視点
核戦争勃発を警告した国連事務総長
-
NPT核兵器不拡散条約再検討会議でのグテーレス国連事務総長
グテーレス国連事務総長が、NPT核兵器不拡散条約再検討会議の開幕にちなんで演説し、世界における核戦争勃発の危険性に関して警告しました。
今回のNPT再検討会議は、新型コロナウイルスの世界的大流行により、2年の延期を経て、米ニューヨークの国連本部にて現地時間の1日月曜夜、ようやく開催にこぎつけました。
グテーレス事務総長は、「今や世界は、核戦争勃発の危険に瀕している。これは、米ソ冷戦が最高潮に達した時以来もので、一つの誤解、一つの誤算で、核兵器による破滅を迎える」と語っています。
また、「現在世界には、およそ1万3000発の核兵器が保管されている。核兵器拡散の危険が拡大しており、緊張激化を阻止する防御が脆弱化しつつある」と述べました。
世界における核兵器の増加と、さらなる核兵器開発およびその使用をめぐる競争の激化は、世界の安全保障を深刻な危険にさらしています。国連事務総長による警告は、ウクライナ戦争後のロシアと米国の間の前例のない対立と、アメリカを筆頭とする西側諸国の威嚇に対抗する決意表明を目的とした、ロシアによる核兵器使用を示唆する威嚇を見れば、意味あるものだといえます。実際、この数か月間で世界は冷戦後初めて、核戦争という悪夢に直面しています。
NPT核兵器不拡散条約は1970年に発効・施行されており、世界の既存の軍縮協定の中で最も多くの国が署名し、191以上の国が参加しています。NPT条約の実施以来、核軍縮の問題とこの種の致命的な兵器の廃絶に向けた取り組みは、国連の課題とされてきました。しかし、この条約は特に、世界の核保有国からないがしろにされています。
実際、NPT条約を実施する上での課題の 1 つは、核保有国がこの条約の主な内容と精神を遵守しないことです。使用されれば人間社会と環境に取り返しのつかない影響を残す、このような大量破壊兵器の削減および、その最終的な廃絶を目的としたこの協定の存在にもかかわらず、核保有国は、そのリスクを無視してこれらの大量破壊兵器を開発しています。さらに、去る2月末のウクライナ戦争勃発後のロシアとNATO北大西洋条約機構間の核使用示唆による対立のように、これらの大国間の緊張の激化から、これらの勢力間で起こりうる紛争で核兵器が使用される可能性が高まりました。しかし、ロシアは核戦争回避の必要性を強調しています。プーチン・ロシア大統領は、今回のNPT再検討会議に寄せたメッセージ書簡において、「核戦争による勝者は存在せず、またこのような紛争は決して始まってはならない」と警告しています。
実際に、世界はこれまで77年以上にわたって核戦争勃発の悪夢に直面してきました。主要な核保有国は、依然として核兵器の最新鋭化を推進しています。5大核保有国として認知されている米国、ロシア、中国、フランス、英国および、過去数十年の間にさまざまな形で核保有国の仲間入りをした国々は、現在、核兵器やそうした兵器の発射システムの配備、製造、更新に熱を上げています。
こうした中、アメリカはトランプ前政権以来、他の核保有国から主導権を奪い、新しい核政策の枠組みの中で、自国の核兵器の最新鋭化・核武装のために、膨大な費用をかけて広範な措置を講じてきました。そしてこれは、 バイデン現大統領も続けています。米国の戦略的同盟国である英国も、「外交および防衛政策の包括的見直し」文書の枠組みの中で、核兵器保有量の40%以上の拡大を画策しています。