EU不信が広がる背景
欧州委員会が依頼した世論調査で、EU諸国に住む市民の大半がEUの将来に悲観的な見方をしていることが分かりました。また、世界各国でもEUに対する不信感が蔓延しています。
【ParsToday国際】調査によると、EUに対する信頼はドイツ市民の間で昨年5月から11月の間に11%減少し、またEUの将来を悲観すると回答したのも最多の48%に上りました。エストニアでも、EUを信頼すると答えた人の割合は同じ期間で13%減少しました。
移民問題
この調査結果についてドイツ紙は、同国市民の間でEUに対する信頼が低下している理由について、EU加盟国間で一貫した移民対策がとられていないことを挙げています。昨年はおよそ38万人の不法移民がEU圏内に流入し、2016年以降で最多となりました。
EUとしては加盟国どうしで共通する移民対策を導入したい考えですが、各国は安価な労働力を確保したい思惑があり、これが足並みが揃わない要因となっています。
ポピュリズムの台頭
EUが抱えている試練は移民問題だけではありません。各国で高まるポピュリズムは、イギリスのEU離脱という悪夢を他国にももたらしかねないという懸念を引き起こしています。英デイリーメール紙は、「2016年に英国民がEU離脱に賛成票を投じた際、専門家らは、この決定が他の欧州諸国にも波及するおそれがあると警告していた」と記しています。
ウクライナ危機
もうひとつがウクライナ問題です。ウクライナ危機は、欧州各国がコロナ禍を経て経済危機から脱しようとしていた矢先という最悪のタイミングで起きました。ウクライナ戦争は、EUを奈落の底へ突き落したのです。
また、ウクライナ戦争はEU各国間の溝を浮き彫りにしました。各国は、共通防衛政策、エネルギー供給、足並みを揃えた対ロシア政策をめぐり、対立するようになりました。
西アジアに対する二重基準
ロシア外務省のザハロワ報道官は、EUが信頼を失ったのは、ウクライナと西アジアの間で二重基準を採用したからだと主張しました。
ザハロワ氏は、「EUの対外政策は常に批判の的になってきた。一貫せずイデオロギー的な政策は、EUの政治的アイデンティティと各国からの信頼を失う要因になった」とし、「EUがパレスチナとイスラエルの戦争について話す時、ボレル上級代表は結論を急がず、当事者のいずれも非難しようとしない」と指摘しました。
不協和音
オーストリア紙「スタンダード」は、各国で高まるナショナリズムがEU加盟国間に不協和音をもたらし、ひいてはEU全体の信頼低下につながっていると指摘しています。
弱い経済
専門家らは、伸びの弱いEU経済も信頼低下の一因だとみています。先ごろ欧州委員会が発表した報告によれば、今年のユーロ圏の経済成長は期待を下回るものでした。その原因は、インフレや欧州中央銀行による高金利政策にあるとされています。
こうした中、EUはユーロ圏20カ国の今年のGDPを、昨年11月時点の予測である1.2%から0.8%へ下方修正しました。
欧州委員会・経済担当委員のパウロ・ジントリーニ氏は、「昨年の欧州経済は低成長だった。今年の第1四半期も同様に推移している」と語っています。