視点
イラク国会選挙後に何が起きているのか?
イラク国会議員選挙は、先月10日に前倒しで実施されました。
今回の選挙は、発足して1年のアデル・アブドルマハディ政権崩壊につながったイラクでの2019年10月の抗議デモの結果として実施されることになりました。2019年のデモでは参加者に対し暴力がふるわれ、その結果、数千人が死傷しました。
このデモから2年過ぎた現在、イラクでは人々が再び抗議デモを実施し、またもや暴力へとつながりました。2年前と違っている点は、現在首都バグダッドで続くデモにおいても死傷者が出ているものの、暴力の度合いでは比べ物にならないことです。
もうひとつ指摘されるべき点は、2019年のデモが、イラクの抵抗諸勢力に近かったアブドルマハディ政権に対して行われたのに対し、今回のデモは、抵抗諸勢力に汚名を着せるために行われたことです。このデモで抗議者らは、抵抗諸勢力に汚名を着せ、シーア派の人々の間の溝をさらに浮き彫りにすることで、抗議の中から自身の政治的目的にたどり着こうとしています。このアプローチの目的のひとつは、選挙の不正を扱った抗議において平和的なデモの実施を阻むことです。現在行われている暴力は実際、イラクの政治プロセスに影響を与える目的で行われているのです。
このような中、国会選挙での不正に抗議し、5日金曜のバグダッドのデモに参加していた政治・宗教組織AAHアサイブ・アフルハックのハズアリー事務局長は、「バグダッドのグリーンゾーンで起きた暴力は、組織的なものだった。その基本目的は、選挙結果を強制的に受け入れさせ、かつイラク抵抗勢力を非難することにあった」と語っています。
また別の点は、国会選挙の結果に対するデモは2週間前から始められたものの、抗議者らに対する暴力は、より大きな派閥の結成に向けた政治指導者間の話し合いや政治的会談が現実味をおびてきたのに合わせて増加したことです。
グリーンゾーンでの暴力は、イラク勢力間の協議を中断させる原因となり、同国の政治プロセスにも影響をおよぼす可能性があります。また同時に、イラクが社会的不安定と政治的行き詰まりに向けた道へ進み出す可能性も含まれているのです。
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