視点
土地支配から言説支配まで:現代の植民地主義とは?
植民地主義は過去から現在に至るまで様々な変化を経てきましたが、3つの原則に貫かれています。資本主義、暴力の正当化、資本と暴力の神話化です。
植民地主義体制では、その基盤として資本が優先されます。世界を敵と味方に分けるのは、利益をもたらすかどうかです。ある国が帝国主義にとって新たな利益をもたらす存在であれば、それは味方になります。人権は、資本主義体制の維持に役立つ限りにおいて尊重されます。そのため、毎日のように子供を虐殺する政体でも、それが経済的カルテルにより支えられている限り、人権侵害とみなされることはないのです。
その一方で、資本主義体制が安定し続けるためには暴力が正当化されます。資本主義というイデオロギーの実現手段は、覇権であり、ヘゲモニーであり、圧倒的な暴力であり、既成事実化です。資本主義体制は見た目は上品ですが、一切の抵抗を許しません。資本主義体制は自らに歯向かう抵抗勢力に容赦しない非人道的な本質を持っています。帝国主義勢力が近年西アジアで起こしてきた戦争をみれば、直接的・間接的に被害を被っていない国はありません。
植民地主義は過去から現在に至るまでの間に、このような暴力的な本質を覆い隠そうとしてきましたが、独立諸国の力が増すにしたがって、その試みは上手くいきませんでした。シオニスト政権イスラエルの虐殺に加担するアメリカをみれば、そこには上辺だけの人権すら存在せず、植民地主義の本質が旧来のままであることを示しています。
植民地主義はその目標達成のために、自らを既成事実化し、ごく当たり前の存在に見せる必要があります。その手段はマスメディアですが、そこでは真実は伝えられず、現実の否定と神話化が行われます。植民地主義にとって重要なのは「言説」です。言説があらゆる決定を通常化し、それによる影響を正当化します。神話化の効能はまさにこれです。矛盾した現実を温存し、植民地支配を豊かさをもたらすものとして、その意味を変えてしまうのです。
メディアが既成事実化の役割を果たす時、「ポスト真実」が形成されます。ポスト真実では、言説が現実に取って代わります。メディアが人間に代わって画像や映像を創作し、フェイクを生み出します。ポスト真実は、脱政治化や論理の商品価値化が進んでいる社会で起こります。そこでは、情報の受け手が論拠を聞く前から結論がメディアによって決められ、記事の質ではなく「いいね」の数でその価値が決まります。したがって、論理を組み立てる努力よりも「いいね」やコメント数を稼ぐ努力が優先されるのです。