4月 16, 2024 21:08 Asia/Tokyo
  • 欧州でイスラム嫌悪に抗議するデモ隊が鎮圧されている
    欧州でイスラム嫌悪に抗議するデモ隊が鎮圧されている

イスラム嫌悪と反ユダヤ主義はコインの裏表の関係にあります。欧州諸国の指導者らは、反ユダヤ主義に表面上対抗するため、イスラエルが3万人以上のパレスチナ人を虐殺するのを黙認しています。これは人種差別以外の何物でもありません。

イスラム嫌悪と反ユダヤ主義は、ヨーロッパの白人にとっては瓜二つの問題でした。歴史を振り返ると、ヨーロッパが白人・キリスト教徒の大陸であるためには、イスラム教徒やユダヤ教徒の追放が必要でした。

このことは、シオニスト政権イスラエルの成立により極めて奇妙な形で実現します。イスラエルの成立はユダヤ人のための計画というより、シオニストのための計画でした。それはヨーロッパの白人のナショナリズムにもとづくものであり、イスラエルの成立によりユダヤ人は白人と同等とみなされるようになったのです。

 

1948年のイスラエル成立後、強制的に移住させられるユダヤ人

 

反シオニズムは反ユダヤ主義か?

2019年、ドイツの複数の政党が、イスラエルに対するボイコット、投資撤収、制裁運動(BDS運動)を反ユダヤ主義だとして非難する声明を採択しました。

これに先立ってもうひとつ重要な出来事がありました。国際ホロコースト記憶連盟(IHRA)が発表した反ユダヤ主義の定義が承認されたのです。

この定義をめぐっては、あわせて100以上の国際機関が国連に対して承認しないよう求める事態に発展しました。それは、この定義によりイスラエルが正当な批判から守られることに悪用されるおそれがあるからです。

この定義にもとづけば、イスラエルに対するあらゆる批判が反ユダヤ主義とされ、平和的な抗議活動なども取り締まられる結果となります。

EUや欧州議会のほかにも、フランス、ドイツ、オーストリア、オランダ、イタリア、スペイン、ポーランドなどが個別にIHRAの定義を承認しました。

IHRAの定義に法的拘束力はありませんが、将来にわたって言論の自由を制約しうるものになります。

 

ハマスによる攻撃以降行われた反ユダヤ主義への対抗運動

昨年10月にハマスがイスラエルを攻撃すると、メディアは反ユダヤ主義やイスラム嫌悪にからむ事件の増加を伝えました。欧州各国の政府は、ハマスによる攻撃を非難する一方で、イスラエルによるガザ民間人の殺害の事実も認めました。

欧州各国では、イスラエルへの連帯を表明するために建物のライトアップなどが行われる一方で、市民はパレスチナ国旗を掲げてデモに繰り出しました。しかし、そうした市民の声は政府関係者や議員らによってかき消されました。

 

ベルギー・ブリュッセルにあるEU本部



反イスラエルへの弾圧

欧州の当局者は、ハマスがイスラエル市民1400人あまりを殺害し、多数の捕虜を拘束していることは批判しますが、イスラエルが3万人以上のパレスチナ民間人を虐殺したことは非難しません。しかも、パレスチナ支持の運動を違法とさえしています。

昨年のハマスによる攻撃直後に開催された独ブックフェアでは、パレスチナ人作家のアダニア・シブリ氏への文学賞授与が決まっていましたが、その授賞式が突如延期されました。また、サッカー・元オランダ代表で独ブンデスリーガでプレーするアンワル・エル・ガジ選手が、SNSでパレスチナ支持を表明したところ、試合出場を停止させられました。

フランスのダルマナン内相は、パレスチナ支持のデモを「公共の秩序を乱すもの」として禁止しようとし、そのようなデモに参加したNGO団体は仏国内から追放するとまで脅迫しました。

 

ダルマナン仏内相

 

仏警察はパレスチナ支持のデモを激しく弾圧しましたが、それでも多くの市民が街頭に集まり続けました。

同様の出来事はドイツでも起こり、パレスチナ国旗を掲げるだけの静かなデモが警察により排除されました。

 

フランスで行われたパレスチナ支持のデモ


イギリスのブレイバーマン前内相は、パレスチナ解放を訴える「川から海まで」というスローガンを唱えることが違法に当たる可能性があると述べました。また、ドイツ内務省もこのスローガンを「ハマスのスローガン」とし、バイエルン州の地方検察に至っては、このスローガンを唱えることは「ハイル・ヒトラー」を唱えることと同じ罪にあたるとしました。

このように欧州の指導者・当局者らは、「パレスチナ人の命の重さは、イスラエル人のそれより軽い」という危険なメッセージを国際社会に送っています。彼らがホロコーストの記憶から得た教訓は、それがユダヤ人にだけは繰り返されることはないということであり、それ以外の人種にとっては何の意味も持たないものだと言えそうです。

 


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