イラン次期大統領ペゼシュキヤーン氏が世界に向け発したメッセージ
(last modified Sat, 13 Jul 2024 10:42:03 GMT )
7月 13, 2024 19:42 Asia/Tokyo
  • イラン次期大統領ペゼシュキヤーン氏が世界に向け発したメッセージ
    イラン次期大統領ペゼシュキヤーン氏が世界に向け発したメッセージ

イランの次期大統領に選出されたマスウード・ペゼシュキヤーン氏が、自国英字紙テヘラン・タイムズへの寄稿において、地域諸国、アフリカ、中国、ロシア、ヨーロッパ、米国との関係をめぐる自身のアプローチについて説明しました。

ペゼシュキヤーン次期大統領は、テヘラン・タイムズ紙が独占掲載した寄稿の中で、時勢をにらんだ政策を強調しながら、「イラン新政府は緊張緩和に向けた誠実な努力を歓迎し、誠実さに対しては誠実に対応する」と述べました。パールストゥデイによりますと、ペゼシュキヤーン氏は「新たな世界に向けた私のメッセージ」と題したこの寄稿の中で、伝統的なパターンを超えた国際舞台に言及し、南側世界の新興国際勢力との有益な互恵関係の強化を強調しました。

 

ペゼシュキヤーン氏がテヘラン・タイムズに寄せたメッセージの全文は以下の通りです;

新たな世界への我がメッセージ

地域での戦争と情勢不安の最中に競争ではありながらも平和的かつ秩序のあった選挙の実施により、イランの政治制度はその安定性を実証し、政府内にいるイラン専門家の主張の一部を覆した。政治的安定および名誉ある選挙実施方法は、わが国のイスラム革命最高指導者ハーメネイー師の措置および、困難な状況下での民主的な権力移譲に向けたイラン国民の決意を物語っている。

私は「改革」、「挙国一致の強化」、「世界との建設的交流」を強調した政策を掲げて選挙戦に臨み、最終的に決戦投票において国民、そして国情全般に不満を抱いていた若い男女さえからも信頼を勝ち取ることに成功した。

この信頼は私にとって非常に価値あるものである。私は、国内はもとより国際レベルでの見解の一致をはかることで、選挙期間中に結んだ国民との約束を果たしていく所存だ。

初めに強調しておきたいことは、私の政権がいかなる状況においても、イランの国民的威信と国際的尊厳の維持を最優先課題に据えることである。イランの外交政策は「威信」「知恵」「便宜」の原則に基づいており、その企画と実施は大統領と政府に委ねられている。私はこの壮大なる目標を追求すべく、この役職に与えられた全権限を行使する意向である。

このアプローチで私の政権は、すべての国との関係において「バランス」を生み出すことにより、国益、経済発展、地域と世界の平和と安全のニーズに合致し時勢に即した政策を追求する所存である。この点において、我々は緊張緩和に向けた誠実な努力を歓迎し、誠実さには誠実さで対応する。

私の政権では、近隣諸国との関係強化が優先されることになる。一国だけが単独で他国を支配する関係ではなく、「強い地域」の形成を目指していく。私は、近隣諸国や兄弟関係の国々が消耗、軍拡競争、不必要な相互間制限のために貴重な資源を浪費すべきではないと強く信じている。そうではなく、我々の目標は全員の利益のため、全ての資源が地域の進歩と発展に充当される環境を作り出すことにあるべきだ。

我々は経済関係の深化、貿易関係の強化、共同投資の促進、共通の課題への取り組み、地域的な枠組みの構築に向けて進むべくトルコ、サウジアラビア、オマーン、イラク、バーレーン、カタール、クウェート、UAEアラブ首長国連邦及び地域機関と協力し、対話、信頼の構築、発展に努めていく。

我々の地域は長い間、戦争、宗派間の軋轢、テロリズムと過激主義、麻薬密輸、水不足、難民危機、環境破壊、外国の介入に苦しんできた。今こそ、次世代のより良い未来のために、これらの共通の課題に一丸となって取り組むべき時が来ている。我が国の外交政策の指針は、地域の発展・繁栄のための協力となるだろう。

