えようとしています。確かにこの目標は、障害があることから、簡単に達成できるものではありません。核合意は力強い数カ国の合意であり、国連やIAEA国際原子力機関にも認められています。合意の支持は、それほど真剣に真剣に行われるべきなのです。

EUは核合意を完全に、効果的に実施し続けると強調し、EU諸国と、アメリカの核合意の決定とその結果について検討を行うとしました。

エナーディー博士

 

ここで、国際関係論の専門家で政治アナリストのエナーディー博士のお話をお届けすることにしましょう。

「確かにトランプ大統領は制裁停止延長に署名し、核合意から離脱しなかった。しかし、その政策の中で、次第に核合意をより影響力のないものにした。核合意を無効にするためのホワイトハウスと議会のたらいまわしの中で、アメリカは核問題以外の制裁を強化することで、制裁による戦略に固執することを選んだ。1979年からイランに対する制裁を続けているアメリカは、新たな政策により、人権侵害やテロ支援だと主張するものを理由に、副次的な制裁を新たな形で行使し、それを強化している。イランの14の法人に対する追加制裁の行使は、まさにこれに合致している」

エナーディー博士は、また、次のように語っています

「現在も、トランプ大統領が業務的な事柄により核合意を離脱しなかったのは、アメリカ上院外交委員会のカーディン民主党議員が語ったように、イランに関する法律をめぐり、議員の間で合意が得られなかったからだ。またトランプ大統領の法案により、より多くの業務が必要になることから、一連の制裁行使は再開されることはなかった。」

実際、イラン、ロシア、中国、EUの核合意の維持に向けた努力にもかかわらず、核合意によるつながりのみが残っています。新たな核合意を作り出そうとして、新たな筋書きを実行するアメリカの目的はひとつであり、それは地域問題とミサイル問題にもこの問題を波及させようとすることです。

アメリカのイランに反する政策が継続され、EU諸国の立場にも変化が見られているという事実の中で、アメリカの行動を分析する上でひとつの側面だけでなく、もう一方の側面にも留意する必要があるでしょう。核合意の今後のシナリオを考えることにより、それに適した新たな政策を取ることが望まれます。

イランは決して核科学に反する行動を取っておらず、また、IAEAもイランの核計画の平和性と、核合意の完全な遵守を認めています。イランはIAEAの監視の下、原子炉や原発に必要な核燃料の生産のために濃縮活動のレベルを高めるといった、核活動のレベルで、核合意前の状況に戻ることができます。これは正式に認められている権利なのです。

つまり、核合意は国際社会がそれを真剣に守り、あらゆる圧力からイランを解放するのであれば、イランにとって有益なものとなるのです。核合意を最終的なものにするのは、トランプ大統領が要求する核合意の完成ではなく、アメリカが国際社会との協力の道を忘れてしまっているという問題を理解することなのです。

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