地域、国際的な砂漠化対策
地域・世界規模で行われている砂漠化対策について考えます。
これまで数回にわたり、世界で進む砂漠化とその破壊的な影響についてお話しました。また現在、国際社会が砂漠化により人間の生活と自然環境が多くの問題に瀕しているという現実を踏まえた上で、砂漠化対策を打ち出したことについても説明しました。この点については、地域・国際的な多くの措置が講じられています。今夜は、こうした対策措置の一部についてお話することにいたしましょう。
1987年に、イギリスのオックスフォード大学が発表した「我ら共有の未来」と題する報告書では、次のように述べられています。
「地球は1つである。だが、世界は1つではない。我々は誰もが、自らの命の存続のために、1つの青空に依存している。だが、いずれの社会や国々も、自分たちの存続や幸福のためだけに努力しており、自分の努力の他人への影響にはそれほど注目していない」
過去数十年間において、世界で砂漠化が急速に進んだことは、オックスフォード大学によるこの報告書の正当性を裏付けると言えるのではないでしょうか。砂漠化による懸念が生じたことから、1992年には初めてブラジル・リオデジャネイロで、環境と開発に関する国連会議が開催され、砂漠化の防止に関する本格的な協議が行われました。この会議では、その成果、すなわち21世紀に向けて国際社会が実践すべき事柄をまとめたアジェンダ21の第12章が、砂漠化対策に充てられています。この部分では国連に対し、砂漠化や干ばつの問題を国際的な問題として扱うことが要求されています。これについて、国連は、この組織による砂漠化対処条約を起草するため、政府間交渉委員会を設置しました。この委員会は3年後、様々な会合を重ねた上で、国連砂漠化対処条約の最終案をまとめました。
1994年6月17日には、フランス・パリに国連加盟国が一堂に会し、日々高まる砂漠化の危険に対する世界各国の政府と人々の注目を促すため、国連砂漠化対処条約を採択しました。この条約は、世界の乾燥地帯における人間の過剰な活動の抑制が目的です。こうして、22年前に土壌学や水文学、地質学、気象学、植物学、環境学など、様々な専門分野にまたがる学者の多くが集まり、国際的な条約の制定により世界各国の政府責任者に対し、次のような警告を発することになりました。それは、地球上で少なくとも130億ヘクタールの乾燥地が砂漠化の危険に瀕しており、地球村の市民の食糧の安全や農業インフラへの被害だけで数十億ドルにも上る、というものです。
現在、190カ国以上に上るこの条約の加盟国が、乾燥地帯の人々の生活条件の改善や、地力の回復と維持、土壌の有効な利用、そして干ばつの影響の緩和を目的に、相互協力を行っています。国連砂漠化対処条約の事務局も、砂漠化や土壌の破壊への対策活動に、各国の地元民の参加を奨励し、先進国と発展途上国の間の協力を円滑化し、知識や技術を提供することで、土壌の継続的な管理の改善を目指しています。
国連砂漠化対処条約の目的は、土壌の保護や種付け、種まき、灌漑と手入れなどのための緑化地帯の維持と文化の拡大による、荒地や砂漠付近の農業用地の破壊防止、特定の期間と目的による以外には、家畜を放牧地に入れないこと、自然環境におけるバランスの維持などとなっています。
国連砂漠化対処条約は、下意上達の運営モデルを提示し、国際法に新たな部分を追加しました。この条約の文書では繰り返し、特に女性の協力をはじめとした完全で効果的な協力のほか、一般人やそのほかの専門家による団体としてのNGO・非政府組織の役割、協力のための地元の社会の可能性を高めることや、その下地作りなどが強調されています。また、この条約の実施ための6つの戦略を定めており、それは一般市民への教育や理解の促進、政策の枠組み作り、知識や技術の向上、可能性作り、技術ソースの確保と移転、運営の後方支援などとなっています。
