視点
核合意とイランに関する米英独仏の首脳会談
アメリカ政府が核問題に関するイラン側の提案を精査している中、同国のバイデン大統領は21日日曜夜、ドイツのシュルツ首相、フランスのマクロン大統領、イギリスのジョンソン首相と電話会談を行いました。
この電話会談で欧州3カ国の首脳とバイデン大統領は、イランの核計画に関する現在の協議について話し合い、また、西アジア地域内のパートナーへの支援強化、そして「イランが地域で行っている不安定化活動」なるものに対する抑止・制限に向けた共同の取り組みの必要性について強調しました。
今月4日から8日にかけてオーストリア・ウィーンで行われた、アメリカの対イラン制裁の解除を中心議題とする協議の新ラウンドでは、協議調整役であるEUのモラ欧州対外活動庁事務次長による案が提示され、イランはこれらの案に対し、書面での公式な回答を行いました。
ウィーン協議参加諸国のほとんどは、イランに対する圧政的で違法な制裁の解除に焦点を当てており、同協議がより迅速にまとまることを望んでいます。しかし、最終的合意成立は、残されたいくつかの重要な問題に関するアメリカの政治的決定待ちの状態にあります。
イランが15日月曜夜にEUの提案に返答した後、アメリカ側も数日以内にこの欧州の計画に返答することが期待されていました。しかし、バイデン政権は、イランの反応をまだ精査中だと主張し、回答の提示を渋っています。実際、ウィーン合意草案の最新版に対するイランの返答から数日が経過するとともに、バイデン政権の核合意復帰の意志の弱さは、米国政府内の意見対立やシオニスト政権イスラエルの圧力などにより、明らかとなりました。
専門家は、イランの論理的な行動を認めつつも、最終合意の達成はホワイトハウスの政治的意思決定にかかっていると考えています。この原因は、主に米国政府内の混乱と、特に議会の核合意反対派からの圧力によるものと思われます。
米上院外交委員会は、核合意復帰はバイデン氏の外交政策の大きな失敗となるとしました。同委員会のツイッターアカウントでは、「イラン指導部は、IAEA・国際原子力機関の調査が終了し、イランで活動している西側企業が保護され、また今後アメリカが再度核合意から離脱した場合にイランが核計画を加速できるという、核合意の強固な保証をバイデン政権から取り付けようとしている」と主張しています。
米カリフォルニア州立大学教授のデイヴィッド・ヤアグービヤーン教授は、対イラン合意成立の遅延・延期の理由として、バイデン政権内の脆弱さのほか、共和党や一部の民主党の反発への恐れを指摘し、「米国で最も強硬な帝国主義者らでさえ、核合意を他の問題と結び付けることや、『最大限の圧力』による制裁政策など、米国にとって『より良い、より強力な合意』を成立させようとする自らの努力が無残に失敗したことを認めている」と語りました。
現在、制裁解除交渉とEUが提示した合意草案への対応に関する意思決定での弱さが露呈したバイデン氏は、英独仏の首脳らと共に、ヨーロッパ側が出した草案に対するイランの反応に対し、論理的な立場をとらずに、イランに対するいつものような事実無根の非難に訴え、イランがいわゆる西アジアでの不安定化を招く行動に走っている、と述べています。
ここで次のような疑問が浮上してきます。それは、そもそもウィーンでの核合意復活・制裁解除交渉、およびボレルEU外務安全保障政策上級代表が出した草案に関して重要な決断を迫られている現時点において、これらの非難はどのような根拠に基づいてなされているのか、ということです。それに対する答えは、イランに対するプロパガンダ戦争および、政治的なアプローチを常に追求してきた西側諸国は、そのような疑惑提示によりイランが怯え、受動的になり、その結果イランに対して最小限の譲歩・メリットしか与えなくて済む、と考えているということです。
こうした中で、イランは、制裁解除交渉での合意成立条件として、保証を伴った各種制裁の恒久的な解除を求めるとともに、この問題が将来的にイランに対して使用される圧力手段として残存するべきではないことを強調しています。イランは、国民の経済的利益が確保され、イランの石油輸出と外国貿易に対する違法な制限が撤廃される合意を求めています。このことから、相手方である米国が、イランの論理的な要求と、安定した信頼できる合意成立の要件を受け入れれば、最終的な合意に至ることになるのです。