「イランはイスラエルの港や政府機関を意図的に狙おうと思えばできた」:イラン外相と米メディアのインタビュー
米ニューヨーク訪問中のホセイン・アミールアブドッラヒヤーン・イラン外相が米NBCニュースのインタビューで、地域の最新情勢及びとイランの政策について興味深いコメントを発表しました。以下に、その概要について触れていきます。
聞き手(以下Q):この度はインタビューを受けていただき感謝します。誰もが周知のとおり、現在この時代は非常に緊迫した情勢となっています。今このインタビューを見ているアメリカの視聴者は(シオニスト政権)イスラエルとイランの間の悲惨な戦争を強く懸念していますが、彼らへのメッセージをお願いいたします。
アミールアブドッラーヒヤーン外相(以下A):
我々はパレスチナ・ガザの危機の勃発当初から、イランとして地域での戦争や緊張の拡大を決して歓迎しない旨を繰り返し表明してきました。また今月14日には、あくまでも自衛の範囲内で、在シリア・イラン大使館をミサイル攻撃した2つのイスラエル軍事基地に対する作戦を実施しました。この作戦が成功した直後に、我々は米国に対し、イスラエルに対する作戦続行の意図はないことを通知しました。しかし我々は、アメリカに対しては何度も、地域での戦争拡大を控えるようイスラエルに警告して欲しいと求めています。これは、ネタニヤフ・イスラエル現首相が自身とその政府の存続を図るための手段に他なりません。イランは、近年のテロとの戦いやガザでの戦争停止、はたまた紅海から地中海沿岸、さらには地域全体の安全と平和の回復を目指す努力において、地域情勢のプラスの変化の一端を担っています。
Q:非常に手短ながら重要な質問をさせていただきます。イランは報復するのでしょうか?
A:
もしイスラエルが挑発行為に出て何かしらの行動を起こすなら、我々の反応は以前とは異なるものになるでしょう。我々の以前の反応は最小限で、ごく限定的なものでした。我々は彼らの二つの軍事基地、つまりノバティム空軍基地と、イスラエル占領下のゴラン高原にある情報収集基地をターゲットにしました。この両基地はシリア首都ダマスカスにのイラン大使館への攻撃に関与していました。もしイスラエルが挑発的な行動をとらなければ、イランはこの政権に対し新たな行動を起こすことはありません。
Q:我々の情報源によると、昨夜イスラエルが報復し、イランを爆撃したのはイランだったとされていますが?
A:
昨夜起きたことは、非常に限定された範囲・空間での2、3機の無人機や小型のクアッドコプターの飛行であり、すぐに撃墜されました。また、この事件については誰も責任を認めていません。
Q:イスラエルの報復攻撃前に、イランは事前に知らされていたのでしょうか?
A:
我々の防空システムは非常に高度な知能システムであり、2、3機の無人機は中部イスファハーン上空に現れた瞬間にターゲットにされ、撃墜されました。我々の武装軍の準備は完全かつ完璧なものです。
Q:在シリア・イラン大使館爆撃の問題は終了したと考えていますか?それ以上の行動は取りませんか?
A:
我々は地域での戦争拡大を望まないが故に自制しました。ネタニヤフ首相は我々の自制を誤解し、超えてはならない一線を越えて我が国の大使館を6発のミサイルで攻撃しました。その時、我々には2つの選択肢がありました。1つ目の選択肢は、即時にイスラエルに反撃することで、もう1つは自制して外交への猶予を与えることでした。我々は地域的条件、ガザ問題に集中する必要性、そして戦争拡大の回避を遵守して、外交と自制を選んだのです。このアプローチにより、我々は国連安保理に諮問することとなりました。我々は、安保理で外交施設への攻撃と(外交関係に関する)ウィーン条約への違反を非難する声明が出されることを期待していました。しかし残念ながら、アメリカ、イギリス、フランスがその声明に対する沈黙を破り、生命の発表に反対したのです。そのため、我々には他のもう1つの選択肢が残されていました。それはつまり、合法的自衛の枠組みで明確かつ即座に必要な反応を示し警告することでした。我々は対イスラエル軍事作戦の実行を決定したとき、まずシオニスト政権に警告し、処罰したいと考えたのです。
我々は作戦において節度を保ちました。イスラエル占領地内の町ハイファやテルアビブの攻撃はもとより、すべてのイスラエルの経済港さらには、政府中枢および経済機関を標的にすることも我々には可能でした。しかし、我々の超えてはならない一線は非戦闘員・民間人であり、我々の標的はあくまでも軍事関係施設、それも在ダマスカス大使館の攻撃に使用された2つの軍事基地と定義されていました。我々はイランの利益と国家安全保障を守るために、さらにはその後の結果にも対処する準備ができていることを示したかったのです。イスラエルが過ちを犯せば、次の反応は即時の断固たる、そして彼ら自身の過ちを後悔させるものになるでしょう。
Q:イランはイスラエルとの戦争に突入しており、また在シリア大使館への攻撃で2人の将軍と5人のイスラム革命防衛隊のメンバーを失いました。さらには、数万人ものガザ住民が殉教しています。昨年10月7日のイスラエルへの攻撃を振り返って、パレスチナ・イスラム抵抗運動ハマスは行き過ぎだったと思いますか?
