ペルシャ語ことわざ散歩(146) 「誰かの尻尾を踏む」
皆様こんにちは。このシリーズでは、イランで実際に使われているペルシャ語の生きたことわざや慣用句、言い回しなどを毎回1つずつご紹介してまいります。
今回ご紹介するのは、「誰かの尻尾を踏む」です。
ペルシャ語での読み方は、Paa ruu-ye dom-e kasii gozaaashtanとなります。
この表現も、文字通りの意味から何となく本来の意味をご想像いただけたかもしれませんね。この慣用句は、相手を怒らせる、他人の怒りを煽る、という意味を表し、日本語で言う「逆鱗に触れる」に近い表現ではないかと思われ、「ライオンの尻尾を踏む」という形で使われることもあるようです。
この表現は、大昔に人々が日々の食物を手に入れるなどのために、日常的に狩りをしていたことに由来していると言われています。野生動物は特に警戒心が強く敏感であり、ちょっとした物音や人影などに気づけばさっと逃げ出します。そうした獲物を確実に捕らえるためには、狙いとする獲物に気づかれないように近づき、隙を狙って捉える必要があります。
しかし、時には狩りをする人々は獲物をめがけて進む自分の進路上の思わぬところに動物がいるのに気づかず、誤ってその尻尾を踏んでしまい、その動物を怒らせる羽目になる、ということもあったとされています。狩りをする人は決して、意図的に動物の尻尾を踏むつもりはなかったとしても、気づかずに誤って踏んでしまうという事態は十分に予測できるのではないでしょうか。
このことから、意図的にではなく、自分の何気ない言動が、つい言ってしまった一言が相手の怒りを買ってしまった、というような場合にもこの表現は使われているようです。自分では良かれと思っていた、あるいは何気ない言動が、自分の考えとは裏腹に相手や周りの人の怒りを買うことにもなるかもしれません。そのように、他人の尻尾を踏むことのないよう、やはり日ごろの言動には十二分に注意を払いたいものですね。それではまた。