7月 07, 2018 19:48 Asia/Tokyo
  • 自尊心
    自尊心

魂の健康の指標の1つは、自尊心や、人間としての尊厳を維持することにあります。今回は、このテーマについてお話することにいたしましょう。

前回お話したように、自尊心を持つ人は今自分が持っているものを大切な資本とみなし、神から限りない成長の下地や可能性、才能を与えられていることに気づいています。このように、自分に対する本当の自信を持つ人は神をより所とし、そうした可能性や才能を正しく活用するもので、決して自分を過小評価したり、はたまた自己愛に陥ることはありません。

自分を過小評価したり、あるいは自分が誰よりも一番優れていると思い込む、という2つの考え方は、人間を破壊に陥れます。自分至上主義的な考え方は、自分への注目が限度を超えた状態であり、傲慢さやうぬぼれといった醜い性格が出来上がる事になります。一方で、自分を実際よりも低く評価してしまうことも、自分が持って生まれた才能を潰し、うつ病に陥る原因となります。このため、正当で賢明な自尊心や、自分を正しく評価することは、魂の健康の増進のためになります。

魂の健康の指標の1つは、正当な自尊心を身につけ、人間としての尊厳を維持することにあります。イスラムの見解では、崇高なる神は人間を特別な目的のために創造しており、この目的の達成に必要なすべての可能性を、すでに人間に与えているのです。

人間は、神に近づくという自らの目標を達成するために、一連の手段や可能性を必要としています。中でも、社会における個人の尊厳は、特に重要なものとされています。尊厳とは、人間には威信があり、社会で尊敬される存在として生活する権利があり、何人も自らの言動によりその人の威信を傷つけてはならないということです。このため、人間が進歩し魂の健康の増進にふさわしい下地をつくるには、その人の尊厳が維持されるべきであり、決して侮辱されてはならないのです。

 

 

自尊心

 

人間は、威信が傷つけられ侮辱された場合、自分には誇るべき人格がないと感じ、精神的なストレスや動揺、絶望感を感じます。人間として尊敬されることは、イスラムでも1つの原則として認められており、これについて多大な強調がなされています。イスラムは、ほかのどの宗教よりも、社会における人間の尊厳を必要不可欠のものとみなし、全ての人々が人間として、その人が誠実である限り、人としての尊厳やそれを発端とする本質的な権利を享受する、と考えています。

人間は万物の霊長とされ、その他の創造物とは決定的に違う特徴を与えられています。その最大の特徴は、理性や知性を与えられていることであり、地球上の生き物の中で唯一、考える力により見識に沿った選択のできる生物とされています。

イスラムの聖典コーランでは、人間には神を崇拝する精神が宿っているとされ、第17章、アル・イスラー章、「夜の旅」第70節では、預言者アーダムの子供たちの尊厳と、彼らが世界のどの存在物よりも優れていることが強調され、次のように述べられています。

“誠に、我らは預言者アーダムの子孫たちを重んじるとともに、彼らを、我々の創造した多くの存在物よりもはるかに優越した存在とせしめたのである”

まさにこのために、神は天使たちに命じて、人間に自尊心を与えたといえます。人間は、本質的な尊厳といわれるこの独自の立場を有しています。そして、すべての人々が人間としてのこの尊厳を持っており、それはその人の持つ信条や宗教、またその人の属する人種などには一切関係はありません。

 

コーラン第17章アル・イスラー章「夜の旅」第70節

 

 

ここで、イスラムのある逸話をお届けする事にいたしましょう。

ある日のこと、預言者とその教友たちがある場所に腰を下ろしていました。そこへ、あるユダヤ教徒の亡骸を運ぶ人夫たちが通りかかりました。預言者は、そのユダヤ人の亡骸に敬意を表して立ち上がり、哀悼の意を表して再び腰を下ろしました。このとき、教友たちの1人が次のように述べました。「預言者様、あの亡骸はイスラム教徒ではなかったのですか」 すると、預言者は次のように述べました。

“あの人物とて、人間には変わりなく、人間性の面ではほかの人と平等なはずだ。あの人に敬意を表するには、これで十分である。神を信じない人であっても、啓典の民であっても、あなた方イスラム教徒とまったく同等であり、あなた方が持っているのとまったく同じ人権を、彼らも持っているのだ”

この本質的な人間としての尊厳以外に、私たちが自らの意思により獲得したものはないはずです。もっとも、ある人が持つ敬虔さや禁欲がゆえにある種の尊厳、そして精神や魂の高潔さの点での優劣が生じる事は事実です。これについて、コーラン第49章、アル・ホジョラート章、「私室」第13節には次のように述べられています。

“誠に、あなた方のうち、神のもとで最も大切にされる人は、あなた方の中で最も敬虔な人物である”

このような尊厳は、その人が持つ正しい信条や倫理面での美徳、正しい行い、そしてその人の意思により得られるものであり、人間を最高の極致に至らせるものです。数多くの人々の中でも、より敬虔な人が大きな尊厳を持ち、より尊敬されることになります。また、現世におけるすべての存在物の中でも、人間が自身の意思に従って獲得する威信や尊厳を高めることで、その人はより多くのすばらしい側面をはぐくまれ、その人の魂の健康のレベルが高まるのです。

次回もどうぞ、お楽しみに。

 

 

 

 

 

 

 

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