4月 07, 2016 18:42 Asia/Tokyo
  • ファラジョッラー・サラフシュール監督
    ファラジョッラー・サラフシュール監督

最近、イランの映画制作者で、俳優や肖像画家、作家としても活躍したファラジョッラー・サラフシュール監督がこの世を去りました。

今回は、この偉大な芸術家の作品と業績を振り返ってみることにいたしましょう。

 

サラフシュール監督の略歴と、最高指導者のメッセージ

 

ファラジョッラー・サラフシュール監督は1953年、テヘラン西方の歴史ある町ガズヴィーンに生まれました。彼は、1979年のイラン・イスラム革命の勝利後、映画への出演により自らの芸術活動を開始しています。その後はテレビ局に入り、歴史的、宗教的な内容の連続テレビドラマの演出を担当しました。「預言者アイユーブ」、「アンジェロスの男たち」、そして、「預言者ユーソフ」といった連続ドラマは、長年にわたりイラン国内外の様々なテレビで放映されています。

 

サラフシュール監督は病気のため、去る2月27日にテヘランにて63歳でこの世を去りました。イラン・イスラム革命最高指導者のハーメネイー師は、メッセージの中でこの偉大な芸術家の逝去に対する弔辞を述べました。このメッセージには、さらに次のように述べられています。

 

「後世にまで残り、高名で信仰心に溢れたこの芸術家の作品は、国境を越えて世界各国で放送され、他国の国民の見守る中でイラン映画の面目や権威となった」

 

 

 

サラフシュール監督の名作「預言者ユーソフ」について

 

イランの連続テレビドラマで最も成功を収めた作品の1つは、「預言者ユーソフ」であり、サラフシュール監督の演出により、預言者ユーソフの生涯を題材として制作されました。この作品は、2009年にイランの第1チャンネルで放送され、その後はイランの国際放送チャンネルや外国のテレビでも放送されています。なお、この連続ドラマを元にした映画も制作され、これは国内外の一部の映画祭で上映されました。連続ドラマ「預言者ユーソフ」には、主だった俳優45名のほか、脇役を務めた150名のキャストが起用されています。

 

連続ドラマ「預言者ユーソフ」については、その全ての回がユーチューブなどを初めとする様々なチャンネルで放送されていると言うべきでしょう。また、この作品をアラビア語のタイトルで検索すると、それぞれの回に対する視聴回数が30万回から150万回にも及んでいることが分かります。もっとも、発表されている統計は、アラビア語への吹き替え版のみに関するものであり、その他の言語への吹き替え版も検索すれば、この数字はさらに増えるものと思われます。

 

 

 

連続ドラマ「預言者アイユーブ」について

 

サラフシュール監督が演出を担当したもう1つの連続テレビドラマには、預言者アイユーブの生涯を描いた「預言者アイユーブ」があります。預言者アイユーブは、イスラムの聖典コーランにも繰り返し出てくる人物であり、この人物の忍耐強さは特に賞賛されています。コーランの伝承をもとに制作されたこの作品ではまず、神の御前での預言者アイユーブの位置づけに対して、悪魔が妬みと怒りにかられます。アイユーブにそれほど強い信仰心があるとは悪魔には信じられないことから、神が預言者アイユーブに試練を与えようと決めます。神は、アイユーブに数多くの試練を与えますが、アイユーブは神への信仰心を捨てず、最終的に自分が失っていた恩恵を再び取り戻すのです。

 

 

 

テレビドラマ・「アンジェロスの男たち」について

 

サラフシュール監督によるもう1つのテレビドラマには、「アンジェロスの男たち」があります。このドラマのストーリーは、次のように始まります。

 

救世主イエス・キリストの生誕の直後、即ちキリスト教が広まる前の、ローマ皇帝ダキアヌスの時代に、神を崇拝する数人の者たちが暮らしていました。彼らは、そのうち1人を除いて、全員が王侯貴族であり、自らの信仰心を隠していたのです。彼らは、神への信仰心を有していることをローマ皇帝に気づかれてしまい、投獄されました。夜になって、彼らは脱獄し、町の外にある山にたどり着きました。そして、その近辺にいた羊飼いに、自分たちがこのような宗教やそれに関する習慣を持っていることを打ち明け、匿ってくれるよう頼んだのです。この羊飼いは、彼らの宗教を受け入れ、彼らとともに山の中のある洞窟に隠れました。そして、深い眠りに陥り、それから309年後に目を覚ましました。

 

この驚くべき出来事の後に起こった出来事が、連続ドラマ「アンジェロスの男たち」の中心となっており、放送された時期には、多くの視聴者をひきつけました。

 

 

 

サラフシュール監督に対する国外の評価

 

最近、サラフシュール監督の逝去を受け、アラビア語圏のメディアが彼の生涯の一部について紹介するとともに、コーランに関する宗教的な彼の作品を取り上げました。サラフシュール監督が死去したというニュースは、これらのメディアでお悔やみとともに報じられています。また、アラビア語圏のメディアはサラフシュール監督が連続ドラマ「預言者ムーサー」の制作に取り組んでいたことに触れ、預言者ユーソフの役を演じた俳優モスタファー・ザマーニーといった、イラン人映画関係者の一部の沈痛な面持ちを報じていました。