豊富な資源と平和的なイスラムの教えに由来する共通の伝統を持つ国々として、我々は団結し、力の論理ではなく論理の力に依拠すべきである。我々の規範設定能力を活用することで、平和の促進、持続可能な開発のための平和的環境の創出、対話の強化、イスラム恐怖症への対峙、一極主義体制後の世界体制において重要な役割を果たすことができる。この点で、イランは自身の役割を果たす用意を整えるだろう。

イスラム革命後の1979年、イラン・イスラム共和国という新たな体制は、国際法の基準と人権の基本原則に基づいて、シオニスト政権イスラエルおよびアパルトヘイト主義の南アフリカという2つの人種差別政権との関係を断絶した。イスラエルはその時から今日に至るまで人種差別政権のままであり、その上に占領、戦争犯罪、民族浄化、入植地建設、核兵器、他国の領土の不法併合、近隣諸国への侵略という黒い記録に「大量虐殺」という恥べき経歴を加えている。

私の政権は第1段階として、近隣のアラブ諸国に対し、戦争範囲の拡大を防ぐべく停戦確立の優先、ガザ住民の殺害停止に向けたあらゆる政治・外交手段を駆使しての協力を要請する。我々は、パレスチナ人の生活を4世代にわたり破壊した長期間の占領の終結に向け懸命に取り組まねばならない。この点で、これからの政府には「1948年のジェノサイド条約」に基づいてジェノサイド防止に必要な措置を講じる義務があることを強調しておく。それは決して、犯罪者との関係を正常化することでジェノサイドに報酬を与えるものではない。

今日、西側諸国の多くの若者が、シオニスト政権イスラエルに対する我が国の長年にわたる立場の真実に気づいたように思われる。私はこの機会を利用して、この勇気ある若者世代に次のことを伝えておきたい。それは、パレスチナ問題に対する我が国の原則的な立場を理由とした反ユダヤ主義の非難は、完全な誤りであるだけでなく、我々の文化、信念、基本的価値観を侮辱するものであるということである。こうした類の非難が、パレスチナ人の生存権防衛を目的とした大学での抗議活動の際に諸君に向けられる反ユダヤ主義の不当な非難と同様、根拠のないものであることを確信していただきたい。

中国とロシアは常に我々の友人であり、我々の逆境時には支援者であった。我々は、この友情をとても大切にしている。

イランと中国の25ヵ年ロードマップは、両国にとって有益な「包括的戦略的パートナーシップ」の構築に向けた重要な一歩となった。そして我々は、新たな国際体制に入る目前に、中国とのより広範な協力を確立する用意がある。2023年中国政府は、我が国がサウジアラビアとの関係正常化を促進する上で重要な役割を果たし、それによって、国際情勢に対する同国の建設的な見通しと前向きなアプローチを示した。

またロシアも、イランにとって貴重な戦略的パートナーかつ隣国であり、我が国の政府は、同国との協力の拡大・強化に取り組んでいる。我々はロシアとウクライナの人々の平和を願っており、私の政権はこの目標の達成に向けて外交的取り組みを積極的に支援する用意がある。私の政権は、特にBRICS新興経済国、SCO上海協力機構、EEUユーラシア経済連合などの枠組みにおいて、ロシアとの二国間および多国間協力を優先していく。

世界情勢が従来の傾向パターンを超えていることを認識した上で、私の政権はグローバル・サウスといった新興国際勢力、特にアフリカ諸国との互恵関係の強化に取り組んでいく。我々はこの点において、協力向上、関係強化に努めていく。

さらに我が国が南米諸国とも強い関係を持っていることから、私の政権は、地域とのあらゆる分野での発展、対話、協力を促進すべく、その関係の維持・深化を目指しての行動を起こしていく。

