7月 23, 2018 17:46 Asia/Tokyo

ヨーロッパとアメリカの関係は、冷戦期と冷戦後の2つの時代、常にさまざまな面で同盟関係にありました。こうした中、2017年1月20日、トランプ大統領の就任により、この関係の本質は、次第に変わらざるを得なくなり、現在、明らかな敵対関係の段階にあります。

トランプ大統領

 

トランプ大統領の政策や行動のアプローチは、世界と敵対するアメリカの異常な政策の時代の始まりとみなされています。

トランプ大統領は、アメリカ・ファーストというスローガンの中で、アメリカの利益や目的を優先事項とするとともに、他の国の見解や利益を考えず、アメリカの独善的な政策と自己中心性が、国力を増し、他の競合国を屈服させる結果につながると考えています。

トランプ大統領は独善的な政策を取ることで、ヨーロッパの同盟国に自分の要求を押し付け、双方の関係を悪化させています。実際、以前、この関係は、現在のように、対立や分離、問題をはらんだものではなかったのです。

現在、双方の関係はアメリカの核合意離脱や、アメリカのヨーロッパに対する貿易戦争とその対抗措置などのさまざまな問題をめぐる対立の影響下におかれています。

また、トランプ大統領は、NATO北大西洋条約機構の軍事費を十分な形で負担していないとして、ヨーロッパを非難しています。

トランプ大統領

 

トランプ大統領は、気候変動に関するパリ協定から離脱したことなどで、ヨーロッパの大国の首脳陣に大いに批判される原因を作り出しました。特に、2018年5月8日のアメリカによる核合意離脱の宣言は、EUと、イギリス、フランス、ドイツの3カ国の要請に完全に反した行動でした。

現在、ヨーロッパはアメリカに抵抗することでいくつかの問題を抱えており、この抵抗は、イランとの銀行、経済、貿易関係を維持する中での核合意の支持をヨーロッパ側が意志表示したことで、顕在化しました。政治問題の専門家ヘルマン・ティルケ氏は次のように語っています。

「ヨーロッパは制裁行使においてアメリカに脅迫されているにもかかわらず、イランを支持している。彼らはこう考えている。トランプの味方をするよりもイランのような国とよい関係を維持した方がよい、と」

アメリカの利益のみを最優先するトランプ大統領のアプローチにより、アメリカは国際社会全体に対する、さらには、ヨーロッパの同盟国にも反する立場をとることとなりました。これに関して、欧州委員会のユンケル委員長は次のように述べています。

「トランプ大統領によるアメリカ・ファーストの理想は、アメリカの孤立化につながっている」

欧州委員会のユンケル委員長

 

トランプ大統領は政治的な目的追求の中で、ブラフなどの異常な方法に頼っています。トランプ大統領による対立は、ヨーロッパの同盟国に限られず、重い関税の追加といった保護貿易主義的傾向に関するその大きな要求により、貿易の分野でトランプ大統領に反対する世界的な結束が生み出されています。

一方で、ベルギー・ブリュッセルでのNATO首脳会合に参加するために行われたトランプ大統領による最近のヨーロッパ訪問は、彼にとって明らかな失敗のひとつだったといえるでしょう。

つまり、NATO首脳会議で、トランプ大統領の立場や要求はヨーロッパ諸国の首脳陣の反対に直面しただけでなく、イギリスでもかつてないほどの人々や組織の反対にあいました。

トランプ大統領は、NATO首脳会合でも、双方のメディア戦争でも、ヨーロッパの否定的な反応に直面したあと、ヨーロッパに対して強硬な立場をとることが予想されていました。

ヨーロッパとアメリカの最も重要な対立のひとつは、安全保障問題をめぐるものです。トランプ大統領は、2016年の大統領選挙の際、NATOを時代遅れの組織だと呼び、大統領就任時代から、この機構に対する強い圧力を行使してきました。トランプ大統領はこれについて、次のように語りました。

「我々はもはやこれ以上ヨーロッパに防衛費を提供することはできない。NATO加盟国は現在の不公正な状況を終わらせ、自国の防衛費を支払うべきだ」

トランプ大統領のこの要求は、ヨーロッパから肯定的な反応を受けることはありませんでした。以前NATOのストルテンベルク事務総長は、NATO加盟国はトランプ大統領の提案により、自国の軍事費を増額することに合意しているが、増額とその支払期限に関するトランプ大統領の要求は、ドイツなどのヨーロッパ諸国の政府にとって受け入れられるものではないと主張していました。ヨーロッパの首脳陣はトランプ大統領の独善的な行動に強く怒っており、この状況は現在も続いています。

