基礎科学におけるイランの発展
この時間は、基礎科学におけるイランの発展についてお話ししましょう。
イランは1979年のイスラム革命勝利後、航空宇宙技術を手にし、短期間のうちに、衛星技術の完全なサイクルを持つ世界10か国の仲間入りを果たしました。
また、航空宇宙技術に関する各国の発展を監視する国際的な機関により、イランは最近、航空宇宙分野の新興5か国のひとつとされ、最も急速な科学の発展を経験してきました。
国の科学的な発展の基盤を築く上で、基礎科学は非常に重要です。このことから、この時間は、基礎科学におけるイラン人学者の発展についてお話します。
知識の生産が、国の恒久的な発展と開発において重要な問題であるとき、基礎科学や人文科学は、その本質や特徴により、他の知識や技術の生産と開発の基礎と見なされます。
基礎科学は、他の知識、特に応用学の発展と開発の下地を整え、知識を技術に、また技術を富に変えるサイクルを完成させます。そのため、基礎科学や人文科学は、各国の持続可能な開発を支えていると言っても過言ではありません。基礎科学は、さまざまな現象のもとや、それらの関係や本質をについて研究する学問です。
一部の学者によれば、基礎科学は、他の学問を支える存在であるため、世界の多くの大学や研究機関は、常に、この分野に莫大な投資を行ってきました。その結果を利用することで、他の学問、技術、産業の発展や開発につなげるためです。過去数十年に渡って、基礎科学に投資を行ってきた国々の多くは、現在、他の学術分野、科学を技術や富に変える活動において他国をリードしています。
基礎科学が、ある国の力や富の生産に及ぼす影響は非常に大きく、アメリカのクリントン元大統領時代の経済顧問であったレスター・サロー氏は、資本主義の未来と大きな問題に関する著書の中で、繰り返し、日本などの先進国の経済発展における数学の明らかな役割を指摘しています。サロー氏は、「第二次世界大戦後、日本がアメリカに比べて大きな経済成長を遂げたのは、この国が、国民、特に労働者の数学の習得に注目したためだった」と強調しています。
歴史を見るだけで、基礎科学がどの程度、各国の経済発展や科学の成長に影響を及ぼしてきたかが分かります。オマルハイヤーム、イブン・ヘイサム、ハージェ・ナスィーロッディーン・トゥースィー、その他、イスラム文明の形成と発展に大きく貢献した学者たちは皆、数学、天文学、物理学、地質学、化学、生物学といった学問において傑出していました。そのため、洋の東西を問わず、基礎科学は、文明形成の基盤であったと言えるでしょう。
基礎科学が、文明の基礎や他の学問の発展に及ぼす影響により、イランもまた、科学面での政策を決定する上で、基礎科学に特に注目しています。イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師は、常に、基礎科学への注目を強調し、この学問は、国を知識の頂点に至らせる要素だとしています。
「知識生産に関して、2つの点を強調したい。一つは基礎科学であり、もう一つは、人文科学である。世界を見ると、先進国をその地点に至らせたのは、数学、物理学、化学、生物学であることが分かる。これらの学問に真剣に取り組むべきだ。工学や医学は消費のためのものである。我々は、富を生産する機関に投資を行うべきである。そのため、大学では基礎科学が重視されるべきだ」
これにより、イランの科学面の政策の基盤となる包括的な計画では、基礎科学の強化と発展が強調されています。
この計画の中では、基礎科学の研究と教育の発展、強化という全体的な戦略が、イランの科学技術の発展に向けた重要な戦略として盛り込まれています。この計画は、「応用科学は、機能的な基礎科学に基づいており、基礎科学を強化しなければ、応用学を発展させ、知識を技術や富に変えることはできない」という考え方に基づいたものとなっています。
基礎科学を支援するための努力や、科学面での政策における基礎科学の重要性により、現在、イランの大学では、50万人以上の学生が基礎科学を学んでいます。
イランの大学の学生のうち、基礎科学で学ぶ学生の割合は10%に満たないにも拘わらず、イランの知識生産の多くは、この分野で行われています。統計によれば、2000年から2014年までの間、イランの知識生産のおよそ4分の1が、基礎科学分野の研究者によって発表されました。現在、テヘラン大学、教育大学、シャヒードベヘシュティ大学、アミールキャビール工科大学が、イランの基礎科学の生産において優れた活動を行っています。
引用文献データベースのウェブオブサイエンスによる統計や情報によれば、イランの知識生産のおよそ半分が、基礎科学分野の研究者によって行われています。また、質の点から、基礎科学の論文は、世界的にも非常に良好な状況にあるとされています。
論文の質をはかる上で、その論文が参照された回数を基準にした場合、イラン人学者による知識生産全体のうち、56%が、基礎科学に関する論文だったということです。
また、調査の結果、1991年から2010年の20年の間に、国際的な論文の発表数と参照回数の点で優れていたイラン人学者の90%が、基礎科学分野の専門家だったことが分かっています。さらに、イランの優れた学者48人のうち、43人が、基礎科学分野の学者で、残りは製薬や工学の研究者でした。これらの学問も、基礎科学と密接な関係を有しています。
イラン人学者の基礎科学に関する論文の質の高さは、イランのナレッジベース研究所が発表した研究結果を見れば分かるでしょう。これらは、国際的な平均を上回っています。
基礎科学の関連分野でも、イラン人学者の論文は、質と量の点で称賛に値します。たとえば、化学においては、知識の生産は重に先進国が担っていますが、イラン人学者は、論文の数を増やし、その質を向上させることで、化学の分野で92カ国中32位となっています。
この順位の中で、イランを上回っているインド、ブラジル、トルコを除き、他の国々は皆、先進国となっています。これは、イランが先進国に匹敵していることを物語っています。また、イランは、ノルウェーやアイルランドといった国々よりも上位となっています。イラン人の学者は、化学の分野において、1万本以上の論文を発表しています。
物理の分野でも、イラン人学者は、およそ3000本の論文を生産し、117か国中、46位となっています。物理の分野のイランの順位は、多くの地域諸国や先進国だけでなく、アイスランドやリトアニアといった国々を上回っています。さらに、香港、南アフリカ、ベラルーシ、チリ、モロッコ、エストニア、アルジェリアといった国々は、知識生産の点で、イランに遅れを取っています。
生物学や地質学の分野でも、状況は同じです。生物学に関して、イラン人学者は、1200本以上の論文を生産し、世界56位となっています。
地質学に関しては、700本以上の論文を生産し、世界51位となっています。
数学や統計学に関しても、イランは多くの功績を残しています。イラン人学者は、アイルランドやベラルーシを上回り、120本の論文を生産し、世界45位となっています。
このように、イランは基礎科学に真剣に取り組み、人々の生活や経済状況を向上させ、社会の状況を改善しようと努めています。そのため、イランは、国家の科学面での政策において、2025年までに地域で1位、世界でもしかるべき地位に立つことを目標に計画を立てており、イラン・イスラム文明の復活に向かって歩もうとしています。