イランと南米諸国の間の協力には、現在よりもはるかに大きな可能性があり、我々は引き続きこれらの諸国との関係を強化していく意向である。

イランとヨーロッパの関係は幾度となく紆余曲折を潜り抜けてきた。2018年5月に米国がJCPOA(包括的共同行動計画、通称;核合意)から離脱した後、欧州諸国は核合意を守り、我が国の経済に対する米国の違法かつ一方的な制裁の影響を緩和するため、イランに対し11の取り決めを交わした。これらの義務には、効果的な銀行取引の保証、米国の制裁からの企業の効果的な保護、対イラン投資の促進などが挙げられる。欧州諸国はこれらすべての義務に違反していながら、イランが核合意に従って一方的にすべての義務を履行することを期待しているが、これは不当である。

こうした逸脱にもかかわらず、私は平等と相互尊重の原則に基づいて両者関係を正道に導くべく、ヨーロッパ諸国と建設的な対話に臨む用意がある。

欧州諸国は、イラン国民が誇り高き人々であり、彼らの権利と尊厳がもはや無視できないものであることを認識すべきである。ヨーロッパの大国がこの事実に気づき、自らの倫理的優位性という捏造された概念を放棄して、長い間両国関係に影を落としてきた人為的な危機を克服すれば、イランとヨーロッパの間には多くの協力の機会が生まれるはずであり、それは検討可能な事柄である。

協力の可能性がある分野には、経済・技術協力、エネルギー安全保障、トランジット輸送ルート、環境のほか、テロや麻薬密輸との戦い、難民危機などが含まれており、これらすべては、我々各国の利益のために追求が可能である。

アメリカはまた、イランがこれまで不当な要求の強制を呑んだことがなく、また今後も決して呑まないことを認識する必要がある。我々は 2015年に善意を持って核合意を締結し、すべての約束を完全に履行してきた。しかし米国は、国内政策に関連した紛争と報復を理由にこの協定から違法に離脱し、一方的な制裁を行使して、イラン国民に対しては特にコロナ大流行の最中に数え切れないほどの損失、苦痛、損害を、そして経済には数千億ドルもの損害を与えた。

米国は、イランに対する経済戦争を開始するとともに、テロ組織ISISやこれと同類の残忍な組織から地域を救ったことで知られる世界的な反テロの英雄たる故ソレイマーニー・イスラム革命防衛隊部隊司令官の暗殺を通じるという国家テロにより、紛争を扇動する決定を行った。世界は今日、この決定による有害な結果を見せられている。

米国とその西側同盟国は、地域と世界の緊張の緩和・抑制という歴史的な機会を逃しただけでなく、NPT核兵器不拡散条約を著しく弱体化させた。それは、不拡散の原則の遵守にかかる諸経費が、その考えられる利益をはるかに上回ってしまう可能性を示したからである。

実際、米国とこれに同盟する西側諸国は、自国の諜報機関の予想に反して、核不拡散体制を悪用してイランの平和的核開発計画に対する危機を人為的に捏造し、それを利用してイラン国民に圧力をかけ続けている。その一方で、米を筆頭とする西側諸国は同時に、イスラエルという侵略的なアパルトヘイト政権を、NPT条約にも加盟せず、しかもあらゆる証拠から核兵器保有が明らかになっているにもかかわらず、積極的かつためらうことなく支持してきた。

私は、イランの防衛原則には核兵器製造が含まれていないことを改めて強調したいとともに、米国に対し、過去の誤ちから教訓を得て、それに応じ新たな政策を採用するよう求める次第である。アメリカの意思決定者は、地域諸国を互いに戦わせるという政策が過去にも失敗し、将来も成功しないことを認識すべきである。また、アメリカはイランの現実を受け入れ、既存の緊張を悪化させないようにすべきである。

イラン国民は私に、地域・世界における我々の権利、尊厳、正当な役割を主張しつつ、国際舞台での建設的な相互交流を真剣に追求するという強い使命を与えてくれた。この歴史に残る取り組みに参加したい諸君には、ぜひとも協力を願う次第である。

 

 


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