欧州理事会のトゥスク議長は、EUとNATOの協定締結式で、次のように語りました。

「長きに渡って毎日ヨーロッパを批判してきたトランプ大統領に対して、メッセージを伝えたい。アメリカはヨーロッパ諸国よりも良い同盟国は持っておらず、これからもそれよりも良い同盟国は出ないだろう。ヨーロッパの防衛費は、ロシアや中国よりも大きい。アメリカは自身の同盟国の価値を知るべきだ」

トランプ大統領

これに対して、トランプ大統領はトゥスク議長の発言を否定し、アメリカは多くの同盟国を有しているとしました。この前代未聞の言葉の応酬は、アメリカとEUの緊張が高まっていることを示しています。トゥスク議長は声明の中で、トランプ政権下のアメリカは、彼の行動と立場により、日々世界で孤立し、同盟国も残らないだろうとしました。

トランプ大統領は、最近の立場表明の中で、EUを敵だとしただけでなく、ロシアと中国もアメリカの敵だとしました。トランプ大統領は、次のように語っています。

「貿易における一連の行動から、EUは敵であり、ロシアもある面では敵であり、中国も経済的に敵だ」

確かにアメリカとEUの関係は、この数ヶ月、非常に緊張が高まっています。しかし、これはトランプ大統領のヨーロッパに対する最も明白な立場です。このため、トランプ大統領は、70年間の同盟関係のあと、ヨーロッパを敵対国のひとつに入れたのです。

トランプ大統領は、イギリスのメイ首相との会談で、離脱政策を取るよう求め、EUに対しては話し合いではなく、異議申し立てを行うよう求めました。一方で、繰り返しトランプ大統領をはっきりと批判したトゥスク議長は、トランプ大統領を非現実的な主張を行うとして非難しました。彼はツイッターで、次のように述べました。

「アメリカとEUは最も良い友好関係にある。敵だと語る人物は、嘘を広めている」

トゥスク議長は2週間前にも、アメリカの同盟国はそれほど多くないと語り、アメリカ政府に対して、同盟国の価値を知るべきだ、アメリカはEUよりも良い同盟者を持つことはないからだと忠告しました。

 

EUのモゲリーニ外務安全保障政策上級代表

 

EUのモゲリーニ外務安全保障政策上級代表は、EUをアメリカの敵だとしたトランプ大統領の発言に反応し、ヨーロッパはアメリカを友好国だとしており、この状況は政権が変わっても、変わることはないとしました。

ヨーロッパとアメリカは第二次世界大戦後、同盟国として行動しようとしてきましたが、トランプ大統領の就任後、政治的なバランスが崩れ、トランプ大統領の立場は、ヨーロッパのアメリカ同盟国にとっての大きな懸念を生み出しています。

多くのヨーロッパ諸国の政府関係者は、トランプ大統領の政策は、敵も味方も存在せず、国際体制上の規約が脇に追いやられる、ある種のモデルを示していると考えています。

重要なのは、トランプ大統領のヨーロッパに対する立場が、彼の個人的な立場なのか、あるいは、トランプ大統領はアメリカの外交関係の根本を見直そうとする、特定の思想の代表者なのか、という問題です。

ドイツのガブリエル元外相は、アメリカがその国際的な立場から退いたのは、大統領個人による行動ではなく、今後の選挙後においても変わることのない根本的な変化だと見ています。

言い換えれば、ヨーロッパの関係者は、今後、最大限保護主義的な役割を捨て、アメリカとは異なる形で行動し、外交政策を通商化したといえるトランプ大統領のアプローチの中で、特定の立場を取らなければならないと考えています。

また、現在、アメリカは、ヨーロッパの同盟国がアメリカの政策や要求に従い、同盟国のための行動に伴う費用を彼ら自身が支払うよう求めています。トランプ大統領は、ヨーロッパが安全保障において根本的な役割を担い、これに関するアメリカの参加費用をヨーロッパが支払うよう求めているのです。

アメリカとEUの関係

 

トランプ大統領と、その思想を同じくする人々は、既得権益層が支配する体制の中で、ヨーロッパは第二次世界大戦後、すべての事柄に関してアメリカに借りがあり、現在、それをアメリカに支払うべきだと考えています。トランプ大統領は、ヨーロッパ諸国が安全保障や経済、貿易などに関して、アメリカとの関係を完全に利用し、一方でこの関係は単にアメリカの負担を生み出すだけで、アメリカとって損失であり、この状況を本質的に変えるべきだと考えています。

このため、アメリカとヨーロッパの関係は離間する方向に向かい、双方の対立は時間の経過とともに深いものになっていくことが予想できます。一方で、トランプ大統領の立場は、ヨーロッパ諸国の政府高官やEUの関係者からすれば、非論理的で軽率な立場であり、最終的に西側ブロックの損失となり、これへの対策を取る必要があるのです。

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