視点
対イラン疑惑提示を続けながらの米の核合意関連の返答
ネッド・プライス米国務省報道官が、「わが国は、制裁解除交渉に関するイランの見解に対し、自らの返答をEU側に提示した」と語りました。
ジョゼップ・ボレルEU外務安全保障政策上級代表は、EUの提示する草案を提出しており、イランはそれに関する自らの返答をEU本部に出していました。
キャンアーニー・イラン外務省報道官は、25日水曜午後にEU調整官を経由して制裁解除交渉で残っている問題の解決に向けた、イランに対するアメリカ側の返答を受領したことを明らかにし、「アメリカ側の見解に対する精査が開始されており、わが国は精査の完了後これに関する自らの見解を調整官に出すことになるだろう」と述べました。
アメリカ側の返答提示の一方で、同国の政府幹部は依然としてイランに対し疑惑の矛先を向けています。ジャンピエール・ホワイトハウス報道官は日本時間の25日木曜、大統領府内にて記者会見し、「バイデン米大統領は、イランの核兵器獲得を阻止したい旨を認めている」と語っています。
また、イラン核問題に関する言葉遊びを繰り返し、「イランに関して、我々にとって最善の方法は外交であり、合意を成立させられるかどうかを見極める必要がある」と主張しました。
これに先立ち、米国家安全保障会議のジョン・カービー報道官は、2018年に当時のトランプ米政権が一方的に対イラン核合意から離脱したことがアメリカの孤立を招いた事実を認めつつも、過去にイランが核合意を完全に遵守していないとして批判し、「アメリカ政府は、核合意復活を約束している」と主張しました。また、イランの核計画に関する事実無根の主張に関しても、「我々は正式に、あるいは非公式のルートを通じてイランに対し、IAEA国際原子力機関の質疑に回答すべきだと通告している。これこそは、これらの懸念を払拭する唯一の道である」と述べています。
このような対イラン疑惑が提起される一方で、イランはこれまでに何度も、核兵器製造計画を全く有していないのみならず、その方向に向かう意向もないことを表明してきました。しかし、それよりももっと重要なことは、アメリカが事実を真逆に提示し、イランを核合意への違反者に仕立て上げようとしたことです。しかしながら、複数回にわたるIAEAの報告が示すとおり、イランはアメリカの核合意離脱後1年間にわたり、この合意の枠組み内で自らの責務をきちんと履行し、その後はアメリカの一方的な制裁の悪影響の緩和に関するヨーロッパの相手側の約束違反への対抗措置として、5段階にわたって核合意内の責務履行を縮小してきたまでです。
同時に、アメリカの返答内容に関する一部のニュース報道がなされた後、アメリカがまたもや合意成立の道筋を阻もうとしている、とする一部の憶測が飛び交っています。これ以前、プライス米国務省報道官は、「未解決の問題がまだ残っており、一部の見解の食い違いが解消されるべきだ」と述べていました。
在オーストリア・ウィーン国際機関ロシア常駐代表のウリヤノフ氏も、この表明に反応し、「アメリカの行動には1つのパターンがある。それは、我々の交渉が妥結点に近づくにつれて、彼らの視点から新たな問題が出てくる、というものだ」という点を強調しています。
EUの提示した草案に対するアメリカの返答内容はさておき、ウィーンでの制裁解除交渉におけるイランの基本的な立場が明確、透明であることは強調されなければなりません。イランはこの交渉において、制裁解除の検証確認、核合意の永続性の保証、およびIAEAの保障措置関連の疑惑解消を主要な要求として提示しており、イラン国民にとっての実質的な経済利益を伴う一部の制限解除を見返りとした、合意への復帰のみを、理にかなったものと見なし受諾すると強調しています。このため、アメリカの返答内容がこれらの事柄を保障するものである場合は受諾の対象となり、そうでない場合には、アメリカがウィーンでの制裁解除交渉プロセスの失敗の全責任を問われることになるのです。