日本の技能実習制度、円安・低賃金・労務環境でメリット薄
(last modified Thu, 08 Sep 2022 09:16:08 GMT )
9月 08, 2022 18:16 Asia/Tokyo
  • ベトナムからの技能実習生は
    ベトナムからの技能実習生は

日本の外国人技能実習制度で最も多くの人数を占めるベトナム人の間で、日本で働くことの魅力が急速に薄れつつあります。もともと指摘されてきた低賃金と労務環境の問題が改善されず、最近の急激な円安により母国への送金が目減りしていることも拍車をかけています。

外国人技能実習制度は1993年から導入された制度で、主に発展途上国の外国人を「技能実習」という在留資格で受け入れ、職業上の技能習得を支援することを目的としています。

ベトナム関連の情報サイト・VIETJOによりますと、ベトナムからの技能実習生は昨年6月時点で約20万2000人で、全体の57.1%を占めています。

しかし、技能実習制度を管轄する外国人技能実習機構によると、ベトナム人実習生のうち帰国後に就労した割合は26.7%にとどまっています。日本で学んだスキルを母国で活かす機会が少ないことが要因とされていますが、そもそも技能実習制度が単純労働者の雇用調整弁として悪用され、特段の技能が必要ない仕事が低賃金で技能実習生に与えられている実態があります。

また、最初の3年間は受け入れ先を変えることができない、本国からの家族の呼び寄せができないなどの制度上の制限があるほか、受け入れ先で外出を制限される、パスポートを取り上げられる、寮の光熱費などの名目で給与から天引きされるなど、技能実習生が劣悪な労務環境に置かれているとの指摘が後を絶ちません。

最近の事例では、岡山県の建設会社「シックスクリエイト」で働いていたベトナム人技能実習生が、2年間にわたって日本人従業員らから暴行を受け、肋骨を折るなどの大けがをしていたことがわかりました。岡山県警は暴行に関与した4人を書類送検しましたが、岡山区検は先月、いずれも不起訴処分としています。

2016年から2018年にかけては、福島県内の建設会社がベトナム人実習生3人に対し、事実を伏せたまま、県内の土地で放射能除染作業に従事させていたことがわかっています。

朝日新聞によりますと、3人は2015年に鉄筋施工や型枠施工の技能を実習する目的で来日しましたが、福島県内の住宅地や森林で除染作業をさせられたり、福島第一原発事故による避難指示解除準備区域だった浪江町の下水道配管工事に従事させられたりしたということです。

3人は会社側を相手取って福島地裁に提訴し、2020年10月に会社が解決金などを支払うことで和解しました。

こうした従来からの問題に加え、今年に入ってから急速に進む円安で、日本で働くことのメリットはさらに少なくなっています。日本農業新聞によりますと、ベトナムの通貨・ドンに対し、円は年初から20%近く安くなっており、ベトナム人実習生が円で受け取った給料を本国へ送金する場合、相当分が目減りすることになります。

こうした中、ベトナムとオーストラリアは農業労働者の派遣・受け入れで協定を結び、9月から募集を始めることにしています。まずは年間1000人のみの受け入れですが、1年のうち3カ月は休暇で月給は3200~4000豪ドル(30万4000~38万円)と日本よりもはるかに好条件となっており、すでにベトナム人の間で話題になっているということです。

 


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