ハマスがシンワル新政治局長選出により示した、3つの重要なメッセージ
パレスチナ・イスラム抵抗運動ハマスが新政治局長としてヤヒヤ・シンワル氏を選出したことは、現在の戦況の中で同組織が戦略を変化させたことを示しています。
【ParsToday西アジア】テヘランで先月31日にハマス政治局長のハニヤ氏が暗殺されたことは、ガザでの戦局、地域の対立、交渉プロセス、ハマスの内部情勢および外界との関係に与えるであろう影響に関する懸念を広げました。しかしその後、ハニヤ氏の後任としてシンワル氏が選ばれたことで、ハマスのこの先の戦略が明確に示されることとなりました。
シンワル氏の政治局長選出は、当初は他の人物が選出されると予想されていたことから、多くの人を驚かせました。しかしこの選択は、ハニヤ氏暗殺を受けた当然のことながら、最近のイスラエル政権との緊張をめぐり新たな方向性が示されたと受け止めるべきなのです。
この選択が行われた主な理由のひとつには、ハマスの内的要因も挙げられます。
シンワル氏は、昨年10月7日に行われた「アクサーの嵐」作戦の技術責任者として知られており、現場における抵抗作戦の指揮でも力を発揮してきました。同氏はまた、イスラエル政権が高度な軍事力、情報・諜報力を備えているにもかかわらず、ガザでの戦争が始まってから数カ月が経過しても居場所が特定され暗殺されることはありませんでした。
今回のシンワル氏選出は、同氏が戦時下でハマスをパレスチナ内外において管理する力を持つ人物として、同組織の政治・軍事の両部門が信頼を寄せていることを知らしめることとなりました。
シンワル氏選出によってハマスが示したメッセージは、次のようなものです。
1. イスラエル政権に対する一致団結した抵抗
シンワル氏の新政治局長選出は、ガザ内外にあるハマスの各部門が一致団結していることを示しただけでなく、占領者たるイスラエル政権に対して抵抗勢力のメッセージをはっきり突き付けました。そのメッセージとは、ハマスが依然として強力であり、ハニヤ氏暗殺後に迎えた戦争の新たな段階における問題へ対処を取るべく新しい指導者を生み出す力を持っているということです。
イスラエル政権は、ガザの抵抗勢力の意欲を削ぎ自身の軍事力・諜報力を誇示できるハニヤ氏の暗殺を、パレスチナの外で成功させたものの、今度は、「アクサーの嵐」作戦の技術責任者として知られており、今やハマスの新政治局長となったシンワル氏との対峙を、余儀なくされているのです。
2. 敵への嘲り
イスラエル政権のネタニヤフ首相はハニヤ氏暗殺を、自らがハマス幹部を暗殺する能力を持っていることの象徴として喧伝しています。しかし、ハニヤ氏の後任にシンワル氏が選出されたことは、ある意味でネタニヤフ首相を嘲笑い、同首相が内心抱えるコンプレックスを増大させたと言えます。なぜなら、イスラエル政権はこれまで、「アクサーの嵐」作戦で主導的役割を果たしたシンワル氏の暗殺に、繰り返し失敗しているからです。
そのため、仮にイスラエル政権が戦争における目標を達成できたとして、ハニヤ氏暗殺の喧伝とハマス軍事部門・カッサム旅団のムハンマド・デイフ司令官およびマルワン・イッサ副司令官の暗殺の主張を、シンワル氏の選出後も続けるならば、ネタニヤフ首相は、今後大きな課題に直面することになるでしょう。
3. 戦場の抵抗戦士との交渉
戦争終結合意への到達に向けてハマスの政治部門を動かしていたと見られるハニヤ氏が暗殺されたことは、ネタニヤフ首相が合意から逃げて戦争を長引かせようとしていることを明確に示すこととなりました。これに対しハマスは、同氏の後任にシンワル氏を選出して、交渉に次のような3つのアプローチで挑むことを示唆しました。
第一のアプローチは、ネタニヤフ首相がごまかしを続ける限り、ハマス側が交渉を継続しないことです。
第二は、交渉の最終決定が実際に戦場にいる抵抗戦士により決定されていくことです。
第三は、調停役が今後、将来の合意のあらゆる枠組みを決めるのにシンワル氏との交渉を余儀なくされることです。
結論
ハマスの新政治局長にシンワル氏が選出されたことは、現在の戦況の中で同組織が戦略を変化させたことを示しており、内部の団結、敵への嘲り、交渉で抵抗の力をより高めるといった、明確なメッセージが込められています。ハマスは、イスラエル政権がガザで行う殺戮を終わらせ、さらに抵抗勢力が10月7日以降に得た戦略的成果を維持するような合意に到達すべく、この先もその努力を続けていくことでしょう。