自賠責、コロナ積立金… 財務省の「横暴」に批判噴出
鈴木財務相は25日の会見で、新型コロナ対策で各国公立病院に配布された補助金のうち余っているものを返還させ、防衛予算の財源にすることを検討すると述べました。
現在、国公立病院を運営する2つの独立行政法人には、国から支給された合わせて1500億円程度の新型コロナ対策費が残っているとされています。
鈴木財務相はこの日の会見で、「現時点では具体的な方向性は決まっていない」としつつも、この残った積立金を返還させ、防衛費に充てることについて関係省庁と検討する意向を示しました。
財務省が示したこの方針は、ツイッター上で強い反発を招きました。新型コロナをめぐっては、政府が支出したコロナ対策予備費約12兆円のうち、およそ9割超が使途不明であることが今年春に報じられたばかりです。そのような状況で、本来コロナ対策目的に支給されたお金を防衛費に回すという方針に、理解できないといった声が多く寄せられました。
財務省に対する批判はこれだけではありません。鈴木財務相は今月11日の会見で、財務省が一般会計向けに自動車損害賠償保険(自賠責保険)から借り入れた5952億円の返済ができないと明らかにし、謝罪しました。
すべての自動車保有者に加入が義務付けられている自賠責保険は、その運用益で交通事故被害者への救済費用を支出しています。これは自動車安全特別会計と呼ばれ、税収が不足した1994年と1995年に当時の大蔵省が1兆1200億円をこの特別会計から一般会計に借り入れました。
しかし、その後の返済は滞り、現在も完済していません。そのため10年後には自賠責保険の財源が尽き、運営ができなくなる可能性が出ています。2022年度の返済額は54億円で、このペースで毎年返済を続けても完済までに100年以上かかる計算です。
こうした中、政府は今年2月、自賠責保険料の値上げを含む改正法案を国会に提出。交通事故被害者への救済拡大が名目でしたが、その実態は政府による「借金踏み倒し」を国民負担で埋めるものでしかなく、自動車ユーザーらを中心に強い批判の声が出ました。
この法案は、与党のみならず、野党の立憲民主、国民民主、日本維新の会なども賛成して今年6月に成立。来年度から自動車1台あたり150円の値上げとなります。
財務省はこれまで国の財政危機を訴え、医療・社会保険料の負担増や公立学校の教員削減など、国民福祉に直結する分野への支出削減・国民負担増を事あるごとに求めてきました。それでいて自らは目的外の財源使用を検討する上、借金は返済しない姿勢を公言しています。国民の理解は到底得られそうにありません。