視点
米の核合意離脱から4年、専門家の見解
アメリカが対イラン核合意を離脱してから今日で4年が経過しました。
2018年5月8日、当時アメリカ大統領だったドナルド・トランプ氏は執行命令に署名して、アメリカの核合意離脱を表明しました。これを受け、核合意に定められたアメリカの遵守すべき事柄に基づき解除されていた対イラン核関連制裁が再発動されました。
トランプ氏は4年前、現在の核合意に代わる「より良い合意」と称するものを締結する目的で、核合意を離脱しました。また、核合意をアメリカにとって史上最悪の合意だとし、イランがアメリカ協議団を欺いた、と豪語しています。最良の交渉者を自称するトランプ氏は、本来の核合意からの離脱により、短期間でより良い対イラン合意を締結できる、と主張していました。アメリカの核合意離脱から数日後、当時のアメリカ国務長官だったマイク・ポンペオ氏も12項目の提案書を出し、これを次回の対イラン合意のロードマップにしようとしていました。
しかし、その後トランプ氏が退任するまでの2年8ヶ月と12日が経過するまで、イランとアメリカの間には核合意に代わる別の合意の締結に向けた協議は全くなされませんでした。逆に、イランはアメリカの核合意離脱から1年後、5段階にわたって、自らの核活動を質量ともに増大させています。その結果、イランは現時点では60%濃度でのウラン濃縮を実施中であり、同国の核物質の戦略的備蓄は大幅に増量されています。
もっとも、これまでの4年間において、共和党の前トランプ政権および民主党のバイデン現政権のいずれの時代においても、イランに対するアメリカの「最大限の圧力行使政策」は、最大限のレベルで継続されています。この期間中、イランに対する各関連の各種制裁のすべてが最も厳しいレベルで実施されたのみならず、当時のトランプ政権はイラン・イスラム革命防衛隊ゴッツ部隊のソレイマーニー司令官の暗殺命令まで出し、さらには同防衛隊をいわゆるテロ組織リストに掲載しました。
しかし、こうした政治・経済・治安面での圧力のいずれによっても、イランと交渉し核合意よりも良い合意を締結するというトランプ氏の夢がかなうことはありませんでした。
アメリカでの政権交代により、新政権は前政権の過ちから教訓を得て、核合意に対しより建設的にアプローチし、再びアメリカが核合意署名国に復帰するとの予測がなされていました。しかし、現在のバイデン政権成立から1年4ヶ月と18日が経過した今なお、アメリカは依然として様々な口実を設けては、核合意内の自らの責務履行を渋っています。こうした中、イランは自らの善意を示すべく、核合意復活を目指すオーストリア・ウィーン協議への参加に同意しました。この協議には、アメリカは間接的な形で参加しています。
イランはこれまでに何度も、核合意の完全履行再開の用意があることを表明していますが、同時にアメリカに対しても、こうした姿勢を踏襲するよう求めています。しかし、アメリカ政府は依然としてイランに対し、核合意を超えた要求を提示しており、しかも自らは核合意内の責務を実施しようとしない有様です。
こうした状況により、アメリカの核合意離脱および、最大限の圧力行使政策の実施から4年が経過した現在も、この合意へのアメリカの協力の展望は相変わらず不透明なままです。アメリカは、制裁の再発動および軍事・安全保障面での脅迫により、結果的にイランを屈服させ、自らが提示する条件を呑ませられる、と思い込んでいました。しかし、こうしたやり方の結果は、一部のアメリカ政府高官も認めるとおり、完全な失敗に終わっています。
ブリンケン米国務長官は数日前、同国上院でのある会合において、「核合意離脱および対イラン最大限圧力行使という決定は、必要な成果を伴わなかった。今や、安全保障分野の専門家の多くが、アメリカの核合意離脱は非常に大きな過ちだったと考えている」と語りました。
それでも、ブリンケン氏を含むアメリカ現政権は、トランプ氏の決定から4年が経過した現在も、核合意離脱や対イラン最大限圧力行使政策という失敗した道を歩み続け、トランプ氏と同じ轍を踏んでいるのです。