 

サラフシュール監督の熱烈なファンの1人だったエジプト人、セイエド・アミーン氏は、サラフシュール監督の冥福を祈るとし、この偉大な芸術家がアラブ諸国全域におけるイラン大使であったとのコメントを残しています。また、サラフシュール監督の友人の1人、アーデル・アブド・エルアール氏は、次のように述べています。

 

「私は、セラフシュール監督の自宅で、彼に面会した。私は、心から彼の冥福を祈るばかりである。私たちは、映画において預言者の役を演じることについて、セラフシュール監督と話し合った。それは、エジプトのアズハル大学が預言者たちの役を演じることは宗教法で禁じられているという教令を出したにもかかわらず、この連続ドラマはエジプトの人々による高い視聴率を記録した、といった内容だった。サラフシュール監督は、微笑を浮かべて次のように語った。『我々は、21世紀の時代に生きているのだ。現在の世代に対し、滑らかで簡潔な形式で預言者たちの物語を語る必要がある。俳優の姿を目にすることは、音声だけを聞くよりも、はるかに視聴者の注目をひきつけるものだ』」

 

チュニジア出身のザフラー・アフマド氏も、サラフシュール監督へのお悔やみを述べ、冥福を祈るとともに、次のように語っています。

 

「サラフシュール監督によるこれらのドラマは、ありきたりの宗教的な連続ドラマのパターンから私たちを脱却させた。役者が今後映画においてイスラムの倫理に反する役割を演じない限り、預言者たちの表情をドラマの中で提示しても、悪いことは起こらないだろう、ということに私たちは気づかされた」

 

 

 

連続ドラマ「預言者ユーソフ」に対するサラフシュール監督自身の評価

 

サラフシュール監督の連続テレビドラマ「預言者ユーソフ」は、イラン国内で大成功を収め、他に類を見ないほど歓迎された後、今度は世界で人気のあるイランの文化大使となっています。イラン国内での統計と同様に、外国人視聴者の92%が、この作品に満足しています。さらに最近、タイのイスラム協会の会長からも贈り物が届けられ、この連続ドラマが賞賛されました。そのメッセージでは、イスラム教徒に加えて、その他の宗教の信者、さらには仏教徒までもがこのテレビドラマに注目したと述べられています。サラフシュール監督は、イスラム教徒以外の人々の間における、預言者ユーソフの連続ドラマの歓迎ぶりについて、次のように語っています。

 

「連続ドラマ『預言者ユーソフ』は、人間の本質と結びついている。それは、神が人間に授けた、公明正大な物事を識別する本能的な力であり、この力により、人間はイスラム教徒であるか否かに関係なく、善良なものを受け入れることになる。預言者ユーソフは虚偽ではなく、真実である。真実は、人間の本質に適合する。人間は、虚偽や妄想を嫌うのと同様に、真実を受け入れる。残念ながら、現代の世界における映画の多くは、ノンフィクションに基づいて制作されている一部の作品以外は虚偽である。さらに、ドラマ『預言者ユーソフ』は、美しいストーリー内容である。人々は美しいストーリーを好むものである。もう1つの点は、この物語が教訓的なものだということだ。普通、教訓が含まれているドラマは歓迎されることが多く、この特徴はコーランにおいて強調されている。また、このドラマのもう1つの特徴は、奥深い内容を含んでいることである。神への礼拝、愛情、自己献身、寛大さ、信仰心などがこの作品には見られる。さらに、装飾や配役、撮影、背景音楽といった全ての要素が相乗効果をもたらしていることから、この作品はこれほどまでに歓迎されているのである」

 

サラフシュール監督の業績の概評

 

サラフシュール監督は、コーランの内容とともに映画の世界に入った数少ない映画監督の1人でした。このため、彼はコーランを7つ目の芸術とすることに成功したと言えます。サラフシュール監督はこの点で、演劇、映画、テレビ番組において極めて優秀な作品を生み出し、イランの芸術の歴史において永遠に語り継がれることとなったのです。

 

サラフシュール監督が目指した方針について考慮すべき点は、多くの映画関係者がコーランに即した内容の映画やテレビ番組の制作は不可能と考えていたにもかかわらず、この映画監督の努力によりそれが実現したということです。このことは、彼の最後の作品であるドラマ「預言者ユーソフ」に明白に見て取れます。それは、この作品がイランのみならず、大半のイスラム諸国で視聴者に大々的に歓迎されているからです。

 

さらに、サラフシュール監督が、連続ドラマ「預言者ムーサー」の脚本の大部分を書き上げ、その撮影を行おうとしていたものの、彼の死去によりこれが出来なくなったことを付け加えておきたいと思います。この作品は、預言者ムーサーの生涯や本当の教えをドラマ化することで、シオニストの虚言や策略の多くを暴くことが出来たであろうと考えられています。