現在、砂漠化の問題に悩む国々は国を挙げて、また地域間同士での複数のプロジェクトの開発や実施により、国連砂漠化対処条約を実施しています。しかし、今なおアフリカ、アジア、中南米カリブ海地域、地中海北部、ヨーロッパ中部や東部には砂漠化の問題が存在しています。
毎年、世界では1200万ヘクタール、すなわちスイスの総面積の3倍に相当し、2000万トンの穀物を栽培できる面積の土地が、砂漠化により消滅しています。こうした土壌の破壊は、食糧生産の減少、水不足のプロセスの進行、数億人の人々の貧困、20億人の人々への悪影響を伴います。これはいわば、世界を脅かす目に見えない危機といえます。砂漠化による影響や結果は、単に動植物の絶滅や自然のエコシステムの破壊につながるのみならず、砂嵐の激化や土壌の生産力の低下により、道路や通信ライン、電力網といったインフラにも打撃を与えます。このため、砂漠化は全世界での持続可能な発展や経済・社会の安定、貧困の撲滅、自然環境の安全、生物の多様性にとって深刻な結果となる、国際的な問題なのです。
専門家の見解では、砂漠化の進行が抑えられるのは、地域・国際的な動向に著しい変化が生じた時のみだとされています。こうした変化は、段階的に土壌の恒常的な利用や、増加する世界の人口の食糧の確保へと、世界の人々を誘導します。このように、砂漠化の抑制は本当の意味ではより大きな目的の一部でしかなく、その大きな目的とは砂漠化や干ばつの影響を受けている国々の、持続可能な発展なのです。
砂漠化は、気候の変動や生物の多様性の喪失を伴うものであり、持続可能な発展にとって最大の問題とされています。このため、国連砂漠化対処条約はこれまで通り、貧困の緩和と恒久的な自然環境の支援のため、被害を受けた地域でのその影響の緩和、砂漠化や土壌の破壊の阻止と土壌の回復に向けた、国際的な協力の目的を追求しています。
イランは、国連砂漠化対処条約に調印した3番目の国であるとともに、1996年のこの条約の批准のプロセスを完結させています。さらに、イランは2004年にすべての関係国の幅広い参加のもと、様々なレベルでの協力プロセスにより、砂漠化対策と干ばつの影響の緩和のための措置を講じる計画を打ち出しました。その主な内容は、様々なレベルでの計画全体における対象地域の社会の参加、国連砂漠化対処条約に記載されている事柄のボトムアップ型の善後策を強調した決定などです。
国家単位での措置を講じる計画の優先事項の1つは、マクロ経済の各部門のための統一された解決策、および砂漠化対策国家委員会の可決内容を活用することです。アジア地域では、各テーマごとに分かれた6つのネットワークが設けられ、各国単位、そして地域ごとの計画の実施を支援する目的で、地域の6カ国の責務が明確に定められています。このうち、イランは放牧地管理と砂嵐の制御をテーマとするネットワークを受け持っています。このネットワークの目的は、情報の収集および整理、そして恒常的なシステムの復活と放牧地の管理、地域諸国の経済・社会的な状況に基づき、家畜の生産を目的とした地域の可能性を高めることです。
国際社会はこうした措置の実施により、確実に土壌の破壊を食い止められるはずです。また、土壌の破壊の阻止は、食糧の安全、郡部地域における貧困や飢餓の緩和、自然環境の大きな問題に対する抵抗力の育成に大きく寄与することになります。このため、土壌破壊対策には、世界規模での決意が必要とされます。今日、砂漠化という現象は、世界の一部の地域に影を落としており、天然資源や自然環境の保護に向けた抜本的な対策が講じられなければ、今後数年のうちに砂漠化が世界の多くの地域にまで広がるかもしれません。
今日、地球の温暖化や気候の変動、砂漠化といった大自然の脅威は、地球のすべての住民にとっての共通の敵であることが証明されています。このため、時間的な余裕のあるうちに、すべての国が、砂漠化に対処し土壌を保護するために、持続的、包括的な解決策を打ち出し、これを普及させることを再び約束する必要があります。その理由は、地球は再生不可能な資源、そして預かりものであり、次の世代に受け継がれるべきものだからなのです。