アメリカ政府の核合意に反する立場へのフランスの不満
アメリカ政府が、核合意に疑いや迷いを抱かせようとしているにも拘わらず、フランス政府は、この合意の見直しに向けたアメリカ政府の努力を拒否しました。
アメリカ駐在のフランス大使は、ツイッターで、「フランスは、核合意の見直しを支持しない。この合意は、現在の形で実施されるべきだ」と強調しました。これ以前にも、フランスのルドリアン外務大臣が、アメリカ政府の核合意に反する立場について懸念を表明していました。
フランスは、イランの核問題に関する協議の参加国のひとつで、協議の中では、強硬な見解を示すこともありました。しかし、数ヶ月に及ぶ話し合いの末、双方が核合意の表現や内容のひとつひとつについて合意に至ったとき、フランス政府も他の国々と同様に、イランとの核合意を承認しました。これを受け、核問題を巡る対イラン制裁が解除された後、イランとフランスは、重要な経済協定を締結しました。
エアバス数十機の売却、南パールス・ガス田へのトタルの50億ドルの投資が、こうした協力の一例です。しかし現在、アメリカのトランプ政権は、一方的に核合意を破棄するか、あるいはこの合意に疑いを抱かせようとしています。
最近、アメリカのヘイリー国連大使は、アメリカが核合意を離脱する、あるいは一時停止する可能性を示唆する発言を行っています。
アメリカの新聞、ニューヨークタイムズは、アメリカが核合意を離脱する可能性の理由について、"ばかげている”とし、「このような行動の結果は、アメリカにとって非常に重大なものになる」と警告しています。核合意は、イランと6カ国やEU上級代表との国際的な合意です。そのため、その変更には、すべての関係国の同意が必要です。このことから、核合意に関する新たな協議にフランスがはっきりと反対していることは、アメリカ政府への重要なメッセージになっています。
アメリカ・ミネソタ大学の人類学部長のビーマン氏は、「アメリカの新政権による、核合意を巡るすべての議論は、ひとつの誤った論理に基づいている。それは、アメリカが国際合意に満足していないため、その合意は誤った合意だ、という論理である」と語っています。こうした中、IAEA国際原子力機関が、イランの欠く合意の取り決めの完全な遵守を繰り返し認めていることから、この合意は、トランプ政権の妨害にもかかわらず、続けられるでしょう。とはいえ、アメリカ政府の国際的な慣習に反した行動、トランプ大統領の利己主義や予測不可能な行動により、核合意を巡り、どんな出来事がおきてもおかしくない状態になっています。いずれにせよ、核合意に反した行動は、アメリカを政治的な孤立に追い込むことになるでしょう。