アメリカ社会では、女性の権利
アメリカ政府は、女性の人権の尊重に関して大規模な宣伝活動を行っています。
この活動は、特に大統領選挙の際に高まります。しかし、果たしてアメリカ社会では、女性の権利が守られているのでしょうか?
アメリカ国務省の他国に関する報告では、女性の権利侵害に懸念が示されています。では、アメリカ社会の状況はどうでしょうか?
女性に対する暴力の問題が初めて注目されたのは、1993年の女性に対する暴力撤廃宣言でした。それまで、1979年に採択された女性差別撤廃条約でさえ、暴力に関する内容は含まれていませんでした。
1993年9月20日、それまで人権委員会の傘下で活動を行っていた委員会により、女性に対する暴力撤廃宣言が発表され、国連総会で採択されました。この宣言の発表と採択は、非常に重要な出来事でした。これは条約ではなかったものの、各国が調印式に参加し、その内容が様々な機会に繰り返し確認されました。この確認は、国際的な慣習において非常に重要なことと見なされています。同時に、11月25日が、国連によって、女性に対する暴力撤廃の国際デーとされたことも重要な点です。
アメリカの女性に対する暴力の数は非常に高くなっています。全米女性機構のインターネットサイトによれば、女性の権利に関する擁護団体の多くの努力にも拘わらず、アメリカではこの20年、女性に対する暴力や性的暴行の数が非常に高くなっているということです。
アメリカの女性の権利侵害の一例が、暴力です。この問題は、人権の指標のひとつであり、国際条約でも、女性に対する暴力が禁じられています。
またある報告は、イスラム社会における女性の権利侵害についてのアメリカの主張を嘲笑し、「アメリカでは、年間50万件以上の女性に対する性的暴行の事例があり、その他の女性に対する暴力は、380万件を超えている」としています。この報告によれば、病院の救急外来を訪れる女性の20%から30%が、体に暴力の痕跡が見られるということです。
これらの報告は、アメリカでは、女性に対する性的暴行が重要な人権侵害の事例になっていることを示しています。2014年、アメリカ軍内部や大学での性的暴行が問題になりました。アメリカの女性機関の報告によれば、20歳から24歳までの女性が、家庭内暴力や性的暴行の被害を受けやすく、2分に1人が犠牲になっているということです。
アメリカの大学生のうち、5人に1人が性的暴行の被害を受けていますが、そのうち警察に報告したのは、5%以下となっています。2013年9月に発表された報告では、この年の上半期、アメリカで、およそ12万人が性的暴行の被害を受けたとされています。その犠牲者のうち、およそ半数が18歳以下の少女で、5分の4が、30歳以下でした。こうした中、性的暴行の5分の3は警察に報告されず、性犯罪者の16人のうち15人は、1日も刑務所に入ることがありません。
アメリカ軍内部での性的暴行の増加は、アメリカにおける女性の権利侵害の懸念すべき一例です。アメリカ国防総省は、2013年5月の9つ目の年次報告の中で、軍内部の性的暴行の増加について警告しています。この報告によれば、軍内部での性的嫌がらせに関する訴えの数は、過去2年で平均3万件以上に達しました。
アメリカの国立事故防止センターの統計によれば、アメリカ人女性のおよそ6分の1が、ドメスティックバイオレンスを経験しており、5分の1以上が、物理的な暴力の犠牲になっています。犠牲者の多くは、その影響で精神的、肉体的に多くの問題を抱えるようになり、日常生活に支障をきたしています。
アメリカ政府の統計によれば、この国の女性の4分の1が家庭内暴力を経験し、およそ130万人が、パートナーからの物理的な暴力の犠牲になっています。FBIが発表した統計では、女性が犠牲になった殺人事件の13件に1件が、犠牲者の夫や友人によるものだということです。また、家庭内暴力の被害を受けている女性の10%が、脊髄や脳に深刻な障害を負ったということです。
アメリカ政府が、女性に対する暴力の問題に注目していないことから、この問題が拡大しています。2014年、この暴力の多くが明らかにされていないことに関する衝撃的な報告が発表されました。これらの報告は、軍、大学、家庭で暴力に晒された女性の多くが、警察に報告したり、訴えを起こしたりしていないことを示しています。これ以前に発表されたアメリカ法務省の報告は、性的暴行の犠牲者のうち、正式に訴えを起こした人は5%以下に留まっていることを示していました。
概して、アメリカの女性は、雇用や賃金における差別、妊娠中の職場での不適切な扱い、性的暴行などの問題に晒されています。女性に対する暴力の最悪の例である性的暴行や道徳的な退廃が、アメリカに広がっています。女性に対する暴力は依然として多く、現在、推定で女性の17%が、性的暴行の犠牲になっていると見られています。
政治・社会活動や雇用においても、性的差別が存在します。男性と同等の仕事をしていても、女性は彼らに比べて賃金が低くなっています。また統計によれば、女性は政府のあらゆるレベルに参加できておらず、議会で女性議員が占める割合は17%です。また、テクノロジー企業は、幹部に女性を積極的に起用しようとはしていません。貧困率も、女性の間で非常に高くなっています。2010年には1700万人を超える女性が、貧困ライン以下の生活を送っており、この数字は、過去17年で最悪となっています。
医療サービスの利用に関しても、アメリカでは女性が差別されています。アメリカの資本主義社会では、女性の医療サービスの利用は困難です。なぜなら、医療保険を利用できるのが、就業者のみだからです。これにより、およそ4700万人の市民が保険医療分野の政府のサービスを受けることができておらず、高い治療費を支払わなければなりません。その多くが女性となっています。一方、医療保険制度の改革の実施が、こうした問題を拡大しており、女性が政府のサービスを利用する上での制限が倍増しています。
オバマ政権の医療保険制度では、女性に対するドメスティックバイオレンスは、医療保険の適用対象外とされています。それにより、1回以上、パートナーから暴力を受けたことのある女性は、保険を利用することができません。オバマ大統領の支持派は、この保険制度改革をオバマ政権の強みとして挙げていますが、女性の権利を擁護する人々は、この改革によって女性に対する差別を終わらせたり、障害を取り除くことはできていないとしています。
アメリカ社会の現実は、彼らが自分たちを、世界における人権擁護の旗手と考えている一方で、人権を手段にして他国にダメージを与えながら、自分たちも数多くの人権侵害を行っていることを示しています。女性に対する差別や権利の侵害は、人権団体による調査や注目を必要とするものです。このようなダブルスタンダードにより、今日、アメリカや一部のヨーロッパ諸国では、特定の人種に対する優位主義や人種差別的な考え方が見られているのです。