視点
アジアの世紀・西側による差別体制からの脱却
ここ20年で、「アジアの台頭」「アジアの世紀」といった概念が世界の戦略論で重要なテーマとなりました。
こうした概念は、日々増す国際社会からのアジアに対する注目において、最も新しくかつ強力な側面です。
21世紀初頭、アメリカの国力低下やアメリカ主導の世界秩序の弱体化が指摘され始めたことが、「アジアの世紀」という概念を強めることになり、日本、中国、インド、イランといったアジアの大国の成功を振り返ることで活性化しました。
アジアの世紀を正確に理解した解釈は、それがアジア経済の動きだけを追ったものではなく、構造・ルールの側面をもカバーしたものであると言えます。
アジアの世紀とは、「アジア化」の帰結でした。アジア化とは、アジアの様々な地域が互いに結び付き、比類のない共通の経済・文明計画の力を高め合うことで、ひとつの方向性を目指すプロセスを指します。
今日のアジアは、地理的・政治的多様性に富みながらも、急速な経済発展と文明の変革という共通の特徴を持っています。
今世紀、アジアは貿易、バリュー・チェーン、生産、海外からの直接投資など様々な経済フィールドで一大地域圏として互いに結び付きました。
2017年にアジアが世界に占める消費量は28.4%でしたが、2040年には39.54%にまでなると予想されています。
西側諸国は20世紀に、経済、軍事、外交、政治などあらゆる分野で自らの覇権を押し付けてきましたが、21世紀に入ると、政治・経済のバランスはアジアに有利な方へはたらき、その中心も欧州・北太平洋からアジア・太平洋に移りました。
その動きは1980年代から「ルック・イースト」運動などとして始まっており、2050年には世界経済の中心は完全にアジアに移ると見られています。この年までには、世界の4大経済大国は中国、インド、日本、アメリカと大半がアジアを占めることが予測されています。
もっとも、アジアの興隆は、西側の覇権や影響力が完全に消えてなくなるということではなく、その「優位性」が失われるということです。
新しい世界秩序では、アジアはもはや西側に付き従うだけの弱く依存的な存在ではありません。主体性を持ち、多くの問題で自立して西側諸国と対峙できるようになるのです。
このことは、ウクライナやガザでの戦争、国連安保理で米国に対峙するロシア・中国、地域からの米軍撤退をめざすイランなどの動きに見て取ることができます。
イランは、諸国民が団結すればアメリカや西側の空疎なイデオロギーや軍事的覇権を克服できることを証明しました。イランは「抵抗の論理」を掲げることで、西側の強権に立ち向かう新たな極を世界秩序にもたらしました。それは、ラテンアメリカ諸国のようなアジア以外でアメリカの圧力を受ける国々にも自信を与えました。
現在、中国やイランのような文明大国は、現在の世界秩序をアジア諸国の利益、価値、ルールを反映したものにしようと努力しています。
これにより、アメリカの国際指導力は衰えていくことになります。アメリカは、これまでとは違って、自身の指導力を保つための資源を確保できないからです。また、アメリカ国内でも、もはや「世界の警察」としての役割を望まない声が増えています。
イラン・イスラム革命最高指導者ハーメネイー師は、アメリカの国力衰退について次のように述べています。
「アメリカは世界から手を引かざるを得なくなる。現在、アメリカは多くの国に米軍基地を保有している。西アジアや欧州、アジアに多くの米兵とその家族を駐留させ、そのコストも基地受け入れ国に払わせている。こうした現状はいずれ終わる。アメリカが世界から手を引く時がくる」