A:
我々はハマスの行った作戦には以前から加わっていませんでしたが、事実が一つあります。それは、あの作戦の根源は決して昨年10月7日ではなく、75年前からのパレスチナ領の占領に遡るということです。シオニストが牛耳るイスラエル政府は合法政権ではありません。イスラエル政権は、国際法に基づけば占領勢力とされます。占領機関が長いことは決して、占拠者に権利を与えることはありません。イスラエルの土地の本質は、国際法に照らし占領ということになります。国際法では、解放戦線勢力は自らの土地を守り、自国を占領から解放すべく行動を起こすことができると定めています。ハマスはテロ組織ではなく、人民に根差した1つの組織であり、他者の占領からの解放運動です。その根源は占領にあり、これに注目すべきなのです。問題の根源は昨年10月7日にはありません。
Q:あなたはこれまで長年にわたり外交官を務めてきました。ハマスがそのような行動をとり、その結果としてこれらの事件が発生したことに価値はあったと思われますか?
A:
ハマスはパレスチナ人の利益やパレスチナ人の要求に基づいて決定を下しています。ハマスは国連決議および、自らの国運の決定に注目されている法律に基づいて行動しています。我々は占領という邪悪な現象に対抗するハマスの行動を支持しています。我々はイランとしてこの危機の勃発当初、そして昨年10月7日から、世界のどこであれ女性や子どもの虐殺、そして民間人虐殺を支持しないと明確に表明しています。
Q:バイデン米現政権の行動は、パレスチナを国として正式に承認するという措置において、それもパレスチナの国連加盟に反対票を投じた後で、誠実なものだった思いますか?
A:
私の見るところ、バイデン政権はパレスチナとガザの問題に一連のスローガンを掲げ、また彼は一連の行動を見せていますが、我々から見てアメリカには言動の矛盾が見られます。たとえば、アメリカは一方で停戦の努力をしていると主張しながらも、ネタニヤフ首相に停戦を促す上で自らの権限を十分に行使していません。ここで注目していただきたいのですが、イスラエルによるイラン大使館攻撃についてアメリカは我々はメッセージを発信してきました。その内容は、米がこの攻撃や裏での示し合わせには関与しておらず、イスラエルに対しゴーサインを示していないというものでした。もし、米及びホワイトハウスのこの言い分が正しいとすると、ネタニヤフ首相がレッドラインを守っていない、という事実を受け入れざるを得ません。もし、ネタニヤフ氏がアメリカが神経を尖らせるレッドラインを守らないのであれば、なぜネタニヤフ氏をこれほど支持するのでしょうか?アメリカが平和を望み、停戦と地域の安全の回復、戦争拡大の回避を望む一方で、なぜアメリカでは追加で10億ドルの対イスラエル武器支援を決定し、アメリカの高官がそれについてインタビューを行っているのでしょうか?もしアメリカがネタニヤフ氏にレッドラインを越えて欲しくないならば、なぜ国際法違反を非難する声明に抗議し、ウィーン条約で認められているすべての外交官と外交施設の保護規定を支持しようとしないのでしょうか?
Q:これからのアメリカ大統領選挙を控え、イランは現職のバイデン氏とトランプ前大統領のどちらと交渉したいと考えていますか?
A:
それはアメリカ国民が気に入った人物である必要があります。アメリカ人が選ぶどんな選択もアメリカ社会に関連しています。我々の外交政策には認識された原則があります。私たちにとって、民主党員と共和党員の間には違いはありません。本当の違いはアメリカの行動の中で探求すべきです。我々は、アメリカの行動を見て判断します。もしアメリカの行動がイラン国民に対する尊重や不干渉、イランの国家主権と領土保全への尊重に基づいていれば、アメリカ国民が選ぶどんな選択も尊重されます。
Q:最後の質問となります。イランは今年、イスラム革命勝利45周年という節目の年を迎えました。こうした中で、イラン国民が自国の政府や経済に不満を抱いているとの報道もなされているようです。人権や公民権の侵害に関する苦情も聞かれます。今後 45年間について、国際社会に伝えたいことはどのようなことでしょうか?
A:
過去45年間、我々はまず政治的独立の分野で、次に科学・技術、産業、防衛などに関連する分野で大きな進歩を遂げてきました。我が国は今や、一部の分野では世界の上位5傑または10か国に入っています。また、わが国は新興技術分野および、禁輸措置・制裁により許可されなかった分野においてさえも、国民や若者の協力により抜本的な進歩を遂げてきました。経済問題に関しては、これはもはや1つの事実です。その一部は、米国の違法な政策と一方的な制裁、そして米国が他国に対して引き起こした恐怖の扇動により発生しました。さらに、イランだけに限定されない地域全体における経済問題の存在が挙げられます。我々は大きな障壁をのりこえてきました。今日、我が国は科学技術、学術、防衛の分野で最も強力な地位にあります。経済分野では、わが国民、特に若者たちの努力、そして我が国の政府が掲げた計画によって、イランという国と国民には明るい未来が開かれるに違いありません。そして、この道筋において我々の政府も国民の協力を得て大きな成功を収めるでしょう。確かに、制裁は我々に打撃を与えましたが、一方で我々に素晴らしい教訓を与え、今日のイランに素晴らしい結果と成果をもたらしたと確信しています。
Q:ありがとうございました。