ガディールホムの祝祭
7日金曜はイスラム暦ゼルハッジャ月18日に当たり、シーア派イスラム教徒の大祭の1つ「ガディールホム」の祝祭日です。
「ガディールホム」はシーア派初代イマームアリーがイスラムの預言者ムハンマドの後継者に任命されたことを記念する祝祭です。
ガディールの祝祭の日、至高なる神の指示により、イスラムの教えの貴重な遺産が、アリーという名の偉大な人物に引き継がれることになりました。イスラムの預言者ムハンマドは、アリーを自身の後継者に任命しました。ガディールは、後に初代イマームとなったアリーの美徳の賜物でした。彼は、神に完全に服従し、優れた理性と知識を備え、敬虔で宗教を守り、強い意思を持った人物でした。
さまざまな道徳や価値観が衰退し、真理が消えようとしたとき、神の預言者ムハンマドは、愛に溢れた精神で、多神教信仰、無知、圧制、堕落と戦い、イスラムを広めました。そして、神を源にした貴重な教えを信者たちに伝えました。預言者ムハンマドは、人々に幸福と成長を呼びかけ、その心に、唯一神の信仰、敬虔さ、平等、同胞愛を浸透させました。
預言者ムハンマドは、無知の闇を取り払い、精神性と人間性の光を人々の心にもたらしました。成長を促す伝統や決まりを教え、聖典コーランを人間の人生の指導書としました。預言者はこの大きな遺産を、人間の物質的、精神的な幸福を保障するものだとし、イスラムに頼れば、現世と来世で救われると説きました。しかし、預言者の後、その困難な道を誰が引き継ぎ、導きのともし火を誰の手に委ねればよかったのでしょうか?
預言者ムハンマドは、自分の死が近いことを悟り、常に、最も適した後継者を選ぶことを考えていました。そのとき、神から道が開かれました。10万人を超えるイスラム教徒が同行した、預言者の最後のハッジ・メッカ巡礼で、至高なる神は預言者に、コーラン第5章アルマーイダ章食卓、第67節を下しました。
「預言者よ、主から汝に下されたものを伝えなさい。それをしなければ、汝は神の責務を怠ったことになる」
最後のメッカ巡礼から戻る途中、メッカとメディナの間にガディールホムという場所があります。この池のほとりで、イスラムの預言者ムハンマドは、一行に立ち止まるよう指示しました。教友たちは、強い意志の感じられる預言者の表情から、何か重要なことが起ころうとしていることを悟りました。
太陽の強い日差しが、アラビア半島のヒジャーズの地に照り付けていました。預言者ムハンマドは、列の前を行く人々に、戻って残りの人々が来るまで待つように指示しました。昼の礼拝が行われました。預言者は、教友たちが作った説教壇の上に立ち、説教を読み上げた後、アリーの手を取って高く掲げ、言いました。
「誰でも私を主人とする者は、アリーを主人とする」
預言者ムハンマドはそう言うと、すべての人に聞こえるよう、この重要な通達を何度か繰り返しました。それから、空を見上げて祈りを捧げました。
イマームアリーにお祝いの言葉を述べる声や人々が騒ぎ立てる声が聞こえてきました。預言者ムハンマドは心から喜んでいました。イスラム教徒たちは、互いに先を争って、アリーと握手を交わし、アリーに忠誠を誓おうとしました。人々はまだ列を作っていたとき、大天使ジブライールが降り立ち、コーラン第5章アルマーイダ章食卓、第3節を預言者に読み上げました。
「今日、私は宗教を完成させ、あなた方への恩恵を全うした。また、イスラムをあなた方の宗教に選んだ」
ガディールの出来事により、イスラムの歴史に新たな幕が開かれました。ガディールホムは、預言者の統治の継続とその完成です。
イスラム世界でよく知られ、イスラムの敵との戦争に勝ち、預言者ムハンマドの援助者であり、すべての美徳を備えた人物が、イスラム教徒を指導する地位に選ばれたことで、イスラム教徒の道が明らかになりました。彼らはアリーの優れた人格を知っており、誰もが、彼はこの重大な責務を担う上で、預言者の次に最もふさわしい人物であると考えていました。
ガディールは、アリーの美徳による結果でした。アリーは、重要な戦いや局面でイスラムを救った人物でした。貧しい人々と語り合い、彼らと同様に生活しました。彼は毎晩、食料を背負い、ひそかに貧しい人々の家に食事を届けていました。また、親のいない子供たちと遊び、彼らに愛情を注ぎました。
レバノンの著名な文学者、ジョージ・ジョーダック氏は、イマームアリーの美徳について次のように記しています。
「アリーは、人々の心のともし火であり、その魂にエネルギーを与え、その知性に響く論理を持っていた。もしすべてのエネルギーを集め、歴史のあらゆる時代に、アリーのような武力と言葉の力、賢さと心を持つ人物を見出すことができていたら、世界はどうなっていただろう」
イスラムの最大の祝祭のひとつである、ガディールホムの祝祭の重要性は、イスラムの偉人たちにも注目されていました。伝承には次のようにあります。
「ガディールの祝祭の日、敬虔な人々は神の無限の慈悲と恩恵、赦しを授けられる」
この日に行うと、神に近づくきっかけとなる事柄がたくさんあります。
ガディールとは、一日のことを指すのではなく、歴史の始まりです。その歴史とは、人類全体と世界にまたがるものです。ガディールの出来事は、たった一日に限られたものではありません。深い理解力を必要とし、哲学を持つ流れです。
ガディールホムは、イスラム暦ゼルハッジャ月18日の出来事で、神のすべての預言者、特にイスラムの預言者ムハンマドへの忠誠が引き継がれるきっかけとなりました。ガディールは、この広い世界に住む人々に統一を呼びかけ、この明るい道に加わり、精神性と人間性、美徳の海に到達するよう、人々を導くものなのです。