11月 30, 2019 13:32 Asia/Tokyo
  • ソフラヴァルディー
    ソフラヴァルディー

今回も、前回の続きとしてイランの照明哲学者ソフラヴァルディーの業績や作品についてご紹介することにいたしましょう。

前回までにお話しましたように、シェイフ・シャハーボッディーン・ソフラヴァルディーはイランの名高い神秘主義者で、イスラム哲学の伝統における照明哲学の創始者であり、西暦1150年から1155年ごろ、テヘラン西部にある現在のザンジャーン州近郊の村で生誕しました。彼は、1191年ごろ、38歳でシリア北部アレッポのイスラム学者の陰謀により、アイユーブ朝サラジンの命をもって殺害されています。しかし、彼は短くもその充実した生涯において数多くの作品を残しました。彼の最も重要な作品には、『照明哲学』、『暗示』、『光の書』、『愛の真理』などがあります。これらの作品の一部はペルシャ語で執筆されており、またアラビア語による作品もあります。

さらに、ソフラヴァルディーの作品には論文や比ゆ的な例え話も含まれており、こうした作品の多くは教育的な内容で、彼の信条面での認識や哲学的、神秘主義的な趣向といった点で重要で価値あるものとされています。これらの作品は、ソフラヴァルディーの飾り気のない素顔を見せてくれるものであり、彼らはこれらの作品において哲学的、神秘主義的な内容を教示するために比ゆ的な方法をとっています。

ソフラヴァルディーの論文やそのほかの著作全体について完全に理解するには、彼の比ゆ的な説話について研究する必要があります。この部類の作品には、神秘主義的な内容の短い論文があり、精神的で特別な経験が非常に暗示的な言葉で述べられています。いずれの論文においても、精神的な生の段階や精神的な経験が明らかにされています。

ソフラヴァルディーは、こうした作品において、流麗な言葉や暗示的な表現を利用し、創造世界の心を掻き立てる光景や精神的な修行について述べており、失われてしまった人間の崇高な目的を示しています。

ソフラヴァルディーは時折、反イスラム的な傾向があり、イスラムに対抗してゾロアスター教を復活させようとしていたと評されたこともありました。しかし、こうした考えは完全な誤りといえます。ソフラヴァルディーは、古代のイランや当時の作品に造詣が深く、照明哲学的であったために、自らの見解を説明するためにゾロアスター教的な暗示や例えをふんだんに用いていましたが、このことは決して、彼の信条がイスラムに反していたことを意味するものではありません。

暗示、または神秘を意味するアラビア語の「ラムズ」という言葉は、ペルシャ語でも様々な意味で使用されます。これは即ち、何かを暗に指し示すことを意味します。それはたとえば、何か特定のものを指し示すために、ほかの人には知られないよう、ある特定の2人あるいは数人の人物の間で暗示的に何かを表現することを言います。現代の優れた研究者で、大学教授でもあるプール・ナームダーリヤーン博士は、『暗示と神秘的な物語』という著作において、ソフラヴァルディーをはじめとするそのほかのイランの思想家の神秘主義的な作品を検討し、次のように述べています。

「暗示とは、あらゆるほのめかしやしるし、さらには表面的に示されているものの間に、別の意味概念を持つ言葉や表現を指す」

では、ソフラヴァルディーはなぜ、自らの思想を人々に伝えるうえで暗示という方法を使用したのでしょうか?これについては、4つの理由を挙げることができます。まず、暗示という方法を時折用いることは、言葉を美しく装飾することを目的としています。この目的は、ソフラヴァルディーの比ゆ的、神秘的な作品の多くに見られます。次に、暗示を活用することで、作品の成熟度や完成度が高まることが挙げられます。ソフラヴァルディーは、語彙が持つ偉大な精神力に気づいており、先人たちの信条や伝統的、伝説的で曖昧な意味概念の助けを借りて、それによって言葉が持つ欠点や不足を解消していたのです。時には、神秘主義を学ぶ弟子たちを興奮させ、信者たちにとっての魅力をさらに増すために暗示が使われていました。そして、最後に無能な人々に対し、秘密を隠すことが挙げられます。

ソフラヴァルディーが果たした役割は、文学や文学関連のテーマ、散文、文語的な表現などの点ではそれほど目立たず、注目されていません。文学的な意味で直接的、間接的にソフラヴァルディーの影響を受けたと思われる詩人や作家は非常に少ないとされています。しかし、物事の捉え方や解釈方法、過去や自分の生きている時代の問題への取り組み方という点からソフラヴァルディーの哲学や神秘主義の影響を受けた偉人は、数多く存在しています。

ソフラヴァルディーによるこうした影響は、2つに分類されます。1つは、照明哲学の体系全体やその方法を受け入れ、神秘主義的な課題に取り組む上でソフラヴァルディーの物事の捉え方や対処法を活用し、これを神秘主義的な命題を提示するための適切な手段として活用した人々です。イランの詩人アッタールは、その著作『鳥の言葉』において、またモウラヴィーは『精神的マスナヴィー』において、ソフラヴァルディーの神秘主義的な方法をふんだんに活用しています。

一部の神秘主義者や文学者、詩人は、ソフラヴァルディーが生み出したこの上なく美しい神秘主義的な解釈や思想の一部を抜粋しており、これらの人々の間で神秘主義哲学はソフラヴァルディーに負うところが大きいとされています。神秘主義詩人の中でも、こうした美しい神秘主義思想に負うところが大きいのはハーフェズです。存在物に対する愛の具現などは全てソフラヴァルディー的な捉え方に端を発しています。

モウラヴィーは、たとえ話を用いる上で、ソフラヴァルディーの影響を受けましたが、ソフラヴァルディーのたとえ話の方式は、モウラヴィーとは異なっています。モウラヴィーは、たとえ話を完全に普通の形で語り、それらの全てを、哲学的、神秘主義的な目的の理解や説明のための手段であるとしています。しかし、ソフラヴァルディーの方法はモウラヴィーとは正反対であり、彼のたとえ話の一部、あるいは全ての文がある概念を暗示しているのです。おそらく、モウラヴィーのとった方法は比ゆ的な方法であり、ソフラヴァルディーのとった方法は神秘主義的な方法だといえるかも知れません。ソフラヴァルディーは、一般的な比ゆとしての直喩とともに、暗喩も活用しているのです。

 

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