7月 16, 2018 20:24 Asia/Tokyo

中東のジオエコノミクスにおいて、エネルギー経済、特に天然ガス産業は、決定的な要素のひとつとみなされています。ガス輸出国フォーラムの調査によれば、今後の25年間において、天然ガスは世界のエネルギー消費の半分を占めることになるということです。

エネルギー消費が伸びていることから、天然ガスの需要量は、この期間において、50%増加することになるでしょう。この需要の伸びの主要な部分は、中国、インド、中東地域におけるものと、発電となるでしょう。

 

ガス輸出国フォーラム

 

 

ガス輸出国フォーラムの調査は、この組織の加盟国が、世界市場における天然ガスの40%を輸出しているということを示しています。この割合は、25年後も変わることはないと予想されています。天然ガスの輸出は、この期間で60%増加し、その3分の2はパイプラインにより、それ以外はLNG、液化天然ガスという形になるでしょう。

現在、天然ガスの輸出に関して、パイプラインを通じてはロシアが、LNGという形ではカタールが最も重要な国とされています。2020年から、イランもこの2カ国と共に、パイプラインでもLNGでも重要な役割を果たすことが予想されています。天然ガスの主な輸出先は、ヨーロッパ、インド、そして中国であり、いずれも今後において、地域の天然ガス資源を必要とすることになります。

また、この調査からは、イランは世界最大の天然ガス埋蔵量を保有する国であることが示されています。

 

液化ガスを移送するタンカー、イラン・南パールスにて

 

 

現在、中央アジア地域の天然ガスをヨーロッパに移送する多くの計画が実施されていますが、最も安全で安上がりな最良の方法とは、イラン国内を通じてそれを移送することです。中央アジアだけでなく、ペルシャ湾にも多くの天然ガスが埋蔵されており、消費市場にそれを移送する上で最も良いルートとは、イランを通過するルートです。

ペルシャ湾岸の南パールス経済特区などの可能性は、国際的なアクセスとともに、イランをエネルギー移送における経済的中心地のひとつに変えました。イラン南東部のマクラーン海岸も、オマーン海やインド洋につながっており、大変重要で戦略的なホルモズ海峡のルート上にあることから、この分野におけるもうひとつの場所とされています。この地域における投資は、世界最大のエネルギー消費国である中国やインドといった国の注目を受けています。

 

イランからトルコに天然ガスを移送する施設

 

 

ペルシャ湾とオマーン海に、また、北はカスピ海の海岸線に広がるイランの沿岸部は、エネルギーの供給源とつながっています。この場所はエネルギーの生産や移送におけるインフラ構築、原子力などの環境に即した信頼性ある投資に関して、優れた可能性を整えています。ウルバン・ルスナック・エネルギー憲章事務局長は次のように語りました。

「イランは石油、天然ガス、電気の分野で、そしてさまざまな会合の開催と、世界のエネルギー取引の場におけるエネルギー法の制定に関する協力において、積極的な役割を果たすことができる」

 

ガス輸出国フォーラムの首脳会議

 

 

地域における石油と天然ガスの大きな生産者と大きなエネルギー消費市場が存在することは、イランが地域における石油と天然ガス輸送の中心となるのに適した下地を作っています。イランの重要な特性とは、東西南北をつなぐ橋として、エネルギーの生産国と消費国の間のエネルギー輸送に関して重要な役割を果たす、地理的な特徴にあります。

エネルギーの輸送と供給に関する重要な問題とは、イランの安全と安定です。この要素は、エネルギー消費国への供給において、重要な役割を有しています。この重要性は、中東における多くの主要なエネルギー生産国の政治的安定が、中国のような石油消費国の最も大きな関心事となると考えられる場合に、より明確になります。世界の主要なエネルギー供給国の中で、そういった特性を持ち合わせている国はほとんどなく、この状況から、イランの状況は例外的なものなのです。

近年、世界各国、特に西アジアにおける外交状況と地政学的な状況は、イランの地域的、国際的な役割をより大きなものにしており、専門家は日増しにこの状況を認めるようになっています。

