世界の情勢
(last modified Mon, 18 Dec 2017 14:04:00 GMT )
12月 18, 2017 23:04 Asia/Tokyo

この時間は、アメリカのトランプ大統領が、聖地ベイトルモガッダス・エルサレムをシオニスト政権イスラエルの首都に認定した問題について見ていくことにいたしましょう。

パレスチナにユダヤ人の国家的居住地を建設するとしたバルフォア宣言から100年を迎え、アメリカのトランプ大統領は、イスラム教徒の最初の礼拝の方向キブラであったベイトルモガッダス・エルサレムを、シオニスト政権イスラエルの首都に認定しました。

シオニストは、パレスチナ領土を占領した当初から、ベイトルモガッダスを首都にしようと努めてきました。しかし、この町はイスラム教徒の聖地であり、イスラム教徒の最初のキブラであったアクサーモスクがあるため、シオニストは、この問題に関して、西側の同盟国をはじめとする国際的な支持を得ることができませんでした。ベイトルモガッダスは、国連の決議によれば、占領された地域と見なされています。国連安保理は、2016年12月に次のような決議を採択しました。

 

「ベイトルモガッダスに関してなど、1967年6月4日以前の国境における変更は正式に認められない。ただし、関係各国が協議の中で合意に至った場合は例外とする」

 

パレスチナは、中東のイスラム教徒のアイデンティティを形成する要素のひとつであり、ベイトルモガッダスは、このアイデンティティの中心です。そのため、ベイトルモガッダスの問題は、政治的、宗教的な側面を持つとともに、イスラム教徒のアイデンティティや威信の問題になっています。このことから、ベイトルモガッダスの問題は、領土の占領を超えた問題となっています。

 

アメリカ議会は、1995年、シオニストロビーの影響により、ベイトルモガッダスをシオニスト政権イスラエルの首都とすることに関する法案を可決しました。

 

こうした中、アメリカの歴代大統領は、共和党であろうと民主党であろうと、過去20年の間、この法の施行を停止してきました。実際、イスラエルが数十年の間、望んできた事柄が、トランプ大統領によって一瞬のうちに実現されたのです。

 

ベイトルモガッダスの運命は、和平協議の中で大きな焦点とされてきましたが、アメリカが仲介役を務め、シオニスト政権とパレスチナの妥協的なグループの間で行われた和平協議の中ではその問題は議題にされませんでした。実際、ベイトルモガッダスの運命に関する話し合いのない和平協議は、行き詰まりに陥っています。

 

トランプ大統領の行動に対する反発は、シオニストとアメリカが世界で孤立していることを示しました。シオニスト政権の政治家を除き、いかなる国も、ベイトルモガッダスをシオニスト政権の首都に認定することを支持しませんでした。

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アメリカとシオニスト政権に最も近いヨーロッパの同盟国でさえ、このトランプ大統領の行動に反発を示し、それを、和平協議を完全に決裂させるものと見なしました。とはいえ、和平協議はすでに決裂しており、トランプ大統領の行動は、その棺にくぎを打つものとなりました。

 

イスラムとパレスチナの都市であるベイトルモガッダスを、シオニスト政権の首都に認定するというアメリカの決定は、アメリカの同盟国にとっても懸念すべき問題です。サウジアラビアは、このアメリカの決定を支持しませんでした。サウジアラビアの関係者は、これについて次のように語っています。

 

「この行動は非常に深刻な影響を招き、すべてのイスラム教徒の感情を逆なでするだろう。この行動は、アメリカが、パレスチナ問題の公正な解決策を見い出す上で大きなダメージとなる。聖地ベイトルモガッダスの問題における決定は、イスラエルとパレスチナの和平協議の最終段階までとどめおかれるべきだった」

 

トランプ大統領の最近の行動は、アメリカイスラエルとパレスチナの危機の解決における公正な仲介者を務め、和平プロセスを継続するふりをすることすらも不可能にしています。

 

明らかに、イスラム世界は、今回のアメリカの行動を、ベイトルモガッダスやアクサーモスクなどのイスラムの聖地に対する大きな脅威と見なしています。これらの聖地の重要性により、世界の人口の22%を占める、15億人のイスラム教徒は不安を抱き、感情を逆なでされています。

