6月 08, 2020 13:02 Asia/Tokyo
  • タギーオッディーン・オウハディー・バルヤーニーの作品
    タギーオッディーン・オウハディー・バルヤーニーの作品

今回は、前回の続きとして、16世紀から17世紀にかけてのイランの著述家、オウハディー・バルヤーニーについて説明しましょう。

今回は、オウハディーの著作2つについて紹介します。

前回、お話したように、タギーオッディーン・オウハディー・バルヤーニーは、モイーノッディーン・ムハンマド・バルヤーニーの息子として、1556年ごろイラン中部イスファハーンで生まれました。バルヤーニーの一族は神秘主義において有名な家系でした。彼は、当時の慣習にならい、アラビア語の文法や論理学、数学、コーランを12歳まで学び、その後、哲学や倫理学を学びました。

オウハディーは少年時代の一時期に、イラン中部のヤズドと南部のシーラーズでも学問の大家から学んでおり、この時期に、神秘主義的な傾向を見せるようになりました。シーラーズとイスファハーンでは、詩の会に入り、すべての参加者を驚かせていました。また、彼はアッバース1世の戦勝記念の祝祭で四行詩を読み、「王に気に入られたもの」と呼ばれました。

オウハディーは1606年、友人らのペルシャ語を話す一団と共にインドにわたり、シーラーズ、ケルマーン、現在のアフガニスタンのカンダハール、パキスタンのラホールを訪れました。彼がいつどこでなくなったかは分かっていませんが、1630年ごろに記した詩が存在するため、そのころまでは存命だったようです。オウハディーは多くの著作を残しています。

オウハディーの著作の中で、最も重要なのは覚書です。この覚書は、これまでイランで2回にわたり、別々の校正で出版されており、手稿はイランのマレク国立図書館に収蔵されています。この8巻に上る著作はペルシャ語の覚書の中で最も重要なものであり、1613年から2年間にわたって執筆されました。

この覚書は、ペルシャ語文学の初期の時代からの3400人のペルシャ語詩人の列伝であり、また選ばれた詩が記されています。この本で、オウハディーは特定の分類を用いています。

オウハディーは、8巻の大作を記す前に、『空想の楽園』という著作を記しましたが。これは詩人たちによる詩の選集のみが記されており、詩人の生涯については書かれていません。1613年、オウハディーがインド北部のアグラに滞在していた際、そこの要人が、彼に『空想の楽園』を完成させ、詩人の生涯についても付け加えるよう求めました。このため、オウハディーは新たな本の執筆を始め、こうして、この8巻の大作の執筆が始まりました。

当時、著作を要人に贈呈し、その名を本の中に記すことは、普通のことでした。しかし、オウハディーは本を誰かに贈ることはありませんでした。オウハディーはこの著作の序文で、これに関して、自身の目的は、詩人たちの名を永遠のものにすることであるため、本を贈呈することはないと話しています。

この大作の執筆は2年がかかりましたが、実質的にこの本の基本構成は1615年に完成したものの、オウハディーは生涯、常に内容を追加し、詩人に関する新たな情報を手に入れれば、それを挿入していました。16世紀の詩人ミール・アリー・ガズヴィーニーに関する項目は、1616年に記載されていますが、1633年ごろに記載された内容も見られます。この本において、オウハディーは、内容を記した日付と場所を記載しており、場所はほとんどがインドにある町です。

この覚書は、9世紀のペルシャ語詩人ルーダキーから始まっており、ルーダキーはおそらくペルシャ語による最初の優れた詩人だとしており、彼のことについて詳しく記しています。現代の文学研究者ナガヴィー博士は、この覚書に登場する詩人の数を3190人としており、また、ほかの研究者は、およそ3300人だとしています。しかし、出版された8巻本を注意深く見ると、少なくとも3500人のペルシャ語詩人が本の中で登場するといえます。

オウハディーは8巻本の覚書の重要な資料として、ナヴァーイーやジャーミーによる、先人の作品を使用していますが、同時代の詩人については、個人的な情報により記しています。

また、同時代の詩人の多くと会い、適切な詩を選んでいます。オウハディーがこの本の中で繰り返し伝えている事柄によれば、彼は常に詩人を批評する会に参加していました。たとえば、同時代の文学者エヤーニーは、いくつかの彼の散文や詩が自分のもとに残っているとしています。

この覚書の記述スタイルは、一貫したものではなく、この作品の各部分のスタイルは異なっています。オウハディーの文体は華麗で、特に詩人の描写においては韻を踏んだ散文体となっています。

オウハディーは自身を文学者とみなしていたため、表現様式について、完全な知識を得ていました。オウハディーの散文による傑作は、批評におけるセンスを活用し、学者的な見解表明を控えることなく、文学に精通した評論家のように、詩についての意見を開示していました。

 

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