イラクの権力構造は議会選挙の結果発表でどう決まるか?
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イラク議会選挙では投票率が56%を超え、連合と政党の議席配分もそれぞれ決定しました。
(last modified 2025-11-15T10:39:18+00:00 )
11月 15, 2025 19:30 Asia/Tokyo
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イラク議会選挙では投票率が56%を超え、連合と政党の議席配分もそれぞれ決定しました。

イラクでは、今月9日(特別選挙)と11日(一般選挙)の2日間にわたり、第6回議会選挙が実施されました。イラク独立高等選挙管理委員会は、「今回のイラク議会選挙の投票率は56.11%だった」と発表しています。イラク議会の状況は、選挙前と選挙後の2つの時期に分けて考える必要があります。

選挙前には国民の参加の程度や政党、連合、そして個人の貢献度が重要であり、選挙後には権力配分も重要な問題となります。イラクでは過去5期にわたり、国会議長、大統領、首相の任命について政党や連合が合意に達するまでに多くの時間が費やされてきたことから、権力配分・構造は選挙の実施よりも重要だとも言えます。

新たな国会議長の任命には、全議員の過半数の承認が必要とされており、議員総数が329名であることから、国会議長と副議長の任命するには165名の承認が必要となります。またイラクの政治慣習に従い、国会議長はスンニー派から指名されなければなりません。

イラクにおける最近の選挙では、スンニー派勢力が329議席中77議席を獲得しました。その内訳はムハンマド・アル=ハルブシ氏とその関連リストに属する「前進」連合が33議席を獲得し、首位となっています。これに続き、ハミス・アル=ハンジャル氏率いる「決意」連合が15議席で2位につけています。ここで重要な点は、アル=ハルブシ氏がイラク大統領の座を狙っているように見えることです。

英ロンドンに本拠地を置くアラビア語新聞アル・シャルク・アル・アウサト紙は、アル=ハルブシ氏が大統領就任と国会議長の職の放棄を望んでいると報じました。同氏は2023年11月にイラク連邦裁判所の判決により国会議長の職を失っています。同紙によれば、アル・ハルブシ氏は大統領就任の地位を守るため、政治的合意の原則に言及しました。この原則は、イラクの旧サッダーム政権崩壊後の移行期に当たる2004年に、スンニ派のガーズィー・アジル・アル・ヤワル氏に大統領職を明け渡し、当時、国会議長の職はイラクのクルド人勢力に委譲されたというものです。

アル=ハルブシ氏が大統領選に進出すれば、イラクにおいて深刻な問題が浮上することになります。一方、もし同氏がイラクの政治慣習に従い、国会議長に立候補するとしても、シーア派やクルド人勢力との連立政権が必要となると考えられます。

新議長の任命後、議会の第2の課題は、大統領候補の任命に向けた準備となります。大統領の任命には、議員の3分の2、すなわち210票の賛成票が求められます。いずれの候補者も必要な定数を満たさない場合、上位2名による決戦選挙が行われ、議員による第2回投票で最多得票を獲得した候補者が、得票数に関わらず大統領に就任することになっています。

重要な点は、大統領任命には議会議員の3分の2が参加した場合にのみ可能であるということです。言い換えれば、議員の3分の1が棄権し、新大統領選出の投票に参加しない場合、相対的多数であっても大統領任命は不可能となります。

大統領は任命された後、15日以内に多数派派閥の候補者に組閣を義務付けることになります。信任投票を行い、新内閣を承認するために必要な多数は、出席議員の絶対多数である。しかし、この段階で重要な問題は、より大きな議会派閥、すなわち「最大派閥」の形成でもあります。これは過去5回の選挙において、いずれも困難で時間を要する問題となってきました。イラク高等選挙管理委員会によれば、議席はシーア派連合が197議席、スンニ派が67議席、クルド人が56議席、そして宗教的少数派と民族的少数派が9議席を獲得しています。

シーア派政党・団体が全て足並みを揃えれば、より大きな派閥を形成し、首相を擁立することは難しくないとみられます。しかし、問題はそうした課題が射程圏内にないように見えることです。実際にイラク第5議会では、73議席で最多議席を占め、最大会派を自称したサドル潮流(シーア派指導者サドル師が率いる政党)が、クルド民主党とのシーア派連携枠組み連合、前進連合、決意連合といった野党勢力の影に隠れ、計155議席を獲得していながら、新首相の擁立に失敗した実例があります。

最終的に、シーア派連携枠組みが政権樹立に反対したことを受け、サドル師は辞任を決意し、サドル師派の議員73人が一斉辞任しました。これらの議席はライバル勢力に分配され、連携枠組みの権力が強化されています。新議会でも、スーダーニー首相率いる復興開発連合が最多議席を獲得したものの、スーダーニー氏が再び組閣を担うかどうかは依然として不透明となっています。

最後に、イラク第6議会の構成において特に重要な2つの問題があります。1つ目は、カイス・ハズアリ氏率いるアル=サディークン連合です。ハズアリ氏は強力な連合を率いて選挙に臨み、シーア派では第3位、議会では26議席を獲得して第5位につけており、権力構造と将来の議会において大きな発言力を持つとみられています。

第2の問題は、議会の構成を考えると、イラク民兵組織ハシャドアルシャビの解散問題は事実上議題から外れることになるだろうということです。この点について、イラクのオフォグ政治調査分析センターのマジド・アル=シュワイリ氏は、「ハシャドアルシャビは今や解散や弱体化を求める声から解放され、イラクはアブラハム合意(シオニスト政権イスラエルとの関係正常化を盛り込んだ合意)に対してこれまで以上に無関心になっている」とコメントしました。

新議会においては、イラクで解散した旧バース党の擁護者、あるいはイラクにおける米軍の駐留継続を望んでいる人物、あるいは対イスラエル関係擁護者でありハシャドアルシャビへの反対派物として常に知られてきた著名人が、国民の信頼を獲得できず、議会入りを果たせずに終わっています。

 

 


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