聖地ベイトルモガッダス

 

和平協議の中で、イスラエルに妥協的な態度を見せてきたパレスチナ解放機構も、アメリカがベイトルモガッダスをシオニスト政権の首都に認定したことは、和平プロセスの死を意味することになりうると警告しました。

 

レバノンのシーア派組織ヒズボッラーのナスロッラー事務局長は、アメリカがベイトルモガッダスをシオニスト政権の首都に認定したことに反発し、次のような演説を行いました。

 

「アメリカには、イスラエル以上に貴重な同盟国は存在しない。アラブ人とイスラム教徒のアメリカの同盟者の価値は、トランプ大統領にとってはどのようなものなのだろうか?実際、まったく価値がない。アメリカは、イスラエルとこの政権の利益以外のことに価値を置いていない」

 

過去をさかのぼると、シオニスト政権がアメリカの支援を受け、ベイトルモガッダスを完全に支配するために、数々の行動をとってきたことが分かります。それは、パレスチナ住民の追放、財産の強奪、ベイトルモガッダスの人口構造を変えるためのシオニスト入植地の建設、イスラムの聖地や宗教施設の破壊、過激なシオニスト入植者がアクサーモスクに入るための下地を整えることで、この聖地の神聖を冒涜することなどです。

 

現在も、アメリカによって新たな陰謀が企てられており、その悪影響が見られています。この流れは、2つの主な目的を示しています。

 

一つ目の目的は、地域の分割計画が失敗した後、中東の関係を変えることです。しかし、ISISが敗北し、サウジアラビアのイエメン攻撃の政策が行き詰まりに陥ったことで、それは失敗に終わりました。

 

二つ目の目的は、レバノンとパレスチナの抵抗勢力を、イスラエルとの対決から排除し、パレスチナ問題に関して、イスラエルを安心させることです。

 

実際、トランプ大統領の行動は、地域情勢、シリアやイラクの計画の失敗に注目すると、抵抗勢力を消滅させるためのものでした。彼らは、テロ組織ISISを支援することで、イラクとシリアを分割し、シオニスト政権の立場を安定させようとしていました。

 

アメリカは、中東の支配を続けるためには、中東の新たな地図においてイスラエルの存在を安定させる必要があることを知っています。そしてそのためには、いかなる行動も惜しみません。

ジョン・ミアシャイマー教授

 

アメリカ・シカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授は、テヘラン大学で行った講演の中で、アメリカの現政権とこの国の最近の行動について次のように語りました。

 

「エルサレムをイスラエルの首都に認定するというアメリカのトランプ大統領の決定は、アメリカ国内の過激派の影響を受けたもので、根本的な過ちだった。この決定と、アメリカ大使館のテルアビブからエルサレムへの移転の発表は、アメリカの外交政策における重大な過ちを示すものだった。そのため、アメリカ政府は、信頼できる協力相手ではない」

現在、シリアとイラクのISISの問題は終結しました。そのため、ゲームのフィールドを変更し、抵抗勢力に対抗するための、テロ組織の支持者の努力も、失敗に終わりました。

 

このような状況の中で、トランプ大統領は、ベイトルモガッダスをシオニスト政権の首都に認定しました。イギリスの新聞、インディペンデントは、記事の中で次のように報じました。

 

「エルサレムをイスラエルの首都とし、アメリカ大使館をエルサレムに移転するとしたトランプ大統領の決定は、世界に対するアメリカの影響力を弱める上で根本的な役割を果たすだろう。これまで、トランプ大統領の行動は、イスラム諸国だけでなく、世界の多くの国に非難されている」

 

イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師は、最近、次のように語りました。

 

「ベイトルモガッダスをシオニスト政権の首都に認定するという主張は、彼らの無力からくるものだ。彼らに能力がないことからくる。このような行動により、間違いなく、彼らはより大きなダメージをこうむることになる。イスラム世界は、彼らに対抗するだろう。敵がパレスチナ問題において、彼らの望む成功を手にすることは絶対にない。パレスチナは解放されるだろう。間違いなく、パレスチナは解放される。少し遅れるかもしれないし、それが早まるかもしれないが、それは必ず起こる。イスラム共同体のパレスチナ解放に向けた闘争は、必ず、実を結ぶだろう」

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