6月 03, 2018 17:53 Asia/Tokyo
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    森林         

昔々のこと、地上では、神の創造物である昆虫や爬虫類、鳥類、草食動物、肉食動物たちが暮らしていました。

彼らは、朝、目覚めると、その日のエサを探しに出かけ、花の蜜を吸ったり、木の実をついばんだり、草を食んだり、獲物を取ったりするのが常でした。けれど、その中に、唯一、神の他の創造物とは違う生態を持つ鳥たちがいました。この鳥は、木の実も、草も、肉も食べず、ただ水を飲むだけで生きていられたのです。

 

そのような鳥たちには、何の苦労もないはずでした。なぜなら、地球上のほとんどは水で覆われていて、鳥の腹を満たすくらいの水なら簡単に見つかります。ここに水がなくても、あちらにはあるでしょう。それに鳥ですから、翼を広げて飛び立てば、どこでも水がある場所に移り住むことができます。ところが、この鳥たちは、他の鳥たちとは考え方が異なっていました。彼らはいつも、水が水蒸気になって、消えて無くなってしまうことを恐れていたのです。

 

この鳥たちは、海や川のそばで暮らし、すぐに水が手に入るように気をつけていました。それなのに、いつものどの渇きに苦しんでいました。鳥たちは、自分たちが水を飲むことによって、世界の水が尽きてしまい、のどの渇きによって死んでしまうのを恐れていたのです。別の鳥たちから、「そんなに水が尽きるのを恐れてのどの渇きに耐えるべきではない」と忠告されても、頑なに自分たちの行動を変えようとはしませんでした。水が手に入っても、口にするのはほんの一口だけ。なぜなら、腹いっぱいに水を飲んでしまって、湖の水が干上がってしまうのが怖かったからです。

 

何年も何年も、水だけを飲んで生きる特別な鳥たちは、必要な分の水さえも口にしませんでした。ですから、徐々に体は衰え、その数もしだいに減っていきました。水がなくなることに常に怯えていた鳥たちは、年々仲間の数が減っていくのを見て、何とかしなければと思いはじめました。そして、このように考えたのです。

「これからも、水をたくさん飲んではいけない。水がなくなることを心配するあまりに、仲間たちが死んでしまっているに違いない。もし、もっと飲む水の量を少なくすれば、きっと不安も減るに違いない」

 

一羽の鳥が言いました。

「全ての生き物が、私たちのように水を飲む量を減らしてくれたらいいのに。彼らは私たちのように考えたりはしない。好きなだけ水を飲んで、そのうち、世界中の水が尽きて、私たちがのどの渇きで死んでしまうことにならないか心配だ」

 

もう一羽が言いました。

「まったくだ。明日から、全ての生き物に、私たちのように気をつけて、水を飲む量を減らすように呼びかけて回ろうじゃないか」

 

そのとき、木の枝に止まって、ずっと彼らの話を聞いていたカラスがこう忠告しました。

「君たちは、いつか水不足に悩まされないよう、水をあまり飲まないようにしている。だがそれが、君たちの仲間が死んでしまっている一番の原因だ。君たちがしていることは、いつの日か財産を失うのが怖くて、一生乞食のように暮らす人間と同じだ」

 

しかし、鳥たちは、賢いカラスの忠告に耳を傾けませんでした。そのため、とうとう彼らは絶滅し、水だけを飲んで生きる鳥は、地上から姿を消してしまったのです。

 

このときから、金持ちなのに貧しくなるのが怖くて、乞食のように人に助けを求め、自分の財産を貯めこむ人のことを、こんな風に言うようになりました。

 

「いつか貧しくなるのが怖くて、一生乞食のように暮らす」

 

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