フサエリショウノガン(ノガンの一種)(動画)
今回は、イランに生息するノガンの一種、フサエリショウノガンの生態や特徴についてご紹介することにいたしましょう。
。フサエリショウノガンは、イランで見られる珍しい渡り鳥で、現在IUCN・国際自然保護連合による保護の対象の1つとなっており、水や草木のない荒地や砂漠に生息しています。
フサエリショウノガンの多くは、北大西洋のカナリア諸島や北アフリカ、南西アジアに生息しています。この鳥は、生物学上は、ツル目ノガン科の野鳥とされています。
フサエリショウノガンは、くちばしから尻尾までの長さが最長65センチに及びます。この野鳥のオスとメスは外見上良く似ていますが、オスの方がメスよりも若干大きく、尻尾が長くなっています。首の横には黒い線が入っており、翼は、黄土色を基調としていますが、飛んだときには長い翼の大部分が黒と茶色であり、翼の下に隠れている羽毛には白が混ざっているのが見えます。
フサエリショウノガンのオスのヒナは、メスのヒナと似ているように見えますが、メスは首の脇にある装飾毛が少なくなっています。この野鳥は、黄色く大きな瞳をしており、うずくまると完全に周りの環境に紛れて見分けがつきにくくなります。また、この種の野鳥は非常に静かで、声高にさえずることはほとんどありません。
フサエリショウノガンは雑食性で、植物の種子や小枝、草花を食べますが、イナゴや甲虫、イモムシ、クモ、アリ、トカゲのほか、ヘビなどを捕食することもあります。もっとも、この野鳥の食物の大半はナツメ属の樹木やオニナベナなどの植物の葉、そして大麦、小麦などの穀物の実、さらには身近にあるダイズ、ゴマ、ラッカセイなどの油糧種子などが占めています。
フサエリショウノガンは、水や植物の少ない環境にもうまく適応でき、こうした地域に自生するオカヒジミなどをついばむことが多くなっています。また、水を飲むことは稀で、食物から体に必要な水分を摂取します。この野鳥は、地面に巣をつくり、夏の暑い時期には半日ほどを潅木の茂みの中で過ごし、あまり外には出てきませんが、早朝や風の吹く午後になると、えさを探しに出かけます。この際には、遠くからでもフサエリショウノガンの姿が見られます。
フサエリショウノガンは、自分の身を守るに当たって面白い習性を有しています。それは、空中を飛んでいる際に敵に追跡されたときに、防衛手段として敵に向かって粘り気のあるフンを落とすからです。このため、フサエリショウノガンは爆弾落とし鳥としても知られています。この自然の落し物には非常に粘り気があるため、この野鳥を狙う他の大型の鳥の翼に付着すると、翼が癒着してそれ以上飛行できなくなるというわけです。これまでに、フサエリショウノガンがタカやハヤブサなどの猛禽類に狙われた際に、この方法で身を守ったケースが多く報告されており、しかも狙った側が逆にやり込められたという例がほとんどです。
フサエリショウノガンが交尾するに当たっては、まずオスが驚くべき方法で、求愛行動を行います。オスはメスの前で大またでなりふり構わず歩き、首の部分を覆っている羽毛と、頭に生えている毛を逆立てます。そして、交尾した後は、メスが地面に潅木で作った巣の中に2つ、または3つの卵を産みます。
フサエリショウノガンの卵の色は、荒地や砂漠地帯の土の色に非常によく似ているため、見分けがつきにくくなっています。このことは、外敵に簡単に見つからない上では、この野鳥にとって好都合ではあります。、しかし一方で、フサエリショウノガンの生息地域に家畜動物が放牧されることでこの野鳥の巣や卵が破壊される可能性もあるため、卵が目立たない色をしていることは、逆にこの野鳥の生存を脅かす要因にもなっています。
残念ながら、フサエリショウノガンは生息地の破壊のほか、乱獲により絶滅の危険にさらされています。この野鳥が乱獲されている理由の1つは、ペルシャ湾岸のアラブ諸国の有力者たちが、タカによるこの野鳥の狩りを盛んに行っていることにあります。ハンターはフサエリショウノガンを捕獲し、アラブ人たちに売却しています。
フサエリショウノガンの密貿易商人は、この野鳥もしくはその卵をイランからアラブ諸国に密輸し、高額で販売します。イランでは、この野鳥の乱獲に対して厳しい処罰が科されることから、密貿易人は環境保護の監視員に自らの商売を妨害されないよう、沢山のフサエリショウノガンを狭い場所に閉じ込め持ち出そうとします。このため、この野鳥の多くが売却される前に死んでしまったり、大きな被害を受けることになります。
イランでは、自然保護関係の機関がフサエリショウノガンを保護するために大規模な措置を講じています。しかし、環境保護の専門家の見解では、この野鳥の生存を脅かす要因を解消し、その生息地の安全や好ましい状況のもとにその個体数を維持するためには、イランのみならず地域や世界規模での協力が欠かせないとされています。
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