西アジア情勢|不安定を扇動する波:イラクでの米国の計画からパレスチナでの犯罪激化まで
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アメリカはイラクで情勢不安の扇動を画策
イラクのある治安筋が、危険なテロ組織ISIS構成員の家族をシリアからイラクに移送し、同国での情勢不安扇動という米国の陰謀を明らかにしました。
西アジアはまたもや、複数の同時発生的な危機の渦に巻き込まれています。それは、長年のテロとの闘いの末にISIS因子の統制された再来の脅威に直面しているイラクから、シオニスト政権イスラエルによる封鎖と組織的犯罪の爪痕の下、日々人道的惨事へと変貌しつつあるガザ地区までに至るものです。こうした状況の中、外国の陰謀に加えて、米国とイスラエルといった伝統的な同盟国間の亀裂さえも露呈しています。
【ParsToday西アジア】このニュースでは、地域の安定を脅かす危機の4つの側面を検証していきます。
イラクで「時限爆弾」を狙う米国の計画イラク西部アンバール州の治安筋は、シリアのアルホル・キャンプからイラク・ニナワ州のアルジャダ・キャンプにISIS構成員とその家族を移送するプロセスが、米国の圧力および、シリア政府のシャラア暫定大統領(通称;ジャウラニ氏)と関係のある勢力の共謀の下で再開されたことを明らかにしました。情報筋によりますと、これまでに840人が移送されており、そのほとんどは「イラク治安部隊の血に染まった手」を持つISIS指導者の家族だということです。この行動の目的は、イラクの安定と安全保障を不安定に陥れることだとされています。イラク政府は、「時限爆弾」と称されるこれらの人物の受け入れを迫る圧力に屈すべきではありません。この主張は、制御された不安定を扇動すべく地域で新たな危険なゲームが始まる可能性を示唆しています。
ガザにおける人道上の大惨事:患者の漸進的な死から援助物資の担保化まで
ガザ地区では、恐るべき規模の人道的大惨事が続いています。ガザ地区にあるパレスチナ保健省のハリル・アル=ダクラン報道官によれば、ガザ地区外で治療を待つ間に950人以上の患者が命を落とし殉教したということです。アル=ダクラン報道官はまた、ガザ地区の医療システムは「破壊され」、「完全崩壊」寸前だと表現しました。シオニスト占領軍は重要な医療機器の搬入を阻止するのみならず、UNRWA国連パレスチナ難民救済事業機関によれば、ガザ地区の3か月分の食料や救援物資を積んだトラック約6000台が検問所で拿捕されたということです。同時に、専門家らは「栄養失調がカロリー不足から危険なタンパク質不足へと移行している」と警告しています。ガザ地区のパレスチナ政府情報局長イスマイル・アル・サワブタ氏は、この政策を「飢餓戦争」かつ、人々を徐々に死に追いやるために「人々の生活を水面上に維持させる」ものだと評しました。
シリアをめぐる米・イスラエル間の軋轢
同時に、長年にわたり同盟関係にあるアメリカとイスラエルの間にも亀裂が生じていることが明らかになりました。アメリカの新興メディア「アクシオス」は、「トランプ大統領のシリア特使トム・バラック氏とイスラエル当局者の間で非常に緊迫した協議が行われた」と報じました。ある米国当局者はアクシオスに対し、「ネタニヤフ・イスラエル首相がシリアへの攻撃を続ければ『大きな外交的機会』を失うことになる」と語っています。米国当局者らは、イスラエルのシリア介入を「完全に逆効果」だとし、攻撃が安全保障協定締結のプロセスを阻害するものだと強調しました。この緊張は、シリア危機への対応をめぐる戦略的な見解の対立を反映したものだと言えます。
侵略の輪の拡大:シリアからヨルダン川西岸へ
イスラエル政権の侵略はガザ地区にとどまりません。SANAシリア国営通信社は「シオニスト占領軍は軍用車両を伴い、シリア・クネイトラ県郊外のアブ・クバイス丘陵に侵攻した」と報じました。シオニストのこの行動は、侵略政策の継続であるとともに、1974年の停戦協定違反に当たると見なされています。この点について、英紙ガーディアンは解説記事において、イスラエルの新たな計画が「ガザ地区だけでなく、パレスチナ全土、そしてより広範な地域における流血を伴う支配」であると指摘しました。同紙はまた、ヨルダン川西岸地区での数万人のパレスチナ人の難民化と、シリアおよびレバノンへの攻撃に言及し、イスラエル政権が「無期限に駐留・進出を維持し」、広大な地域に「特別な支配」を及ぼすつもりであることを警告しています。国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルのアニェス・カラマール事務総長も、ガザ停戦後の期間を通常の生活への回帰という「危険な幻想」だとし、「イスラエルの大量虐殺は終わっていない」と強調しました。
脆弱な停戦における安定の幻想
西アジアから得られるイメージは、一時的な停戦が構造的危機の深刻化と暴力の連鎖の拡大を覆い隠すベールに過ぎない地域を物語っています。大国や地域大国の駆け引きによって、テロ集団の抑制された復活によりイラクなどの国の安全保障上の成果が危うくなりかねない一方で、シオニスト政権は、世界の注目度が相対的に低下している隙に付け込み、封鎖、飢餓、そして侵略の地理的拡大を通じて支配力を強化し続けています。また、米国とイスラエル間の軋轢は、同盟者同士といえど、利益と戦略が必ずしも一致していないことを示しています。干渉主義的で犯罪的な政策が覆されない限り、いかなる「停戦」もより大きな災厄への序章に過ぎず、「正常化への幻想」は時間を置かずに崩壊すると考えられるのです。

