安倍政権、拉致被害者2名の生存情報を黙殺か 過去には国会質疑で追及も
共同通信は17日、2014~2015年にかけて、当時の安倍政権が、北朝鮮から日本人拉致被害者2名の生存情報を受けとり、日本への一時帰国を提案されていたにもかかわらず、これを拒否していたと報じました。
共同通信によりますと、安倍政権は2014~2015年にかけて、政府認定拉致被害者の田中実さんと、拉致の可能性を排除できないとしている金田龍光さんの「一時帰国」に関する提案を北朝鮮から受け取っていたということです。
しかし、複数の交渉関係者の話によると、提案に応じれば拉致問題の幕引きを狙う北朝鮮のペースにはまりかねないとして拒否したということです。
田中さんと金田さんに関しては、2019年2月の共同通信の報道で、2人が北朝鮮で生存しており、それぞれ妻子とともに暮らしているとする情報が北朝鮮から日本側に伝えられていたとされています。
日本政府関係者は、北朝鮮はこの情報を2014年以降に日本に伝えてきたとしており、今回新たに報じられた「一時帰国」の提案も、同時期にされたものとみられます。
田中さん・金田さんの生存情報については、2020年3月に当時立憲民主党の参院議員だった有田芳生氏が、参院予算委員会で安倍首相や閣僚らに対して質問していますが、政府は「今後の対応に支障をきたす」などとして明確な答弁は避けています。
北朝鮮から2人の生存情報があったとされる2014年は、5月にスウェーデン・ストックホルムで日朝局長級協議が行われ、北朝鮮は拉致被害者を含む全ての日本人に関する包括的かつ全面的な調査の実施を約束し、日本側は北朝鮮が調査を開始した時点で制裁の一部を解除することで合意しました。(ストックホルム合意)
その後7月に北京で行われた協議で、北朝鮮は調査を開始したことを正式に発表しました。
北京協議が行われた直後、日本経済新聞が、「北朝鮮が、同国内で生存しているとみられる日本人のリストを日本側に提示し、その数は約30名」などとするスクープ記事を掲載しました。しかし、日本政府はこの報道を事実無根として否定しています。
結局、この報道内容の真偽は不明のままとなりましたが、今回の共同通信の報道で、2014年当時に北朝鮮側から日本人生存者に関する具体的な情報がもたらされていた可能性は高まりました。
上記の有田氏は、昨年12月にも岸田首相に対して、「日本政府が、横田めぐみさんなどの北朝鮮が死亡としている8人の生存確認を優先し、それ以外の田中さん・金田さんの生存情報を無視したのではないか」との趣旨で質問しています。これに対して岸田首相は、「拉致被害者の中に序列・順番はない」と答弁しました。
岸田首相は2014~2015年当時、安倍政権で外相を務めています。