仏哲学者アンリ・コルバンを描いたイラン製ドキュメンタリー映画が日本で上映へ
フランスの哲学者でイスラム教シーア派思想にも傾倒したアンリ・コルバン(1903~1978)の生涯を描いたイラン人監督によるドキュメンタリー映画が、日本で上映されることになりました。
【ParsTodayイラン】映画「東洋学者」(英題:The Seeker of Orient)は、アンリ・コルバンの思想やその生涯を扱ったドキュメンタリー映画です。監督のマスウード・ターヘリー氏は、この映画初の海外上映に合わせて、今月29日に日本を訪れます。主催は明治大学文学部哲学専攻で、日本在住のイラン人教授エフサーン・シャリーアティー氏やバフマン・ザキープール氏も出席し、同大・和泉キャンパスで上映されます。
この映画は2020年はじめに完成していましたが、直後のコロナ禍により一般公開がキャンセルされた経緯があり、今回、4年の月日を経て、明治大学で上映されることになりました。29日の上映会で講演を行うシャリーアティー氏は、この映画がイラン国立図書館で上映された際にも出席していました。
映画「東洋学者」は、イラン、フランス、アメリカ、トルコ、スイスの5カ国で撮影が行われ、各国を代表する哲学者などが出演しています。
アンリ・コルバンとは?
アンリ・コルバンは、西洋の哲学者の中で最も卓越したイラン研究・イスラム思想研究家でした。特にシーア派思想を西洋に紹介する上で大きな役割を果たし、東洋学がスンニ派思想からシーア派思想に注目する契機となりました。中でも著書『イラン的イスラム』は、イランにおける哲学史の変遷を扱い、シーア派思想にイラン人が及ぼした影響を明らかにしたことで氏の最も重要な著作とされています。
コルバンはもともと西洋哲学やキリスト教思想を学んでいましたが、イスラム哲学に触れたことがきっかけでシーア派思想に関心を持つようになりました。彼は20年にわたってシーア派思想を研究し、そのうちの何年かはイランにも滞在し、テヘラン大学で教鞭を執ったほか、アッラーメ・タバータバーイー師らをはじめとするイランのシーア派思想家らと交流を持ちました。
コルバンは1958年から59年にかけてタバータバーイーと複数回にわたって対談しました。タバータバーイーはこの対談を振り返って、「コルバンによれば、西洋の東洋学者はこれまでイスラム教に関する情報をスンニ派から得てきており、結果としてシーア派の真実性があるべき形で西洋に紹介されることはなかった」と語っています。
コルバンもまた、「これまでの東洋学者らの見方とは違い、私はシーア派は真実かつ正統な宗派であり、そうした特徴を備えている。こうした点はこれまで西洋には知られていなかった。様々な研究を経て、シーア派という窓からイスラム思想を見なければいけないと気付いた。だから私は、シーア派をありのままに西洋に紹介しようと努めた」と述べています。
タバータバーイー師はコルバンとの2回目の対談について、「コルバンは、シーア派が神と創造物の間に導きがあるとする唯一の宗派だと語っていた」と回想しています。
コルバンは、スイス・ジュネーヴで開かれたシーア派第12代イマーム・マフディーに関するシンポジウムに参加した時のことについて、「イマーム・マフディーは欧州の知識人にとって全く未知のものだった」と語り、「あらゆる宗教は真実を追い求めるものだが、シーア派はそのことが実際の人々の間に残っている唯一の宗派だ」としています。