ドイツ・ブレーメン大学の東欧研究センターやスイスの安全保障研究センターなど、ヨーロッパのシンクタンクは、これに関して、コーカサス諸国にとってのイランの重要性や、イランとコーカサス諸国の協力の下地を中心とした報告を発表しています。これらのシンクタンクは、確かにトランプ政権が発足したことで、イラン核合意の行方はわからなくなったが、イランの役割はそれでも重要かつ戦略的で、地域における重要なインフラ計画に影響を及ぼしていると語っています。

 

ペルシャ湾・南パールスガス田

 

 

ポーランド・ワルシャワ大学の東欧研究センターの上級研究員をつとめるハーメド・カーゼムザーデ氏は、イランとコーカサス南部のエネルギー協力に関する報告の中で、次のように記しました。

「ソ連崩壊後、ペルシャ湾とカスピ海沿岸の2つのエネルギー生産地を結ぶ橋としてのイランの役割は、大変重要なものになっている。世界の石油・天然ガスの埋蔵量の70%はこの2つの地域に存在し、イランはこの2つの水域を陸上でつないでいる唯一の国だ」

カーゼムザーデ氏は、地域のエネルギー取引、特にヨーロッパが必要とする多くのエネルギーの供給においてイランが重要であることの理由として、石油と天然ガスの大きな埋蔵量、地理上の戦略的な位置にあること、エネルギー輸出国と消費国に近いことを挙げ、次のように述べました。

「アルメニア、アゼルバイジャン、グルジアのコーカサス3カ国と、イラン、ロシア、トルコの地域の大国3カ国、そしてEUによる地域協力のモデルは、これらの国々の協力を保障し、エネルギーは生産国、移送国、消費国の関係を結ぶ」

イランはこのつながりの輪において、カスピ海とペルシャ湾を結ぶ最も簡単な道を他の国々に提供します。カーゼムザーデ氏は、「確実にEU諸国へのエネルギー供給源としてのイランの役割ははずせないものである。ヨーロッパのエネルギーの将来を描く上で、イランを抜きにすることは不可能だ」と語っています。

イランと、オーストリア、イタリア、ブルガリア、ギリシャ、ハンガリーが署名した合意覚書は、ヨーロッパのエネルギー消費国が、カスピ海とコーカサスからヨーロッパに向けてエネルギーを輸送するプロジェクトに強い関心を持っているということを示しています。ドイツ国際安全保障研究所の元研究員ヤナ・ザバノワ氏はこのルートにより、イランは中央アジア南部とヨーロッパの間の物資の運輸における仲介国になると考えています。

ザバノワ氏は、アルメニアとアゼルバイジャンはそれぞれ、陸路を通じてイランとつながることに強い関心を持っており、イランもこの関係により、大きな利益を得ることになると強調しています。アルメニアの提案したルートはイランと黒海、そしてヨーロッパ南部をつなぐことになり、アゼルバイジャンの構想するルートも、イランとヨーロッパ北部をつなぐことになります。

ジョージアのシンクタンク、ジオウェル・リサーチのデイヴィッド・ジジェラワ氏も、「イランは人口8000万人の、世界第18位の経済大国で、大量の石油と天然ガスが埋蔵されている。またジョージアのエネルギー供給源の多様化のための選択肢であり、ジョージアの輸出市場でもある」と述べています。

明らかに、多様な人々、世界の重要なエネルギー源であること、多くの自然の恵み、人々の知的レベルの高さ、政府と人々の深いつながり、人々が選挙や決定の場において高いレベルで参加していること、大変重要な地理的位置は、イランの地位や力の要素となっています。これらの要素は、世界のエネルギー供給など、さまざまな分野におけるイランの役割を際立った、否定できないものにしており、また世界の大国はそれを恐れています。

イスラム革命最高指導者のハーメネイー師の見解では、このような支えや精神により、覇権主義的な大国がその要求を強要することができないよう、役割を果たし、協議し、競争を行うべきだということです。また、これに関して、2国間関係においては、常に関係構築を考慮し、相手側がプラスの行動もマイナスの行動も、それに関する結果が伴うことになると感じるように行動すべきだとしています。

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